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前世は猫でしたので  作者: KAE


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それぞれの動き

翌日。昼間から雑木林の中に紛れて小屋の男達が動くのを監視していた。

ちなみに、今朝私はリチャードに明日王都に戻ると伝え、今日は出発の準備で忙しく夕方まで部屋に篭もることにしてある。後のフォローはエレナがしてくれる。顔を引き攣らせながらも「頑張ります」と言ってくれた。


昼過ぎ。小屋の扉が開いて男達が出てきた。

それぞれ背中に荷物を背負っている。

一旦坑内に入っていったが、すぐに山のように岩を積んだ台車を押して出てきた。

「さぁ。出発しよう」 「おー」と元気よくひとつの台車を五人で押して全部で四台の台車を押して雑木林の中を進んで行った。後を追う。

(20人もいたんだ…)

暫く行くと前方から男の人の集団が向かってきていた。カラの台車を押している。

お互いを認めて声をかけ合う。

「おー!お疲れさん!」

「おー!今からか?頑張れよー!」

「あれ?四台か?」

「あーそうだよ」

「そっか」「じゃあなー」と行き違いながら会話をしていた。

さらに雑木林の中を進む。

大きな川が見えてきた。とても渡れる幅ではない。

しかし男達は躊躇わず前に進む。

少し下流の方に行くと大きな中洲があった。その中洲のおかげで橋がかかっていた。男達は橋を渡り対岸に向かう。

「この先って…バーネット領……」と呟く。

かなりの距離を重い台車を押しているが男達の顔は明るい。その後も雑木林の中を進む。


雑木林の終わりが見えてきた。男達から「あと少しだ!頑張れ!」 「おー!」と明るい声が聞こえてきた。


雑木林を抜けてしまえば隠れるところが少なくなる

(ここまでかな)と思っていると、雑木林を抜けた先の集落から声が聞こえてきた。

声が聞こえたほうを見ると、村があった。

男達もその声に「ただいまー」と答えている。

村は獣よけの柵に囲まれていて、柵の前にその先への道が続いている。

そこに馬に乗った身なりの良い男とその後ろに車夫と思われる男達、その周りを守るように馬に乗った制服を着た男達が数人いた。


何かを言っているようだがかなり離れているので上手く聞き取れない。途切れ途切れに「…た。国王……よう。……た」聞こえてきたような気がした。

そして岩を乗せた台車を車夫のような者たちに引き渡し、お辞儀をして村に入って行った。

日は傾き始めていた。ここから先へ行くのは諦めた方が良さそうだ。

ティナは急いで戻らなくては…と雑木林の中に消えた。


翌日、ティナは帰途についた。王都の屋敷には帰ると連絡をした。

ニールは友達に再会を約束していたようだ。

リチャードは少しホッとしたような顔をしていた。

集められる証拠は集めた。後は無事に持ち帰らなければならない。日誌がなくなっていることに気づかれないように祈る思いだった。


――――――――――――


「ルークさまお手紙が届いております」フランツが盆を差し出した。手紙を受け取り中を確認する。


「はぁー。伯父上今度は最初から屋敷で過ごすことにしたようだ」とルークが言う。


フランツが「まあ、よく持ったのではないでしょうか?」


「そうだな、仕方ないか…」とルークがため息混じりに言う。


公爵と遠乗り以来、ルークは公爵邸に行くことがないように、再度の遠乗り、狩り、釣りと公爵を連れ回して疲れさせ、屋敷への招待を避けてきた。しかしもう限界がきたようだ。


「明日、茶会の招待を受けた。行ってくるよ…うかがう旨の返事をしよう」


「かしこまりました、念のため薬を飲んで行ってください」


「わかった。まあ、殺すつもりはないようだ、殺すつもりならその機会はたくさんあったのにしなかったからな。全く何が目的なんだろう?」と呟いていると


「それとお待ちかねの手紙ですよ」と再度盆を差し出す。


ルークは手紙を受け取り顔を綻ばせた。

「ティナ。帰ってくるって…明日着く?…えー。行き違いじゃないか!」と騒いでいると


フランツが「なるべく早く戻って参りましょう。明日は少々不安ですのでご一緒します。馬車で待機してます」と言うと


「そうだな、ティナが帰ってくるのを口実に早々に失礼するとしよう」と先ほどとは違って元気に答えていた。


翌日、ルークは公爵邸を訪れていた。

「伯父上、いつもお誘いありがとうございます。いろいろご一緒して本当に楽しく過ごさせていただいています。今日もすごく楽しみにしておりました」


「はっはっは。私も君と一緒にいるととても楽しくてね、君も忙しいだろうにいつも連れ回して悪いね」


「とんでもない。仕事はそれぞれの責任者がしっかりしてますので、僕は承認印を押すだけですので!ははは」


「そうかい?それならいいんだがね!さて、今日は君とゆっくりチェスでもしたいと思ってね!さぁ、こっちだ」とサロンに案内された。


二人向かい合ってチェスを始める。

暫くは駒が動く音が響いていた。


「そういえば、妹君はまだ領地に?」


「え?…あぁ、妹は実は今日帰ってくるんですよ。連絡がありました」


「そうか…じゃあ、今度は是非二人で遊びにきて欲しいものだな」


「ありがとうございます。是非二人でうかがいたいです。その機会楽しみにしています」


「ああ。是非」


その時カールがティーセットを持って入ってきた。

それぞれのサイドテーブルに静かに用意する。


公爵が「良い茶葉が入ってね。是非飲んでみてくれ」


「ありがとうございます、ではいただきます」とティーカップを持ち口をつけようとして…鼻がヒクッと反応した。

ルークは思い切り煽るようにお茶を口に含む。二人の目が光ったような気がした。

いきなりルークは「ぶふぉ!」「ごほごほ!」と吹き出しむせた。慌ててハンカチで口を押さえる。

しかし、服もチェス盤もお茶でひどい有様になった。


「伯父上、申し訳ありません。ゴホッ、ゴホッ」


「いや。大丈夫かい?」


「申し訳ありません。私は大丈夫ですが、チェス盤が…服もこんなになってしまいました。申し訳ありませんが今日は失礼させてもらってもよろしいでしょうか?」


「あ、あぁ。火傷とかしていないか?少し休んでから帰ってもよいのではないか?」


「ありがとうございます。しかしあまりにもひどい格好になりましたのでやはり失礼させていただきます」


と言って公爵邸を後にし、馬車に乗り込んだ。


「大丈夫ですか?ルークさま」とフランツが慌てて声をかける。


「ああ。薬を飲んで行って正解だった…しかし気持ち悪い」


「これを飲んでください」と多くを語らずルークに薬を飲ませた。


馬車は急いで侯爵邸に向かって走った。


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