嵐の前
前を向こうと気持ちを切り替えた私達はこれからの事を相談した。
執事フランツが言う「侯爵家の事業は多岐にわたります。先ずその把握の再確認からするのが肝要かと思われます」それから…と話を続けるフランツの言葉に皆が頷く。
「はぁ〜…そんなにあるのぉ〜…それ全部お父様とお母様主導でやってたの?…はぁぁ〜」私はもうため息しか出てこなかった。
その様子を見てフランツがクスクス笑う。
「全部されていた訳ではございませんよ。全体を総合的に見てそれぞれの専任と検討し指示を出されていましてので、侯爵夫妻の脇を固めるそれぞれ専任も優秀なのですよ。今日の葬儀にも全員参列しておりましたでしょ。旦那様達はあの者達との信頼関係を築いておられましたので、皆一丸となって働いていたのですよ」
「ふーんそうなんだ〜じゃあ、お父様とその専任の方々との間に入って統括して纏めているフランツって実はすごいのねぇ〜」と尊敬の眼差しで言うとフランツは「お嬢様に褒めていただけるとは…なんとも嬉しいものですね」と少々照れた様子で微笑んだ。
後は坊ちゃんの爵位継承手続きでしょうか…と続ける。
この国は18才が成人で正式な爵位継承が認められる。
正確には半年と10日後ルークは18才になるその日にお父様の後を継いで侯爵を名乗る事になる
ルークは緊張した面持ちで「頑張んなきゃ…な」と呟いた。
私はルークの背中をバシバシ叩きなら「きっと大丈夫よ!フランツもマリアもポールもいるんだからぁ!」と明るく励ましてあげた。
と、マリアが間髪入れずに「お嬢様も頑張っていただきゃなきゃいけませんよ!家内の事は女主人の仕事です!坊ちゃん一人に任せてはいけませんよ!」
「…はい。私も頑張ります」あー。他人事ではなかったな…と少し反省した。
お返しとばかりに今度はルークが私の背中をバシバシ叩きなら「きっと大丈夫!マリアもエレナもいるんだから!」と励ましてくれた。
「はい。私も及ばずながらお力になれるように頑張ります」とエレナが拳を握って協力を宣言してくれた。
うん。頼もしい。
「それから社交の事ですが、喪中ですので欠礼させていただいても問題ないでしょう」
「「あー!それがあったかぁ〜」」ルークと私、大袈裟に驚いてソファーに座ったままのけぞった。
「喪中だし…それは失礼しよう」と言うルークの声にコクコクと頷き同意した。
「それでは早速明日から…」とフランツが言いかけたところでドアをノックする音がした。窓の外を見ると陽が暮れていた、そろそろ夕食?なんて思い「どうぞ」と返事をするとメイドが失礼しますと入ってくる。様子がおかしい。
「お話中失礼します。ノートン子爵がお越しです」
昼間教会で別れたはずだが…子爵領にお戻りになったのでは?と不思議に思いつつルークを見る。
ルークも困惑した顔で「叔父上が?…では応接間にお通しして。すぐに向かう」
メイドは「かしこまりました」と部屋を出て行った。
「ティナ。一緒に行こう」と私に向かって言い私も頷いてルークに続いて部屋を出た。
嵐の前触れだった。




