夜の訓練
その日の夜。いつもの訓練をしていた。今日からは有り合わせの服ではなくマリアお手製の全身黒の訓練着だ。サラサラした肌触りの体に纏わりつかない生地で作られたブラウスのデザインはルークは普段着ているようなシンプルなもの。私はルークのブラウスに少し手を加えAラインのブラウスに革紐のベルトを腰で留める少し女性らしいデザインにしてある。そして二人とも細身のパンツ。ルークのパンツにはベルト通しがつけられて私と同じ革紐のベルトが通っている。
この革紐は拠って強度を増した革に上から細い革を組紐のように編んで作ったなかなかオシャレだがしなやかで強いらしい。そしてブーツ。動き易さを重視して羊革で作られているらしい。脹脛まであるが足首に全く負担を感じない。不備があれば調整する。とマリアは言っていたがその必要はなさそう。マリアの技術の高さに驚く。これならドレスへの改良は凄く期待できる。
気分を良くした私達はいつもより早く高く動けていたと思う。裏庭を走り、這い、飛び、合間にルークと手合わせをし、いつもより一段高い枝に捕まり少し上がった息を整えていた。「ふぅー。今日はこのくらいにする?」の問いに「確かに今日は少しハードだったわね。そうしよう。最近のフランツ厳しくない?」「ははは。やっぱりそう思う?」
そう。最近の訓練はフランツに課題を出されそれを取り入れて訓練を重ねている。口癖が「念には念を入れてです」
私が「それにしてもマリアの服動き易かったね」
ルークも「ああ。こんな素材があったんだな」とブラウスの腕を見ながら言っている。
「どうも叔父様に生地を融通してもらったらしいよ」
「あーぁ!これ絹でできてるんだ。叔父上は養蚕事業やってるもんね。大量生産できるように研究してるって聞いたことある」
「書類仕事はできなくても、生産研究現場は叔父様中心にして動いているらしいよ」
「叔母上があなたにはあなたにしかできない仕事がある。って言ってたもんなぁー」
パンツも一見絹には見えないが絹でできているらしい。いろんな技術が集まってこのパンツができたのだろうなぁと感慨深く自分の足に目をやった。とその時「ピー」と犬笛の音が聞こえた。フランツからの合図だ。すぐに身構え部屋に戻るべく体制を取る。
犬笛は私達にしか聞こえない。犬笛が鳴ると近くに人がいるので速やかに部屋に戻ることになっている。
が少し遅かった。斜め下前方を見ると、少し離れたところにある裏門が開いていて、千鳥足のデニスが使用人棟に向かっているところだった。「今、動くのはまずい」とルークが囁く。静かに頷く。
様子を伺っていると、開いた裏門の影からバートが姿を現した。チラリとこちらを見たようだが、すぐにデニスに注意を向けた。そのまま使用人棟に消えて行った。
「もしかしてバレた?」とルークを見ると
「きっと大丈夫だと思うけど…」と使用人棟の方を見つめたまま言った。
説明回になってしまいました。




