提案
翌朝。皆が執務室に集まった。
フランツが先ず最初に発した。
「ルークさま、デニスの監視者より今朝、昨夜の件で報告がありました。(動きがあったのでつけて行ったら旦那様の部屋に入って行き暫くしたら出てきた。そのまま自室に戻ってその後出かけた様子はない)と。
昨日ルークさまがおっしゃった懸念を伝えたところ己の不手際を詫びておりました」
「それは不可抗力だろう?父上の部屋まで一緒に入っていくのはできないだろう。問題ないと伝えて欲しい。その者はバートか?」
フランツは少し驚いた顔で「はい。ご存知でしたか?」と問えば、ルークは「いや、昨日僕と同じようにデニスの姿を追うバートの姿を見たから、もしかしたら…と思っただけさ」
「さようでございましたか」と感心したようなフランツの声。「バートにはルークさまのお言葉伝えておきます」
「ああ。頼んだ」
「さて、昨日の続きだが…」とルークは話題を切り替えた。
「この日誌は、その日の天気、就労者の名前、就労時間、採掘量及び搬出量、起こった問題点と改善方法、結果などが項目別に書いてある。どちらの鉱山の日誌かわかるようなヒントはないか検討しよう」
その声に皆がテーブルに広げられた日誌を読み込もうと覗き込む。暫く皆黙って日誌と向き合っていた。
三枚の日誌の日付は去年のもので5月7月9月のものであった。
先ずマリアが「随分気候の良い時ばかりなのは何か意味があるのかしら?」と言う。
フランツが「先ず最初の疑問ですね。書き留めておきましょう」
私も気づいた事を言ってみた「ねぇ。この就労者の名前の左上に小さく(BR)ってあるけど、これはなんの記号?」
ポールが「あ、ホントだ。かなり小さい文字だけどBRって書いてある」言うと皆がそれぞれ「確かに」「ホントだ」と
「これも書き留めておきましょう」
ルークが「他には?」と促すとまた皆が日誌に向き合う。
「あら?BRの印がついている人は決まっているのですか?こことここに同じ名前があって印が付いています。他にこことここには別の人の同じ名前があって印が付いています」とマリアが三枚の日誌それぞれに指を指す。
確かに名前の左上にBR印の付いている者は別の日もBR印が付いている。三枚の日誌でどこかで重複しているのは二人であった。「レオナール・ウッド」「ウォルフ・ハイデ」
「なるほど。これも書き留めておきましょう」
「やっぱりBR印注意ですね」エレナが呟く。
私も「そうね」と反応する。
ポールが「二つの鉱山って近いんですか?天気はだいたい同じようなものになりますか?」
フランツが答える「そこそこ離れてはいるが、大きくは変わらない。局地的に雨が降れば別だが…」
「そうか…」とまた思案顔に戻るポール。
「ね。この日誌ってどこから持ってきたの?日誌っていつもどこに保管してあるの?どうやって他の物と見比べられるの?」
「やっぱりそうなるよなー。日誌は現地事務所に保管してあるそうだ」ルークが言えば
「そうなんです。本来こちらで保管するものではございませんので、旦那様の手元にあった。という事はわざわざ事務所に赴いて持ってこられた…としか考えられません。あるいは信用のおける者に持ってこさせたか…」とフランツが話を引き継ぐ。
「今、他の日の日誌と見比べる事は不可能なんだ。おそらくデニスや乱入者に指示した者はこの日誌を探しているのだと思う。だからその者に私達が日誌を持っていると勘づかれたくない。どちらの鉱山の日誌か見当をつけてピンポイントで確認に向かいたかった」
ルークの話を聞いて思った事を口にした。
「それって、ルークが動くから目立って向こうも警戒するんじゃない?私がちょっと遊びに行ってこっそっと確認してくればいいんじゃない?私なら相手もそんなに警戒はしないと思うんだけど」




