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前世は猫でしたので  作者: KAE


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東鉱山  4

笛の音が聞こえる!ランスは生きてる!

ティナは猛然と動き瓦礫を動かした。村人も呼応して瓦礫の撤去を続けた。

笛が鳴り続けている。(ランス!もう少し頑張って!今、助かるから!)笛の音に元気づけられるようにティナは動き続けた。


しかしだんだん笛の音が弱く、小さくなってきた。

(ダメ!ダメよ!あと少しだから…)そうは思うが、丸太を運び出すのに土砂が邪魔をする。

気持ちだけが焦る。


とうとう笛の音が聞こえなくなった。ティナはそこで呆然として立ち竦むしかなかった。


――――――――――――


ルーク達が坑道出入口についた時薄暗い中に浮かび上がった光景に息を呑んだ。

泥のようになった土砂が太い丸太を押し潰している。

丸太は折り重なるように運搬用台車に倒れ込んでいる。丸太と土砂の重みに耐えかねて、台車の車輪は押し潰されていた。台車がなかったところはルーク達の足元まで土砂が流されてきていた。


台車の向こうから笛の音が聞こえてきていた。


「あそこに誰かいる!」と台車を指して救助に向かった。

ルークは、笛を渡した者の顔を思い浮かべて、ティナかランスロットが下敷きになっていると判断した。

そして(なぜ、ここに?)と(間に合ってくれ)と混乱した思いを抱えて救助を開始した。

その間にも笛の音は、鳴り続けた。


ルークは五人では無理だと判断し、今日の採掘作業は中断して全員救助に回るように指示を出した。

暫くして多勢の屈強な坑内労働者が集まり、道具を駆使して土砂と丸太の撤去を始めた。

ルークも懸命に手伝った。しかし笛の音はだんだん弱く小さくなってくる。気持ちだけが焦った。


暫くして台車の脇の土砂がなんとか撤去され台車の裏を覗けるようになった。

どのような形で閉じ込められているのか確認しなければならない。

ルークは自分が確認に行くと言った。ルークなら後ろから灯りを照らしてもらえるだけで中の様子がわかるから。フランツに後方支援を頼み、台車の裏に潜り込んだ。


潜り込んだ先にはランスロットが朦朧とした意識の中で笛を吹き続けていた。


「ランス殿!ランス殿。助けにきました!気をしっかり持ってください!」と声をかけた。


その声にランスロットは薄く目を開いたがなにも見えていないようだ。しかし、ルークのオッドアイだけは認識できたようで「ティナ…」とひとこと呟いて意識を失った。


ルークはランスロットの呼吸を確認し、ランスロットの状態も確認する。


そして台車の裏から這い出して、

閉じ込められているのはエストラーダ・キンバリー伯爵だということ。

意識を失っているということ。

右足首が丸太に挟まっているということ。を皆に伝えて救助作業を再開した。


暫くの後、ランスロットは助け出された。急いでウォールヒル領主邸に運ぶように指示を出す。

そして、おそらくこの瓦礫の先にはティナがいるだろう。心配しているだろうと思い、首元からペンダントを取り出し力強く吹きながらその場を後にした。


ルークの後ろから小さくティナの吹いた笛の音が聞こえてきた。

ティナに伝わったことに安心して急いでランスロットをウォールヒル領主邸に運んだ。


――――――――――――


呆然と立ち竦むティナを村人達は後ろから見守っていた。

誰も声をかけられない。


呆然と立ち竦んでいたティナにまた笛の音が聞こえてきた。今度は力強く。笛の音はだんだん遠ざかって行く(ルークだ!ルークが助けてくれたんだ!)嬉しい涙が溢れてきた。そしてティナはルークに向かって笛を力強く吹いた。笛の音がちゃんと届くようにと何度も何度も力の限り吹いた。そして…(行かなきゃ!)と思い。溢れる涙を泥で汚れた服の袖でぐいっと拭って、皆がいる方に向き直った。

振り返った先にいる村人達にティナは笑顔で「みなさんありがとうございました。私は今から夫を迎えに行って参ります。申し訳ないのですが、川向こうに停めてある荷馬車を預かっていただけますか?夫が元気になったら引き取りに参りますので、よろしくお願いします」と一方的に告げ、踵を返し、雑木林の中をウォールヒル領主邸に向かって走り出した。


後に残された村人達はしばらくその場に佇んでいたが、ティナに言われた通り、荷馬車と気落ちしている子ども達を村に連れ帰って行った。


ティナは力の限り走った。ルークに助け出されたのはわかった。しかしどんな容態なのか不安だった。怪我は酷いのか?意識はあるのか?それよりちゃんと生きていてくれてるのか?


東鉱山を囲むようにある雑木林を抜け、街を抜け、領主邸を目指してひたすら走った。

息が切れ、胸が苦しかった。だけど走り続けた。

そして領主邸に辿り着き、扉に飛びつくようにドアノブを握りしめ思い切り開けた。





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