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前世は猫でしたので  作者: KAE


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東鉱山  3

崩れ落ちる丸太と軒を茫然と見ていたティナは、危険を顧みず土砂と瓦礫の山に駆け寄り「ランス!!ランス!!」ランスロットの名前を叫びながら素手で土砂を掘り始めた。

「嫌ぁー!ランス!」土砂をいくら掻き出しても次の土砂が流れてくる。それでもティナは諦めず土砂を掻き出している。

「ダメよランス!ずっと一緒って言ったじゃない!一緒に帰ろうって言ったじゃない!ランス!」

ティナの顔は涙と泥でぐちゃぐちゃで土砂を掻き出す手は傷だらけで、血が出ている。

しかしティナはそんなことは構わずに、土砂を掻き出し続けた。

崩れ落ちた軒が見えてきた。

「ランス!ランス!もう少し頑張って!」必死に軒に積もった土砂を除け、軒を動かそうとするがビクともしない。

ティナはあたりを見まわし廃材を見つけ、軒の下に差し込んで浮き上がらせようとしたが、それでも動かない。ティナは諦めない。廃材を投げ捨て、再び土砂を掻き出し始めた。


助け出された子ども達はあまりの光景に声をあげて泣き出した。

その声を聞きつけて子ども達を探しにきていた村人達が駆けてきた。


「おーい!大丈夫かー?」と子ども達に駆け寄った村人の声にも子ども達は反応せずにひたすら大声で泣いている。

マルクの父親はマルクの肩を掴み揺らし「おい!マルク!泣いてるだけじゃわからないだろ?どうした?なにがあった?」と大声で伝えると、やっと父を認識したマルクは「父さーん!ごめんなさい…わぁーん」とまた泣き出して収集がつかない。困っていると、少し離れた場所で自分の息子に駆け寄っているジャックの父の姿が見えた。ジャックは泥だらけだ。

そして…その先、坑道の入り口は軒が崩れ去りひとりの女性がなにか作業をしているような姿が見える。

嫌な予感に村人が駆け寄るとその女性は顔を泥だらけにして泣きながら「ランス!ランス!嫌っ!ダメよ!」と叫び土砂を掻き出し続けている。

マルクの父親は「ランスさん?」と呟き、今土砂を泣きながら掻き出しているのがティナだと気づいた。

そして慌ててティナと共に土砂を掻き出し始めた。


全てを悟った村人も土砂を掻き出し始めた。


――――――――――――


「ん?」ルークは何かが崩れるような音に反応した。

周りの皆は「どうしましたか?」とルークに声をかける。

管理事務所で補強工事の計画を立てている時だった。


「何かが崩れるような音が聞こえたんだが…」とルークが言うと、「私にはなにも聞こえませんが…」と管理責任者、レオナール。ウォルフは口々に言うが、フランツはルークを真剣に見つめ「調べに行った方がよろしいのではないでしょうか?」と進言した。

ルーク達五人は音の原因を調べに管理事務所を出た。


――――――――――――


ティナと村人は土砂に埋まった軒を懸命に取り除こうとしていた。土砂を掻き出し、廃材を組み梃子(てこ)の仕組みで軒を浮かし、引き摺り出した。

軒の下は丸太が折り重なって倒れていて隙間から土砂が流れ込んでいる。折り重なった丸太に邪魔をされ先が見えない。

「ランス!ランス!」と呼びかけても反応はない。

折り重なった丸太をひとつひとつ取り除くことにして、再びティナは作業を開始した。ティナの様子を見ていた村人も作業を開始する。村人の表情は何かを諦めていたが、誰もなにも言えなかった。


その時、丸太の隙間から笛の音が聞こえてきた。ティナとルークにしか聞こえない笛の音が。


――――――――――――


ルーク達五人は坑道を奥に進んでいた。異常はないようだ。いつも通り作業をする音が聞こえてくる。

ふと、横穴からティナの声が聞こえた気がした。

ルークは坑道を左に曲がった。


暫く歩いて(おかしい)と思った。

そろそろ出入口から入る光が見えてきてもいいころなのだが暗い。皆不審に思い、坑道の出入口の方をカンテラの灯りでかざして見た。


坑道の出入口は土砂によって塞がれている。

管理責任者が「ああ。軒を支えていた丸太が崩れ落ちたんですね」と言った。


ルークは「誰かが巻き込まれた可能性は?」と聞くと


「無いと思いますよ。外の小屋は全て撤去してますし、川沿いの小道からは距離がありますので、誰かが迷いこむこともないかと思います」


「そうか。どうせ塞ぐ予定だったからこのままに……」と話を途中でやめて、崩れている出入口の方を見た。

笛の音が聞こえる。ルークとティナにしか聞こえない笛の音が。


「誰かいる!」のルークの声に全員出入口の方に向かった。


――――――――――――


ランスロットは暗闇の中で気がついた。

(どれだけ気を失っていた?そんなに時間は経ってないと思うが…)

ランスロットは奇跡的に助かった。

崩れた丸太が倒れた先に鉱石運搬用の台車があった。ランスロットは土砂に押し流され、台車と丸太の隙間に入り込んで、九死に一生(きゅうしにいっしょう)を得た。しかし足が何かに挟まり体を動かすことができない。

(ティナは…)一番にティナが心配になったが、今のこの状態ではなにもできない。

(ティナに会いたい)と思った時ティナの言葉を思い出した。〈私はあなたのいる場所がわかるの〉と言って渡してくれたお守りのペンダント。

ランスロットは動かせる左手をなんとか首元にやりペンダントを取り出し口元になんとか持っていき咥えた。ティナに会いたい気持ちを込めて力の限りペンダントの笛を吹いた。





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