レオナールとウォルフの訪問 2
夜。一日が終わり、ルークとクローディアは私室で寛いでいた。
クローディアはルークの肩に頭を預けて「ルーク。私はあなたを誇りに思うわ」と伝えてきた。
ルークは「ふふ。なんだよ急に…」と笑いながらクローディアの肩を抱き寄せた。
「だって、〈気にすることはない〉って」
「ふふ。ディアだって同じこと言うと思うよ。バーネットに放逐された時、俺のせいだって思った?」
「それは思うわけがないわ」
「だろ?」
「ふふふ」
「なに?」
「あなたってやっぱり素敵」
「惚れ直した?」そう言ってクローディアの顔を覗き込む。
「ずっと惚れてるから、直してない。ふふ」クローディアはルークの瞳を見つめながら微笑んで伝えた。
そしてルークはクローディアの頬に優しく手を添えて「ディア。愛してるよ」と言い
クローディアも「ルーク。愛してるわ」とルークに告げる。
そう言い合って二人は唇を重ね、夜は更けて行った。
そして数日間は二人は仕事の合間にのんびりした時間を過ごした。
南鉱山の視察を兼ねて観光し、二人で街の散策を楽しんだり、長閑な農村地帯を訪れ皆の様子や実りの具合などをみて回ったりした。
各地でルークとクローディアの若き公爵夫妻は歓迎され気さくに交流を持つ姿に好感を持たれた。
二人が領主邸に戻った翌日、レオナールとウォルフがルークを訪ねてきた。
応接室に通した二人はルークに
「お忙しいところ申し訳ありません。急ぎお知らせした方が良いと思いましておうかがいしました」と礼をしながら告げた。
ルークはソファを勧め、自分もその前に座る。
「お急ぎ…というのは?」
「はい。以前横穴の件で〈問題のある場所で掘った横穴〉と申し上げましたことを覚えていただいておりますでしょうか?」
「はい。勿論」ルークは多くを語らず、二人の話を促す。
「その〈問題〉というのは、地盤が緩い場所で崩落する可能性があるんです。絶対崩落するとは言い切れないんですが…。先日、心配になって二人で確認してきました。横穴坑道通路の途中で地下水が染み出してきている部分がありました。本来はそのまま染み出して流れていくものなんですが、もし大雨でも降って山の保水力が飽和状態になったら危険です。横穴を塞いで、本坑道に影響が出ないようにした方が良いのではないかと、ご相談にうかがいました」
ルークは黙って聞いていたが、危険なことを放置にはできなかった。
「わかりました。早速横穴を塞いで補強工事をしましょう。怪我人が出てからでは遅いですから。私も現場を確認したいので、明日案内していただけますか?」
二人は「ご理解いただきありがとうございます。明日の朝本坑道入り口からご案内します」と言ったが
ルークは「礼を言うのはこちらの方です。事故が起きる前に教えていただき感謝します」と礼を言った。
そして、明日の朝、現地確認をしてから工事の計画をすることを約束して二人は屋敷を辞した。
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夜中降り続いていた雨が止んだようだった。
ティナはランスロットの胸に顔をうずめて、ランスロットに抱き込まれるように眠っていた。
雨上がりの爽やかな風が二人が眠る荷馬車の幌の隙間から入ってきた。
ティナの意識が深い眠りから浮上し、目を覚ました。
ふと顔を上げるとランスロットのエメラルドグリーンの瞳がティナを見つめていた。
「おはよう。ティナ、よく眠れた?」
「おはよう。ランス、ええ。あなたのここはとても安心するわ。おかげでよく眠れたわ」と言いながらランスロットの胸を指でつついた。
ランスロットはさらに強くティナを抱き込み「そう?それはよかった」と言いながらティナの額にキスをした。
ティナはクスクス笑いながら、ランスロットの胸に頬を擦り寄せ「ここで、私たちの旅も終わりね。名残惜しいわ」と呟いた。
「ああ。ここで終わりだ。だけど、これからは一緒に家に帰ることができる。あの時みたいに別々に帰る必要はなくなったのが嬉しい」とランスロットはティナの頭に頬を擦り寄せた。
「ええ。そうね、そうだわ。一緒に帰れるのね!うふふなんか幸せ…うふふ。ずっと一緒ね」
「ああ。ずっと一緒だ。愛しているよティナ」
「わたしも、ランスを愛しているわ。ずっと」
二人は見つめ合い自然と唇を重ね、暫く睦み合っていた。
「それにしても昨日の夜の雨は凄かったわね、川の流れの音が少し怖かったわ」
「確かに…ここは下流のほうだから水量も多いからね。橋が流されていないか後で確認しに行こう」
「ええ、そうね。後でね。もう少しこのままでいたいわ」
「ふふ。仰せのままに…」
そして二人はもう暫くの間、荷馬車の幌の中で甘い時間を過ごした。




