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前世は猫でしたので  作者: KAE


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二人の旅 再び  5

夫婦はびっくりして「売る…って言ってもねぇ。この前掛けを…かい?」と旦那が壁にかかった前掛けを指差す。

「売るほどたくさんはできないよ」と奥さんも残念そうに言う。

しかしティナは「量産は必要ないです。質で勝負です。例えばカバンとかクッションカバーはとても人気が出ると思います。あとは衣類のアクセント兼補強で…少し考えてもらえませんか?私も今思いついたばかりなので、ちゃんと説明できるように整理します」


旦那さんはティナの勢いに飲まれて目を丸くしている。奥さんは「商売気のある奥さんでよかったね」とランスロットを見た。


ランスロットはティナの〈いいと思わない?〉が発動したことを感じて眩しそうにティナを見た。


話が弾み夜が更けて、ティナとランスロットはその村で泊まることにした。

部屋を用意してくれようとした夫婦にランスロットは宿泊できるように幌つき荷馬車で移動してきた事を話し、その中を見せた。寝具、茶器などの入った箱が置かれて尚、スペースがある。夫婦は「これで旅をしてきたのかい?いいところの若夫婦に見えたのに、なかなかやるねぇ」と驚いていた。

子ども達はその馬車に興味津々で、ランスロットに「泊まってみるか?」と誘いの声にすぐに首を縦に振った。

その夜は子ども達を挟み四人で寝る事にした。

幌を少し開けて星を見ながら寝転んだ子ども達は最初ははしゃいでいたが、すぐに眠りに落ちた。

ティナとランスロットは(いつか自分たちの家族でこんなことができるといいね)と話していた。


翌日、ティナとランスロットは村を案内してもらい村人達を紹介してもらった。


ティナは村の女性達と刺し布の話を、ランスロットは男性達と皆の日々の暮らしの様子の話をしていた。


ティナの刺し布の話に村の女性達は興味を持ち真剣に聞き入ってくれた。

そして、秋までに布袋とクッションカバーそれと富裕層向けのガウンの襟、袖口などに入れる刺し布のデザインを考えて欲しいと早速依頼していた。


その後、村の広場で皆が持ち寄った昼食を囲み親交を深めた。

(いろど)り豊かな昼食にティナはまた感嘆の声をあげ、皆の笑顔を誘っていた。


昼過ぎ、また来ますと言ってティナとランスロットは雑木林に向けて出発した。荷馬車の揺れは更にひどくなり、道幅も狭くなっていった。

しかし、木立が並び、木漏れ日が差して決して暗くはなく、木立の間を抜ける風が気持ちいい。

ゆっくり進むと夕方には中洲に橋がかかる川縁に着いた。ここから先はウォールヒル領になる。

荷馬車を一旦停めて、二人は川縁を歩いた。


川幅は広く、流れは緩やかで、魚が泳いでいるのが見える。

二人は木立の中のデートを楽しんだ。

木立の中は実のなる木もあり、リスが走るのが見えた。きっと他の動物も生息しているのだろう。


川縁の草地に座りランスロットに肩を抱かれランスロットの肩に頭を預けたティナは、流れる川面を見ながら「ねぇランス。ここにキンバリー直営の富裕層向けの貸別荘を作らない?近くの村から食材を調達して必要ならば料理人も派遣して。内装は素朴な感じにして、刺し布を使ったインテリアで…たくさんは要らないわ。一棟か二棟。自然を壊さない感じで…どうかしら?いいと思わない?やってみる価値はあると思うの。キンバリー直営だから宿泊者もそれなりの方限定できると思うの」


「ティナの〈いいと思わない〉が発令したね!いいと思うよ。やってみよう。やってみたら次になにか見えてくるかもしれないしね」とティナの肩に置く手に力を込めた。


「早速、ドミニクに開発調査の指示しよう」とランスロットが言えば

「ふふ。またドミニクの仕事が増えたわね」と笑い

「あいつは楽しそうだけどな」とランスロットに笑顔で返された。


その夜は川縁の少し開けたところで夜を明かすことにした。

落ちていた石を囲いに使って火を起こし、湯を沸かしてお茶を淹れた。

農家の夫婦から夕食にと持たせてもらった箱を開けると。薄く焼いたパンにたくさんの具材を巻いて作ったロールサンドと芋のキッシュが入っていた。

どちらも美味しく温かいお茶と一緒に楽しんだ。


星が瞬き始めた空を見上げて「子ども達可愛かったわね」とティナが言うと

「いつか俺たちのところにも来てくれるさ。待ち遠しいな」とランスロットも夜空を見上げた。

〈刺し布〉とは東北地方の〈差し子〉をイメージしてみました

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