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前世は猫でしたので  作者: KAE


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プロローグ

初めての投稿です。最後まで乗り切るように頑張ります。よろしくお願いします。

夢を見た。

とっても寒い。凄く寒い。

どこにいるのかわからない。

目を開けようと頑張ってみる。

なんとか目を開けると薄いもやの向こうにこちらを見ている金と青の目があった。

そして消え入りそうな声で「ニャー」と鳴く。

「え?何?」と言いたいけれど声が出ない。

どんどん瞼が重くなる。そして暗闇になった。


ガタンッ!バキッ!ドンッ!ガガガッ!ヒヒィーン!

いろんな轟音がする。世界がクルクル回ってる!なぜかそれはゆっくりで私の周りをいろんなものを浮遊させながら回ってる。

「え?何?」と思ってもやはり声が出ない。

何かにぶつかった。そして暗闇になった。


暗闇の中で私は浮いてる。少し息苦しい。

空気を思いっきり吸いゆっくり吐いたら楽になった。

目の前の暗闇に薄く光が差してきた。

ゆっくり瞼を開けてみる。見慣れたベッドの天蓋の天井が見えた。「あぁ、夢か…」呟いてみた。

その声に反応するようにベッド脇から声がした。

「お嬢様?」声のした方に目をやると侍女のエレナが覗き込んでくる。とても不安そうに。

「エレナ、おはよう」と声をかけると次第に大きな目に涙をいっぱいためながら「お嬢様ぁ〜!よかったぁ〜!」と両手で顔を覆って大きな息を吐いた…と思ったら涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭おうともせず

「ご気分は?どこか痛い所はありませんか?ちゃんと私が見えますか?あーどうしましょう?先ずは侍女長に知らせなきゃ!少しこのままでお待ちくださいね」

と一方的に言うとポカンとする私に背を向け一歩踏み出そうとしたところでドアの向こう、少し離れたところから誰かが走ってくるような音がした。ドアの方に目を向けたまま「誰か来る?」とエレナに声をかけるとエレナは「いえ、誰もいらしてませんが?」と不思議そうに答えた。でも確かに誰か走ってこちらに向かって来る音がする。すると突然部屋のドアがバタンと大きな音を立てて大きく開いた。その先には肩で息をして荒い息を吐きながら金と少し青みかがった金のオッドアイの両目を見開いた私の双子の兄のルークが立っていたそして第一声…「ニャー」

「え?何?」…と思ったが兄の言っている事が理解できる。「ニャー」の質問に答えるようにコクコクと頷くとホッとしたように両膝をついた。その時後ろからダダダッ!と走り込んで来たルークの侍従の青年ポール。「坊ちゃーん!何やってるんですかぁー!目覚めたと思ったら急に走って出て行ってー!勘弁してくださいよぉー!心臓が持ちませんよー!」と少し気の抜けたような喋り方でルークに詰め寄っている。

その一連の騒ぎに虚をつかれベッド脇で棒立ちになって見ていたエレナの頭の上に?マークや!マークが沢山出ているように見えたのは私だけかもしれない

刹那。「え?なんで私ここにいるの?」

確か…私は…私達は…。と思ったところで、ルークの焦った声がする「父上と母上は?」その言葉に部屋の空気が沈む。ポールが先ほどとは打って変わって背筋を伸ばしさながら護衛のように少し腰を折り私達に伝えた「ご案内します。その前に医師の診察を受けてください」

程なくして侍女長と医師が訪れルークと二人それぞれの部屋で診察を受けた。医師は「問題ありません。手足に打撲痕や擦り傷は見受けられますがそれも1、2週間で治るでしょう、後遺症の心配もありますのでその間は静かにお過ごしください」そしてお大事にと部屋を去して行った。侍女長によるとルークも同じ診断がされたようだ。

その頃には思い出していた。なぜ今私がこんな状態なのか、屋敷中の空気を重くしている原因がなんなのか

何が起きたのか…いや、これは夢だ、夢であって欲しい仮にあれが現実でもルークも私もこの程度なのだからお父様とお母様もきっと大丈夫…そうだ、様子を見に行かないと…行ってそばで看病してあげないと…

そう思い起きあがってベッドに腰掛けると侍女長マリアが駆け寄ってきて私の前に膝立ちになり私の両手をマリアの温かい手で包んだ。ふいに包まれた温もりにホッとしてマリアの顔を見る。マリアは何かを堪えて辛そうな顔をしながらも無理に微笑んだ。

マリアはいつもそうだ、私が不安そうにしていたり何かに怯えたりしているとそばに来て手を握ったり時には優しく抱きしめて頭を撫でて「大丈夫ですよ」と囁いて不安や怯えを取ってくれる。しかし今回は「大丈夫ですよ」とは言ってくれなかった。代わりに「おそばにいます。旦那様と奥様の元へ向かわれますか?」

私は奥歯を噛み締めて黙って頷いた。それでもまだ希望は捨てられず「きっと大丈夫」と心の中で何度も繰り返しながら身支度を始めた。

エレナに手伝ってもらいながら体に負担の少ない素材でできたデイドレスに着替えて部屋を出た。同時にルークもシャツにズボンという楽な格好で部屋から出てきていた。お互いドアの前で顔を見合わせる。何も言わなくてもわかる。とても不安だと。

二人で同じ方向を向いて侍女長の後ろに付いて歩く。

階段ホールを抜けてまっすぐ行けば両親の寝室がある、当然のようにまっすぐ進もうと思っていたがマリアは右に折れて階段を降りようとした。足が止まる。

マリアが振り返り立ち止まる。みんなが足を止める。誰も先を促さない。ルークの左手が私の右手に繋がれる。見上げるとルークのオッドアイが心配そうに見つめてくる。ルーク自身も不安なのにその優しさに引き攣った微笑みで気持ちを返す。

気を取り直して階段を降りる事にした。

一階ホールを抜けて広間の方に向かう。足が重い。右手の温もりだけを頼りに前に進む。重厚なとびらが開かれ広いホールの奥、細長い箱が2つ。窓からの日差しでそこだけ浮き上がって見える。細長い箱のすぐそばで執事のフランツが佇んでいた。誰も何も言葉を発さない。靴音だけがやけにホールに響き渡る。近づいて初めて細長い箱は棺だと認識した。ルークと二人で手を繋いでその棺に近づいて行く。棺にはお父様とお母様がそれぞれ眠っていた。声を掛ければ起き上がりいつものように「ティナ!おはよう!」と優しい笑顔を見せてくれそうだった。願いは叶えられないともう理解している。ルークと私は声も出せずただ、ただ静かに泣いていた。お父様とお母様はとても綺麗に死化粧を施されていた。それでも隠す事ができない傷は花で覆われていた。「なぜ?なぜ?」答えのない問いかけが私の中でグルグル回っていた。


カーン。カーン。カーン。カーン。カーン。

教会の鐘が鳴り葬儀が粛々と執り行われる。

お父様とお母様は二人並んで埋葬され、葬儀に参列くださった方々に感謝を述べ私達は屋敷に戻ってきた。

着替える元気もなく家族のプライベートなサロンに向かいソファーに体を沈めた。ルークも斜め前の一人がけソファーに腰を下ろす。マリアがお茶を用意してくれた。全員喪服のままである。

「ねぇマリア達も一緒にお茶しない?フランツもポールもエレナも…いいでしょ?」と声をかけるとルークも同意する。「いいね。みんなで少し休もう」

その言葉にフランツが「ではお言葉に甘えて、ご一緒させていただきます」その言葉を合図にマリアとエレナがみんなの分のお茶を用意した。テーブルを囲むように6人がソファーに腰掛け静かにお茶を口に含む。

ルークがポツリと「ちゃんと見送れたかな?」と口にした。フランツが「はい。ご立派でございましたよ。旦那様も奥様もお二人にしっかり見送ってもらえて安心されたのではないでしょうか、私はそう思います」

その言葉に少し安堵したようなルークは「そうか」と一言答えそして気を取り直したように「さて。これからの事だけど、どこから手をつければいい?」とみんなに問いかけた。

そうよね、お父様とお母様に本当に安心してもらう為にはこのままじゃダメよね。前を向かなきゃ…。ルークの問いかけに背中を押された感じがして少し元気が出てきた…気がする。

私達6人は今後の想定されるスケジュールを共有する事にした。


ルークとティナの双子は17年前の秋に、ここヴェルタリス王国のそこそこ歴史があるウォールヒル侯爵家に当主アルフレッド・フェルス・ウォールヒルとその妻フローラ・ルーナ・ウォールヒルの第一子ルーク・アウルム・ウォールヒル。第二子ティナーリア・シエル・ウォールヒルとして産まれた。二人の容姿は確実に両親から引き継がれ父親譲りの艶のある黒髪に母親譲りの穏やかな顔立ちそして父親からの金色の瞳にルークは左目ティナは右目に母親からの青色が溶け込んでいた。二人ともそれはそれは両親のみならず屋敷中の人々に愛され大事にされ伸び伸びと育った。侯爵家の子供ならば貴族らしく厳格に育てられるべきところなのだが、とにかく兄妹仲が凄くよかった。ハイハイでなんとか動けるようになると、もつれ合うように戯れあって遊び。ヨチヨチ歩きができるようになると競い合うように歩き出しどちらかが転ぶともう片方が必ずそばに戻ってくる。誰かに何かをお願いするときはルークは右目が金。左目が青みがかった金のオッドアイを。ティナは右目が青みがかった金左目が金のオッドアイをうるうるさせながら相手を見つめる。そんな二人があまりにも愛らしく。かつ、その見つめられた相手はその瞳に魅入られ負けてしまうのだった。二人の厳格な筈の家庭教師も例外ではなかった。しかしながらただ甘やかされていた訳ではなく、悪戯をすれば両親だけでなくフランツやマリアにも叱られ、勉強をサボったり思うような成績が取れなければ厳格な家庭教師は己の心に鞭打ちながら二人を(たしな)めた。二人は周りの大人に反抗する事もなく素直に反省して()()()()研鑽(けんさん)を積んで行った。要するに時々羽目は外すが子どもらしい子どもであり周りは温かく見守っていた。15才の誕生日にルークは小侯爵の称号を得た。そしてその夏二人は王立学院に入学した。15才ならば婚約者がいてもおかしくはなかったが二人にはいなかった。その理由は侯爵自身二人の婚姻に特に焦りは感じていなかった。縁を結びたい家門が王家をはじめとする主だった家門になかった。逆にウォールヒル侯爵家と縁を結びたい家門はたくさんあった。ウォールヒル家は潤沢な財産に温暖で肥沃で広大な領地。大きな鉱山も所有している。さらに領地の特産品の流通を目的として始めた商会が順調に他領の特産品を巻き込み成長の一途を辿っている。最初はそんなに広くない領地を持つ領主から始まったウォールヒル家であったが、代々堅実な領地経営と王家への忠誠と貢献で王家からの信用を得て少しずつ領地を広げ鉱山管理も王家より任されるようになった。そんな侯爵家と縁を結び後ろ盾を得たい家門はたくさん出てくる。ルークとティナの両親もそんな思惑を含んだ政略結婚であった。しかし両親は仲睦まじかった。元来穏やかな両親は寄り添い、政略の恩恵に預かろうと寄ってくる親族を時には後援し時には頑なに拒絶し夫婦揃ってウォールヒル家を守ってきた。そのおかげでウォールヒル家は盤石で子ども達に政略結婚を強いる必要はなかった。

そんな恵まれた環境で二人は順調に成長し、学院生活も充実していた。そんな日々を過ごしていると、普段忙しくしている両親から日帰り旅行に誘われた。当然喜んで同行し、首都郊外の湖畔散策を家族で楽しんだ。しかし夕方帰宅途中であの事故に遭ってしまった。

そして今日、両親を見送り気持ちに区切りをつけて前を向こうとしていた。

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