5 - 研究所で過ごして
※イラストは特に表記が無ければ全て天鬼作のイラストとなっています。
リアライズ辞典wikiがあります、もし良ければご利用ください。
https://rearizedictionary.miraheze.org/wiki/%E7%94%A8%E8%AA%9E%E9%9B%86
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施設に着くと、いくつかの検査をスピーディーに終えていった。
結論から言えば、上郷昊菟が超能力者かどうかは判別しきれなかった。
光を強める事が自らの意思でできず、体重の変化は無い。
心理テストでは超能力者として十分な素質ありと判断された。
矛盾反応とやらは、様々な物体に光を当てたり、他の能力に晒されても起きなかった。
五感も麻酔まで使ったにも関わらず、光は決して弱まらなかった。
麻酔開けのだるい体のまま、その説明と、1周間の延長検査が決まった事を聞いた。
それからは、施設内で過ごすこととなった。
何人か、別の超能力者候補ともすれ違う事もあるが、極稀に大人が少なく、基本的に若者が多かった。
研究者曰く、年齢によって、発現確率が大きく変化するらしい。
ひとまず、落ち着いて一人の時間を過ごす事もできるし、備え付けの電話を使って通話することもできる。
移動時からは想像できないほど、案外穏やかな時を過ごせる空間だった。
両親家族と連絡したり、引っ越しの準備の話をしたり、その辺の超能力者からの自慢話を聞いたりしてすごした。
そこかしこからときより臭う、血の匂い以外は落ち着ける環境だ。
超能力発現から二週間近く。
困惑も、光る指を見て、いくつかの夜を過ごすうちになくなっていき、こういう検査を受ける事もネットでそれとなく知っていた。
ただ、どうにも実感が湧かない。
施設にいる元気そうな人物に何人か聞いてみたら、皆それなりに自分の能力の詳細を知っている者が多かった。
なんなら自慢話のように、現実で漫画のような説明をたんまり聞かされた。
昊菟だけはその限りではなかった。
能力が発現した瞬間から、彼らは手を握るように、指を動かすように、それがどういうものか、どう使うのか理解するらしい。
唐突な理解と情報に戸惑う事はあるそうだが、時間をかければ自分の思いを叶える頼れる力となる。
だが、昊菟にとっては、指先が光るだけである!
何ができるというのか!
昊菟の能力を聞き返された時に、
「説明しよう! 右手人差し指、第一関節より先が光るのである!」
と、コッテコテに説明したところで、気まずさといったらない!
中学三年とは言え、人生で幾度となく味わった疎外感は、ここでも例外ではなかった。
ただ、中二病かもしれないが、この疎外感を象徴するかのような指の光は、彼にとって愛着の湧くものに少しずつ変わっていった。
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【魔法と超能力の違い - ①】
魔法は運動などで使う体力などを含む、生命力を消耗し、理屈と科学の粋で発動するもので、使いすぎれは酷くて栄養失調、または過労になり、放置すれば死亡する。
超能力は心の持ちよう、意思の強さ、その全ての源である魂を消費するもので、使いすぎれば体は健康なまま動かなくなって即死する。