2 - 超常世界へようこそ
※イラストは特に表記が無ければ全て天鬼作のイラストとなっています。
リアライズ辞典wikiがあります、もし必要があればご利用ください。
https://rearizedictionary.miraheze.org/wiki/%E7%94%A8%E8%AA%9E%E9%9B%86
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最初は、周囲を照らすものではなく、LEDなんて比べるにも足りない、蝋燭よりも光らない人差し指のかすかな光だった。
だが、ものの一週間もいらず、その光は日光の元でも光るようになった。
それからはずっと一定の光量を放ち続けるようになる。
中学3年生を終えようとした頃。
実家住まいの少年にとって、それを家族に隠し通すには無理があることだった。
特別隠し通したい内容でもなかったので、少年は義理の両親と妹にその指を見せた。
「光ってるね……」
誤解の無いように伝えておくのだが、蛍光塗料を塗ったとか、ライトを埋め込んだとかそういったものではない。
本当に地味な変化だが、この世界において、彼らには思い当たる事があった。
「超能力……かな?
おにいちゃん、超能力者になった?」
年の差3歳の妹は興味深そうに指の光を覗き込んだ。
かなりの興味があるようだったので、少年は右手を差し出し、その手を好き勝手に触らせた。
初めてのおもちゃのように、もにもに揉んだり、曲げたり、握ったりされるが、その光は変わらずそこにあった。
「おおー」
興味があるんだか、ないんだかわからない感嘆の声を聞こえてくる。
この世界では読者のあなたの居る世界とは違い、特別な力が判明し、常用されるようになっていた。
魔物とかいう化け物が地球のあちこちを荒らし回り、根絶しきれず、未だに侵入不可能な場所があったり。
人類史上、類を見ない津波が太平洋で起きたり、それらの事件の解決に大きくかかわった、魔法と超能力という2つの力を持った、ムー大陸の先住民がでてきたり。
新しく地球上に出現した、手つかずの資源を求め、ムー大陸の土地の権利を奪い合ったり。
少年たちの時代では、そんな激動の時代はすでになりを潜め、読者作者僕私達と同じ現代レベルの文明を維持したまま、何故か穏やかな今日を過ごしている。
そのあたりの話は語るに長すぎるので、今はぼんやりとそういうことがあったのだと知っておいて欲しい。
「超能力……って何ができるのさ、父さん、母さん?」
「それは……昊菟が知ってるんじゃないか?」
「いやわかんないよ」
少年、上郷昊菟は、その人差し指の光の持ち主だ。
一般的に、どういう理屈なのかもさっぱり分からないが、超能力者は超能力を手に入れた瞬間から、その使い方を知っているものとされている。
……のだが、昊菟にはその光の使い方はさっぱりわからなかった。
幸い、両親は身をもって前述した災害の痕跡と昔話を聞いた世代だ。
こういった程度の非現実なら、取り乱す事なく対処ができる方だった。
その両親からしても、一般的に言われている説に乗っ取らないその現象は対処に困るものだった。
使い方わかんないと昊菟から言われたその時、両親も昊菟を見てあんぐりとして固まっていた。
それを見て昊菟はナイーブな表情のまま固まった。
しかし! 起きてしまった事は起きてしまった事だ!
起きた事は受け入れざるを得ない!
上郷家はひとまず、これを既に起きてしまった事として受け入れようと決め、今後の事を考えた。
これが超常的な力であることは間違いない。
であれば、ひとまずは研究施設に昊菟を送る事が先決……なのだが。
まだできて間もなく、歴史の浅い超能力の研究施設に義理とはいえ子供を「はいそうですか」と追いやる気にもなれず。
一旦、淡い希望を持ち病院に診せるも、「……魔法か超能力、でしょうな?研究施設に預けるべきでは?」と、分かっていた玉砕にあった。
まあ、これはこれで、超常的な現象であるとお墨付きを頂いたことにもなり、腹も座ったものである。
家族で話し合い、渋々と超能力研究施設へとアポイントメントを取り、昊菟の能力について調べてもらうことにした。
もしも、これが超常でなければ、いつもどおりの生活を続ける事ができる。
しかし、上郷の両親には、予感があった。
上郷昊菟、彼は、超能力者になりうる子であると。
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【超能力研究所 - ①】
自然発生する超能力者達の詳細を管理・記録・研究するための国連とその国家の機関。
各国に必ず存在し、自己申告された超能力者の人権とムー大陸での生活を保証する。