15 - 敵意を辿って②
※イラストは特に表記が無ければ全て天鬼作のイラストとなっています。
リアライズ辞典wikiがあります、もし良ければご利用ください。
https://rearizedictionary.miraheze.org/wiki/%E7%94%A8%E8%AA%9E%E9%9B%86
階段を駆け上がり、窓を見つめるスーツ姿を探す。
発見できないまま、その足は屋上の戸を超えていた。
「……!」
そこには、バッテリーを傍らに置いた、結晶で作られた銃を持っている男が居た。
目を丸くして互いに目が合う。
数瞬、思考が巡る。
相手は銃らしきものを持っている。
この後間違いなく攻撃されるだろう。
素人の昊菟が銃を取り出し、早打ち勝負を仕掛けるのは割に合わない賭けだと感じた。
昊菟は、すぐに催涙手榴弾を投げつけ、走り出していた。
数秒遅れ、走り出す昊菟を見た後、伊吹は銃を構えだした。
だが、催涙手榴弾から吹き出た煙による成分で、目の痛みと喉の痛みが引き起こされ、咳き込む。
間際まで昊菟を狙っていた水晶銃は、熱光線を発射し、昊菟の隣の床を火を上げながら赤く熱した。
「くそったれ!
人権ねえって思い知らされるなぁ!」
全力疾走。
相手が持ち直すより早く。
しかし伊吹は、屋外であることが幸いし、手榴弾を蹴って簡単に遠ざけ、狙いを定める。
だが、その視界は涙でボヤけていた。
とにかく撃つしかなくなった彼は、甘い狙いのまま乱射する。
昊菟は時に立ち止まり、時に高く飛び上がりながら。
射撃を当てにくくするように工夫した。
熱光線は貯水タンクや室外機を熱で焼き切っていた。
属に言う、レーザー、ビームと言った類のもの。
とっさに貯水槽の水を被った。
重くなった体を必死に動かし、速度を落とさないように屋上の角を曲がって、月守の居る場所に近い屋上まで進む。
その時、砂塵が上がった。
鉄の獣が崩れていく。
丁度コーナリングの不安定な時だった。
揺れで、立ち上がれない。
光線が放たれるが、相手も揺れで狙いが定まらない。
だが、曲がり角、ちょうど減速する狙い目、ここぞとばかりに昊菟の近くを高い精度で焼いていく。
昊菟は濡れた上着を投げとばし、熱線から身を守る。
だが、投げるために振った腕に、部分的に熱線を受けて、肉を焼ききった。
「っがァッ……!!」
想像以上の激痛。
普通に切られるより痛い。
多少包丁で指を切ったことあるが、怪我の範囲は大差無いのに、皮膚を焼かれた事で、皮下神経が痛みの反応を強く教えてくる。
思考が止まる、勝手に手が引きつく。
だが、体は走り出していた。
思考が止まる前から、こうすると決めていたから。
怪我をどこかで負うと覚悟していたから。
昊菟は走り出した。
そして、月守のバリアにむかって、飛び込んだ――。
◇
【障壁結界】
物理干渉を打ち消す。惑星級相当。
月守の能力との違いは、衝撃はちゃんと発生するし、滑ることもないということ。
魔力のコストは発動+時間経過×発動範囲×強度=魔力消費量となる。
体を完全に囲うと空気が通らなくなり、酸欠を起こすし、発動中は自身の物理的攻撃も通さない。
強い攻撃で設定した強度を超えると破壊されてしまう。




