第3話:真相
【鵺哭村伝説は本当だった!】
その夜、一部の村人達が突如として人が変わったように発狂し、猟銃や斧でお互いを殺しあった。
被害者は鵺哭村の村長を含む計五名。
深夜の出来事ということもあり、他の村人達は運良く家の中にいたため今回の惨劇を免れた。
被害は最小限に抑えられたが、またいつか起こるかもしれない惨劇に怯えながら、残された村人達は今も鵺哭村でひっそりと暮らしている。
桐生が書いた鵺哭村の記事は瞬く間に世間の注目を集めた。
「ほら、俺が言った通りだろ。やっぱりお前は悪運が強いんだよ。今回の記事でうちはもっと忙しくなるぞ」」
上司は満面の笑みで言った。
「すいません、パソコン壊しちゃって」
「うっかり落として壊すなんて、本来なら全額弁償してもらうところだが、今回は大目に見てやろう」
「ほんとすいません。ところで今更なんですけど、どうして鵺哭村の記事を俺に書かせたんですか?」
「あれ?彼女から聞いてないの?鵺哭村を調べて欲しいって依頼があったんだよ、しかもお前を御指名で。お前も村に行く前に彼女と話しただろ。てっきりその時に彼女から聞いてるもんだと思ってたよ」
桐生は都内にあるマンションの一室へと向かった。
「どーも、お久しぶりです」
桐生はインターホンを押すと、カメラに顔を近付けながら言った。
「・・・どうしてここが分かったの?」
彼女は玄関の扉を開けると、心底驚いた表情で桐生の顔を見た。
「私も一応は記者ですから、ちょっと本気を出せばあなたの家なんてすぐに分かりますよ」
「それなら、私のことも既に調べてあるんでしょ。私を殺しに来たの?」
「まさか、とんでもない。あなたには感謝してるんですよ。あなたのおかげで最高の記事が書けましたから」
「殺しに来たんじゃないなら、どうしてここに?」
「ちょっと確認したいことがありまして。あなたは数年前、彼氏と一緒に鵺哭村へ行き、その時に彼氏は村人達によって生き埋めにされたと言いましたよね。でも、それは真っ赤な嘘だ。あなたは村へ行ったんじゃなく、村から逃げてきた。あなたは鵺哭村の出身ですよね?」
彼女は鵺哭村の出身だった。
彼女は当時、同じく鵺哭村出身の男と付き合っていた。
ある日、村の都市伝説の真相を知った男は、全てを世間に公表すべきだと村人達に言った。
そこで村人達は口封じのために男を殺した。
「どうしてこんな回りくどい依頼の仕方をしたんですか?最初からありのままを伝えてくれればよかったのに」
「彼が殺された時、私は警察にもマスコミにもありのままを話しました。だけど、誰も私の話を信じてくれなかった。一方で鵺哭村の都市伝説はどんどん有名になっていった。だから、嘘をついてでもあなたに鵺哭村の真相を暴いてもらいたかったんです」
「なるほど、そういうことですか。もうひとつ聞いてもいいですか。どうして私だったんです?」
「あなたが書いた記事を読みました。あなたならきっと、村の真相を世間に公表してくれると思ったんです」
「本当にそれだけですか?」
「はい」
「私がここに来た時、あなたは私に言いましたよね。“私を殺しに来たの?”って。どうして私があなたを殺しに来たと思ったんですか?」
「それは・・・」
「本当は、私を使って村人達に復讐するのが目的だったんじゃないんですか?」
「・・・」
「嘘ですよ、冗談ですって。そんな怖い顔しないでください。まぁ正直、そのあたりはどうでもいいんです。あなたが私についてどこまで知っているか、今回の件をなぜ私に依頼したのか、そんなことは正直どうでもいい。あなたのおかげで最高の記事が書けた、その事実だけで私には充分です。それじゃあ、失礼します。突然押しかけてすいませんでした」
すると、その場を立ち去ろうとする桐生に、「待って!」と彼女が言った。
「・・・アイツらは、苦しんで死にましたか?」
彼女の質問に、桐生は笑みを浮かべながら答えた。
「あなたにも見せてあげたかった」
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