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第1話:入村

目に留めていただきありがとうございます!


全3話の短編になります。


よければ最後までお付き合いいただけたら幸いです。

その村は昔から不可解な事件が多発することで有名だった。

突如発狂した村人が猟銃を所構わず乱発したり、村を訪れた人間が何人も行方不明になったり、村人全員が一夜にして姿を消すといった事件が相次いだ。


ライターの桐生は上司の命令で村を調べることになった。


「お前なら絶対に何かしらの事件に巻き込まれるはずだから、期待してるぞ」

村へ向かう直前、上司が桐生に言った。


ライターになって6年、桐生はこれまで数多くの“未解決事件”を取材した。

彼は事件を取材する過程で警察も見落としていた重要な手掛かりを発見したり、時には事件に巻き込まれたことも何度かあった。


「こんだけいろんな事件に首突っ込んで危険な目に遭ってるのに、今もこうしてピンピンしてるのが俺は不思議でならないよ。お前は本当に悪運が強いよな。もし村で何かあっても、お前なら大丈夫だろ」

上司はケタケタと笑いながら言った。


「誰のせいで危険な目に遭ってると思ってんだよ」

文句のひとつでも言ってやりたかったが、ライターとしてはまだまだ新米な桐生は黙って上司の指示通りに村へ行くしかなかった。




村の入口は1ヶ所だけで、村に入るには薄暗いトンネルを何メートルも進む必要があった。


トンネルの入り口には、

【コレヨリ先、危険。命ノ補償ナシ。】

と書かれた看板が立て掛けてあった。


トンネルを抜けると広大な緑が辺り一面に広がっており、民家がポツリポツリと建っていた。


桐生が村を歩いていると、すれ違う村人達はみな怪訝そうな表情で桐生を見た。

すると、1人の男が桐生に声を掛けてきた。


「何処から来たんだい?」


「ちょっと東京のほうから」


「よくもまぁこんな遠い村まで来たもんだ。もしかしてあんたも、この村の都市伝説ってやつを目当てに来たんかい?」


「まぁ、そんなところです」


桐生は自分の素性や村を調べに来たことは告げないでおくことにした。


「妙な噂が広まってるみたいだけど、ここはのどかで平和な村だ。ところで、この村にはいつまでいるつもりだい?」


「1週間ほどですかね」


「それならうちに泊まるといい」


「いや、でも・・・」


「この村に宿なんてもんは無い。どうせ寝泊りするところも見つかってないんだろう?遠慮せずうちに来なさい」


男の言う通り宿のことなんて全く考えていなかった桐生は、彼の言葉に甘えることにした。

さらに話を聞くと、彼がこの村の村長だということも分かった。




翌日、村長の紹介で鷲尾という男に村を案内してもらえることになった。

鷲尾は身長が2メートル近くある大柄な男だが、その見た目とは反対に非常に温厚な性格だった。


「桐生さんもこの村の都市伝説の噂に惹かれて来たんですよね?」


「そういうのに興味がありまして」


「私も噂はよく耳にします。ですが、それらは全て根も葉もない噂話にすぎません。ここはなにも無いのどかな村ですよ」


「そうですか・・・、ちなみに、この村を訪れた人が何人か行方不明になったと聞いたんですが、何か知ってたりしますか?」


実は桐生が村を訪れる数日前、彼はとある女性から村について話を聞いていた。

彼女は数年前、当時付き合っていた彼氏と2人で鵺哭村を訪れた。

鵺哭村を訪れた日の夜、ふと目を覚ました彼女は隣で寝ているはずの彼氏がいないことに気付いた。

嫌な予感がした彼女は彼氏を探すために村中を歩き回った。

そして彼女は見てしまった。

村人達が彼氏を生きたまま土の中に埋めようとしている光景を。

怖くなった彼女は慌てて村を出て警察へ行ったが、警察はまともに取り合ってくれなかった。


「村を訪れた人間が何人も行方不明になったという噂話なら私も聞いたことがあります。ですが、そんな事実は無いですよ。この村に住む私が言うのだから間違いないです」


「・・・そうですよね、不躾な質問をしてしまってすいませんでした」




すっかり日も落ち、桐生は村長の家へ戻ることにした。


「どうだい?自然しかないが良い村だろう」

家に戻ると村長が笑顔で言った。


「のどかで素敵な村ですね」

桐生がそう答えると、村長は嬉しそうに、


「ささ、夕飯を作ったから一緒に食べよう。桐生くんは酒は呑めるよな?」

と言い、桐生の目の前に置いてある徳利に日本酒を注いだ。


それからしばらく、桐生は村長と2人で酒を酌み交わしながら村のことを話した。


すると突然、桐生は意識を失うようにその場に倒れた。




「こんなもんでどうだい?」


「まぁ、これくらい深けりゃ大丈夫だろ」


村長は手に持っている松明で穴を照らしながら、周りにいる数人の村人達に言った。


「1人でこの村に来るなんて、こいつも相当馬鹿だな」


「いいから早く埋めちまおう」


「俺は頭を持つから、お前は脚を持て」


「よし、持ち上げるぞ」


村人達は寝ている桐生を持ち上げ、掘ったばかりの穴の中に桐生を放り込もうとした。

ところが、眠っていたはずの桐生が突然目を覚まし、村長から松明を奪い取った。


「やっぱり、噂は本当だったんだな」

そう言うと、桐生はためらうことなく手に持っている松明で近くにいた村人の身体に火をつけた。


「熱い、熱いよ!助けてくれ!」


火をつけられた村人はその場に倒れ込み、バタバタと悶えながら叫んだ。


「お前ら全員、いかにも胡散臭そうなツラしてるもんな。もしかして、村人全員グルか?」

桐生は村長を睨みながら言った。


「貴様、起きとったんか!?」


桐生は松明を使い、今度は別の村人の頭を思いきりぶん殴った。


「なんや貴様、気でも狂ったか?」


「狂ってんのはお前らだろ」


「こんなことして、この村からタダで出られると思うなよ」


「上等だ、村人全員ぶっ殺してやるよ」


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