墓標★
領事館だった場所まで足を運んだオレは確信した。
これは偶然ではない。
この領事館は明らかに狙って壊されている。
何故なら他の”道”は、通った所だけ破壊されているのだが、この領事館は全壊しているからだ。
もっと言えば隣接する教会のような建物は、傷ひとつ付いていない。
オレは、巨大生物が通過しつつ、尻尾で叩き壊したような絵を頭に浮かべた。
狙われた理由は分からない。巨大生物の機嫌を損ねる何かがそこにあったのか、それとも誰かが巨大生物を使役したのか・・・
店の帳簿にあった重税具合を見るに、領主は恨みを買ってはいただろう。しかし、それにしては大掛かりだ。こんな力がある者が支配に甘んじていた理由も分からないし、ここが王国領なら反乱だ。この規模の反乱を国が放置しているのも怪訝だ。
分からないことだらけだが、一つだけ判明したことがある。
やはりこの”道”を作ったのは生物であることだ。
何故なら巨大な糞があった。オレの背丈を超えるその土塊は、干からびており、特に匂いはしなかった。しかし所々白骨化した動物の骨らしきものが混ざっており、それが糞であることが伺える。
そして、その骨の状態から、そいつは餌をあまり咀嚼せず、丸呑みする蛇のような類であることが伺える。
そんな化け物を使役できる者・・・もしそんな秘術が使える魔法使いがいるのであれば、地下要塞ぐらい建造できるだろう。
そして、それがあるとすれば、やはりこの”道”の先が一番怪しい。
先を急ぐことも考えたが、一応、領事館跡らしきその場所を物色する。
しかし、めぼしい成果は無かった。いや、何かはあるのかもしれないが、破壊が酷すぎて挫折したというのが本音だ。
オレは隣の教会らしき建物に挨拶だけして、街を後にすることにする。
異教徒なので祈りはしない。が、その地に神がいるなら、踏み入れた礼儀として挨拶だけはする。オレは各地でそうしていた。深い意味はないが、ゴロツキなりのケジメみたいなもんさ。
そこは、なかなか荘厳な教会だった。
入口脇に二対の神と思われる巨大な立像に出迎えられる。二人とも憤怒の形相で筋骨隆々。不敬があれば今にも襲いかからんとばかりに武器を構えている。
奥には更に雄大な神像が鎮座していた。こちらは穏やかなような、見透かしたような、なんとも読めない表情をしている。
そして、他の空き家に比べて、ここは床に埃が無いことに気が付いた。先ほどの少女は、もしかすると、ここの手入れに来ていたのかもしれない。
「どうも、おじゃましました」
オレは三体の像にそれぞれ挨拶すると教会を出た。
夕暮れの日差しが顔を直撃する。
手の平を日除けにして、旧領事館の方を見ると、夕日を浴びたあの巨大な糞が、墓標のように見えて、オレは失笑した。
神像の絵、モデルはトーマス・ハーンズというボクサーの構えです(:ーp)
金剛力士風だけど、金剛力士じゃないというイメージなので。




