道★
ゴブリンの関所を抜け、しばらく歩くと異様な十字路に出くわした。
古くからの街道に、後から出来たような支道が交差しているのだが、その支道が異様なのだ。
道幅は2m程度。ハッキリとした道に”なっている”のだが、人が整備したような様子は全くない。等幅で地面が抉れており、まるで巨大な岩でも引きずった跡が道のようになっている。
地下砦を建設する為の資材を運搬した跡が道になっているのか・・・と最初は思ったが、近くで見れば見るほど違う考えが浮かんだ。
率直に言うと、それは恐ろしく巨大な大蛇が這ったような跡というのが、一番しっくりくる様相だった。
何故かって?
障害物を避けた形跡が無いからさ。建築資材を運ぶなら、わざわざ樹木を薙ぎ倒して運ばないだろ?
それらの薙ぎ倒された草木の向きからオレは、その”道を作った者”の進行方向が分かった。
おそらくその先に地下要塞がある。直感でそう思ったオレは、その異様な道を進んでいった。砦そのものは無くても、王国に売る情報の一つは得られるだろうと。
しばらく歩くと、その道は街に通じていた。
いや、通じているというより貫通していた。
”道を作った者”は、街の防壁を破壊し、多くの家屋を薙ぎ倒して、通過していったようだ。
オレはその壊された防壁を目の前に、しばらく立ち尽くした。
かなりの規模の街に見える。
基本、木造の家屋なのだが、様々な形や大きさの建物があり、家屋だけでなく商店や工房、倉庫、集会場のようなものがあるのだろう。
それらが乱立しているのではなく、道路に面して建てられており、街路樹まである。かなり文化レベルが高く、また、計画に基づいて街を作る政治レベルも高そうだ。
その様子を覗き見つつ、オレは中に入るかどうか迷った。
躊躇する理由は3つ。
一つは、その"街を通過した者"の存在。そいつ自体は通過して行ったように見えるが、そんな怪物が他にいないとも限らない。
もう一つは、ここが敵性地域である可能性。
なんせ、こんな所に街があったなんてオレは知らなかった。王国から渡された地図にも載ってないし、学校で習う地図にも、交易で使う地図にももちろん載っていない。
ひょっとしたら、ここが件の地下砦の可能性もある、もちろん、全然地下でも砦でもないが、様々尾ひれがつくことは十分考えられる。
そして最後の理由。
見渡す限り、街には人影が全く無い。
例の通過されて出来た"道"以外は、どこも壊されていないし、争った形跡もない。ただ人だけがおらず、生活音もまるでなかったのだ。