エピローグ
後日、オレはパルにとある建物に招かれた。
例の地下水路から船に乗り、牧場とはまた別のルートにある建物だった。
その建物の中に入ると、やはり工場のようになっており、生活感はまるでない。牧場と違うのは、天井が無いこと。そして、部屋の中央に大きな船のようなものが置かれていることだ。
船と言っても、オレの知っている船とはだいぶ違う。先に乗り物と聞いていたので、オレはそんな大きな乗り物は舟しか知らないからそう言っただけだ。形は船というよりも、鯨か何かの模型に近い印象だ。
パルに促されてそれに乗りこむと、導師と第三王子が既に中にいた。
「揃いましたね。では出発します」
導師がそう言うと、操縦席らしい所で何やら操作を始めた。
地面が揺れる。
「出発?どこへ?」
オレはパルに聞いた。水路どころか建物に囲まれた船だ。まったく意味が分からない。
「空だよ」
パルはオレの反応を面白がるように、わざととしか思えない不十分な説明をした。
上方で爆ぜる音がする。それと共にオレ達を乗せた船が浮上した。
操縦席の窓から見える景色から、とんでもない高さまで飛んでいることが分かる。
「ほら」
パルがとある窓まで手招きする。
「あっ!」
恐る恐るそこに向かうと、廃墟となった街が見えた。
そして、領事館があったところにポッカリ穴が開いている。
「あそこから飛んだんだよ」
パルが言った。
「この船が見つかるといけないのでね。あんな風に壊してたんですよ。でも、ようやく修理が終わったので領事館はお役御免です」
導師が続いて説明する。
「貴方は何者なんですか?」
「この船に乗って別の星から来ました。転移魔法の実験に失敗して不時着したんです」
「今から帰るんですか?!」
「いえ、残念ながら転移装置はこの星の文明レベルでは直せません。私はここに骨を埋めますよ。本当は穏やかに住みたかったんですけどね」
導師はやるせない顔をする。
「しかし、竜騎士長が情報漏洩したせいでもう王国にマークされてしまった。ここは防衛拠点として残しつつも、我々は更なる新天地を目指す。幸い導師が言うには、この星はまだまだ未開の大陸があるそうだ。今日はその視察だよ」
第三王子が続く。
「それでも、互いに領土を広げていけば、いずれまた衝突する時も来るだろう。全面戦争はなるべく避けたい。それまでに恐れられ、近づかないように圧倒的な戦力差を付けようと思う。我々が魔王とでも呼ばれるぐらいね。ジゲン殿も是非協力を願いたい」
第三王子が右手を差し出した。
「微力ながら」
オレは手を握り返した。そして言った。
「でも名はスタナーと呼んでください。意外にこの名前、気に入ったもので」
それを聞いてパルがクスリと笑った。
ーーー
・・・とまぁ、オレの話は以上だ。
あれから数十年。
『魔界』『魔王』『魔族』なんて呼び方もだいぶ定着してきたが、元々あれはプロパガンダの一種だ。魔族って言ったって、中身は普通の人間さ。
こんなのは常識と思ってたんだが、王国人は知らないんだってな。
相変わらず情報統制でもしてるのかな?ならば、こんな手記出版して大丈夫なんだろうか。
まぁ、困ったら『魔界』に来ればいいさ。
ー完ー
お読みいただきありがとうございます。
元々昔のゲームブックっぽい話を書いてみたいというのが本作の執筆動機でした。
魔法やスキルはありつつも、七割八割は人間技でなんとかしなければいけないし、油断すればすぐ死んでしまうような世界観ですね。
あまり流行りではないと自覚しつつ、個人的にはこっちの方が書いてて楽しいので、何か思いついたらまた書いてみたいと思います。




