同郷
竜騎士長は何かを言おうとするが、第三王子の剣は心臓と共に肺も甚大に傷付けたようで声が出ない。
ヤツは血の泡を吐きながら口をパクパクさせ、天を指さして息絶えた。
その指先には大地竜が見下ろしている。
とにかくデカイ。鎧蜥蜴とは比にならない大きさ。
果たして同じ戦法が通用するだろうか?
オレは大地竜から目を離さないように、いまだ意識を失っている鎧蜥蜴の口から昏睡剣を引き抜いた。
「その必要はない」
背後から声がした。
パルの声のようだが何かが違う。彼女のいつもの豊かな表情が無く、彫刻のような顔をしている。
「同調の魔法です」
パルと一緒に歩み寄って来た導師が説明した。自身を依り代にして大地竜の言葉を伝えているのだと。
「アナタには感謝している。その男は調子に乗り過ぎた」
それだけ言うと、パルはその場で座り込んだ。
大地竜が伸びあがると巨大な口を開け、雲のように集まっている矢鷹の一角に噛みついた。
捕食されたのはほんの一角だが、そのあまりの脅威に矢鷹の群れは四散する。それを見届けると地面を揺らしながら大地竜は去って行った。
「驚いたな。人の言葉が分かるのか」
オレは呟いた。本当はパルに聞きたいところだが、彼女は寝息を立てている。
「竜騎士長が言っていた通りです。巨大化すれば脳も大きくなる。個体によっては様々なことを学習する余裕が生まれるのです。竜騎士長の不穏な動きも実は大地竜からの情報だとか。彼は何かしらの誓約の術をかけられており、自身では竜騎士長に手出しが出来なかったそうです」
導師が答えた。
「しかし、ここまで大掛かりなことを企んでいたとはな」
第三王子が呆れたように言う。
「ただ、パルがまさかこんな達人を雇っていたとはな。それがヤツにも誤算だったのだろう」
王子はオレを見て言った。導師も頷く。
「達人なんてとんでもない。たまたま噛み合っただけです。オレのは下級兵士の剣術ですから」
「下級兵士?王国騎士の士官クラスでもそんな剛剣使うヤツ見たことないぞ」
と第三王子。
「本当です。オレも師匠のまた聞きですが、元々は異世界の下級兵士の剣術らしいです。剛剣と言っていただけましたが、実はあれしか出来ません。複雑な技は一切なく、素人でも無意識に出す上段からの打ち込みだけを鍛える剣術で、返し技も無ければ防御の技すら無いんです。切れなかったら死ねという教えだそうで」
「なんと凄まじい、しかし、えらく合理的だな。複雑な技を教えても戦場の緊張化でそれを使える者は多くない。ならば誰でも出来る上段だけを鍛えるか。それなら短期間で強力な集団を鍛え上げることが出来そうだ。とても興味深い、後でまた詳しく教えてくれ」
「・・・もちろんです」
今日が初対面の第三王子から、あまりに興味を示されたので、オレはくすぐったいような居心地の悪さを感じた。
早くパルに目を覚ましてくれないかと思ったが、同調の術はよほど体力を使うのか深い寝息を立てたままだ。
そして、興味を示したのは第三王子だけではなかった。
「私も、後でゆっくりお話を伺いたいですね」
導師が言った。
「異世界の剣術とはね。ひょっとしたら、その剣術を持ち込んだ人物と私は同郷かもしれません」




