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切り札

「うわぁぁあ」

 竜騎士長の意図を察した何人かがトロッコまで走り去る。

「やめろ!散れ!」

 第三王子が叫ぶも恐慌状態に陥った者には聞こえない。

 そして、トロッコに辿り着いた所で矢鷹(ミサイルホーク)の群れが降り注ぐ。


「キサマ!」

 第三王子が竜騎士長に挑みかかろうとして踏みとどまった。

 ヤツは自身の周りを鎧蜥蜴達で固めている。そして、何か手振りをする。おそらく鳥に指示を送る魔法触媒のようなものを持っているのだろう。

 その動作を見て第三王子は走った。

 先ほどまで彼がいた場所に10匹ほどの矢鷹が落ちてくる。


「動け!命中精度は高くない!」

 それを見て第三王子が他に命令を出した。

「ひっ!」

 それぞれが四方八方に走る。

「歩きで大丈夫です!ただし不規則に!」

 導師が補足する。後で聞いたことだが、上空からの落下時間を計算したとのこと。

 矢鷹達は、威力を出すために速度に特化しており、一旦降下したらそこから大きく軌道は変えられないそうだ。本当に目的地上空まで矢を運ぶ道具としてのみに鳥の能力と命を利用しているとのことで、パルでなくとも胸糞が悪い。

「恐れるな!あの高さから下にいる敵を射ることを考えろ!そう当たるものではない!散れ!動け!」

 第三王子が瞬時に導師の話を噛み砕くだいて指示を出した。


 意図が伝わるまでに側近の一人がまた命を落とす。

 それを最後に、生き残った者達が要領を掴むと膠着状態になる。


 オレ達は動きながら、徐々に遠巻きにヤツを囲い始めた。

 業を煮やしたヤツが、守備配置の鎧蜥蜴を攻撃に転じたタイミングで誰かがヤツを仕留める。声に出さずとも、そういう共通認識が出来上がっていた。


 しかし、ヤツは動かない。

 こちらの動きが緩慢になるタイミングで牽制の矢鷹を落としてくる。危険を冒さず消耗を待つ動物的な戦略だ。


 甲冑を着ている側近、そして、あまり体力の無さそうな導師の脚が鈍ってきているのが感じられる。

(仕方あるまい)

 そうオレが覚悟を決めた時、竜騎士長が大袈裟に溜息をついて言った。


「いつまでそうしている気ですか?消耗戦なら勝てるとでも?矢鷹はまだまだいますよ。『弾切れ』を待ってもムダです」

 あえてパルを挑発するような言葉を使い、彼女の近くに矢鷹を落とす。

 この中では身軽なパルは飛びのいて躱した。それを見届けると、みながチラリと空を見る。

 竜騎士長の言葉はハッタリではない。いや、上空を旋回する矢鷹の群れは、むしろ増えてきているのではないか?


「しかし、もう飽きました。終わりにしましょう」

 竜騎士長は何やら呪文のような物を唱えた。 


 何かが揺れた気がする。

 いや、気のせいではない。

 その揺れは次第に誰もが感じるものになり、転倒する者が現れるぐらいの地震になった。


 そして、峰を這いあがって来たであろうそれが顔を出す。


大地竜(アースドラゴン)!!」

 誰かが叫んだ。


 もう迷っている時間は無い。

 オレは一度大きく深呼吸した。そして、一音一音はっきりと発音するように声を出した。

「解除」と。


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