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牧場

 牧場と言っても、牧歌的なそれとは違うだろうと想像はしていた。

 しかし、まさかここまで違うとは。


 そこは牧場というよりも工場と言った方がイメージが近い。

 広い室内に、樽のような大きなガラス管が並べられている。

 そのガラス管は何かの液で満たされており、巨大なクラゲのようなものが泳いでいた。


基底生物(スライム)だよ」

 パルが言った。

 何でもこのスライムに様々な生物の情報を食わせると、進化した生物になるんだそうだ。

 その『情報を食わせる』というのが何なのか、いまだに良く分からないが、とにかくそういうことらしい。

 別の部屋では『情報を食わされた』スライムが、やはりガラス管の中で浮いていた。そこではもうクラゲのような姿では無く、子供の粘土細工のような不完全な生き物の形をしていた。

 ここである程度育つとガラス管から出て別の飼育場に行くらしい。

 いくつか見せて貰った飼育場には、見たことも無いような生き物が様々おり、オレは初めて動物園に行った子供のように目移りした。 


 一通り施設の案内を受けると、会議を終えた導師と第三王子が会食をするとの連絡を受けた。そこにパルと竜騎士長も参加するとのことで、オレも秘書として同行することになった。

 

 4人は円卓を囲むように着座。オレはパルにほど近い壁際で待機という形だ。第三王子と導師には、オレのような側近が数名ずつおり、それぞれ壁際に侍る。竜騎士長のみ単独の参加のようだ。

 側近たちは互いに目も合わせない。とても話しかけるような雰囲気では無かった。それは会食メンバーも同じで、彼らはオレ達のことなど空気のように扱い、見ようともしない。

 このコミュニティは先進的なようで、意外に古臭い身分差の考えがあるようだ。

 ただ、おそらく出自が一番怪しいオレにとっては、その人間扱いされない感じは、むしろありがたかった。


「ゴブリン達の報告によると」

 口火を切ったのは竜騎士長だった。

「街道を通る者が増えているようですね。王国の介入は時間の問題です。知れている以上、もう隠れ潜む理由は無いかと」

 竜騎士長はジャウード教徒の民族衣装のようなものを纏っている。同じ騎士と言っても、王国のそれとは随分印象の違う風貌だ。身長、体格共に平均的で、どちらかというと文官のように見える。


「不自然なぐらい動きが早いですね。何者かの扇動があるのでしょう。身内からの漏洩もあるのではないでしょうか」

 パルが冷たく言い放つ。それに対して第三王子はふんと鼻を鳴らすだけで何も言わなかった。彼の方が竜騎士長より体格が良く、武官のような風貌をしている。いかにも意志が強そうな顔。竜騎士長は何かにつけてチラチラと第三王子の顔色を伺っているように見えた。


「何か証拠はあるのかな?」

 導師が窘めるように言う。意外に若く、華奢で、その辺にいそうな、存在感の無い男だった。

「状況証拠です。先ほど申した通り、こんな辺境になんで王国が興味を持つのでしょう?あのケチで保守的で、前例が無いことには腰が重い王国の動きにしては不思議かと」

 パルは導師の目を睨みつけるように言う。(分かっているくせに)とでも言いたげだ。


「そうかもしれませんな。ただ、それよりも今は、王国が動いてしまっている事実に向き合うべきではないでしょうか」

 竜騎士長が薄笑いの表情で言った。パルの意見を否定しなかったことが逆に彼女を苛立たせたようで、今にも噛みつきそうな顔をしている。それを導師が眼で窘め、第三王子はまたフンと鼻を鳴らす。


 会食は始終、そんな牽制し合いのような重苦しい雰囲気で終わる。小休止を挟んでオレ達は運動場のような広場に案内された。

 いよいよ竜騎士長のプレゼンが始まる。

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