表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/39

大地竜

 その晩は大きなタライに汲まれたぬるま湯で体を洗い、清潔な布で拭いた。そして、他人の皮脂の臭いがしない清潔な寝具で眠った。

 地下の街でなんでこんなに清潔なのかとパルに尋ねたが、不敵な笑みで「明日分かるよ」とだけ言われた。今日は随分と質問攻めにしたので、答え疲れてもいたのだろう。そう察してそれ以上はオレは何も聞かなかった。


 翌朝、パンと果物で食事を摂る。見た目は簡素な食事だが、そのパンは王国から支給されたヤツに比べて半分の力で噛み切ることが出来たので、やはり上等な物なのだろう。

 食事を済ますと早々に身支度を整え、その施設の長い廊下を歩き、突き当りの分厚い扉を開けた。

 その瞬間、風で髪が揺られた。少し湿り気のある、草の匂いのする風だった。風は下から吹いてくる。

 そう、扉を開けると、数人が一旦待機できる程度の踊り場があり、その先は下りの階段だったのだ。


 地下街に建物があり、その建物の中に更に地下への階段がある。こういう場合もその先にある部屋は『地下室』というのだろうか?等と、くだらないことを考えている間にもパルはずんずんと進んで行ったので、オレは慌てて付いて行った。 


 下ってみると、階段の先に『地下室』は無かった。

 あったのは通路。それも水路だ。


 幅が5m程度の堀があり、そこに三艘の小舟が浮かべられている。

 船着き場にはドワーフとおぼしき男が一人立っていた。


「牧場まで行ける?」

 パルはドワーフに話しかけた。

「もちろん。準備は出来てます」

 ドワーフが答えた。

 そして、一層の帆のある小舟に案内される。

「今日は風の具合がいいので、これがいいでしょう」

「そうだね」

 パルとドワーフは、いつもの会話という感じで、最小限の打ち合わせだけする。オレが周りをキョロキョロ見渡している間に準備が整い、舟は動き出した。


「この風も魔法なのか?」

 地下に帆船が走っているというのは奇妙なものだ。しかし、実際、安定した風を受けてすいすいと進んでいる。

「まさか!ドワーフの技術なんだって。山の地形や外の気流に合わせてダクトを掘るの。その位置や角度で地下の気流をコントロールするんだってさ」

 パルが答える。

「この堀は天然ってことはないよな?やはり掘ったのか?」

「そう、設計したのはドワーフ。地下水脈や河川が水源で、安定供給する為に貯水池もいくつかあるの。もちろん供給するだけじゃ淀むから、そこは高低差や風を利用して流れを作っているんだって」


「設計したのはドワーフ・・・ということは、施工はやはり?」

「そう、竜騎士長」


 パルは眉間に皺を寄せて言った。

 そもそも竜騎士長が使役する大蛇は、当初は土木用に進化させたものだという。しかし、今思えば彼は最初から軍事利用も考えていたフシはあると。

 その真偽は定かではないが、ともかく遷都に多大な功績のある竜騎士長の発言力は強く、彼が使役する大蛇は大地竜(アースドラゴン)の名をつけられ、畏怖の対象にもなっていると。


 それらの話を聞いてオレは、なんでオレみたいなのが雇われた理由を察した。


(功臣は身内では斬りにくいよな)

 そう言葉が出かけたが、すんでの所で飲み込む。

 

 そんなやりとりをしている間も、舟は快調に進んで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ