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成り立ち

「いいでしょう」

 パルが言った。

「ただ、その為には、まずこの街の成り立ちを説明しなくてはね」

 彼女はこの街のおよその成り立ちを説明した。

 かなり長い話だったが、かいつまむとこんな感じだ。


 この街はもともとは迫害されたジャウード教徒の隠れ里だった。最初は林の中を切り開き、数件のバラックと獣避けの柵を作る程度だったという。

 しかし、人口は徐々に増えてきた。噂を聞きつけ亡命するジャウード教徒が後を絶たなかったんだ。


 こんな辺境の噂をどうやって聞くかって?それはジャウード教徒特有の魔法による。

 彼等の神は『生物は皆平等』という教義を持っている。その神の力を借りた魔法を使うと、生物と交渉し、力を借りることが出来るという。

 鳥を使って連絡を取り合ったり、ジャウード教徒しか分からない特殊な文字を忍ばせたチラシを鳥獣を使って不特定多数に向けて撒くようなこともしているようだ。


 そうして徐々に重ねて行った人口増加は、一人の移民によって急激に加速する。それが導師、つまりオレ達が追っていた『地下要塞の魔法使い』だ。

 導師は様々な見たことも無い魔法を使え、彼らの生活の質を向上させた。その中の一つに進化の秘法がある。それは、既存の生物を進化させ、新たな生物を生み出す技法だという。

 キシ虫もその一種だそうだ。

 この新たな生物を生み出す秘法は、ジャウード教徒の生物と交渉する魔法と非常に相性が良く、開墾や資材の運搬といった、街づくりに力を発揮した。それが、先日オレが見た廃墟だという。


 確かに、もし、あんな破壊が出来るような巨大生物を使役できるなら、それは建築に莫大な力を発揮することだろう。


 しかし、急激に増えた人口は、いくつかの問題を引き起こした。

 一つは、統治者の問題。これだけの人口をまとめる人材がいなかったんだ。導師は技術者であって政治家ではなく、魔法技術に対する尊敬だけでは、人をまとめ上げるのに限界があった。

 だから、外部から政治力のある人材をスカウトすることで解決をしたという。


 もう一つは防衛の問題。

 増えた人口が生活することだけを考えて作られた都市は、あまりに中途半端だった。

 大きく発展したとはいえ、まだまだ王国と対立するほどの力は無い。ましてや、武力衝突すること等、何も考えられていない設計だし、住民の多くは非戦闘民だ。戦になったらひとたまりもないと、外部から招いた指導者に指摘された。


「その外部から招いた指導者って・・・」

 オレは聞いた。

「王国の元第三王子だよ。だから当然王国事情にも詳しく、あの街が見つかるのは時間の問題だと彼は言ったの。それで民間人が大部分でも防衛がしやすいこの場所に移住を決めたってワケ」


 パルが言うこの街の歴史は半ば想像通りで、半ば違っていた。オレはてっきり第三王子の圧政に耐えかねた住民が、導師を中心に蜂起したのだと思っていたが、移住自体が第三王子の案だという。

 確かに今思えば、この規模の地下都市建設と移住は、かなり有能な指導者がいなければ出来ないだろう。

 だとすると第三王子は失脚していないのか?

 ならば、あの破壊された領事館らしき建物は?

 オレは考えを整理しながらパルに質問をした。


「じゃあ、この地下都市の指導者(リーダー)は第三王子なのか?導師ではなく?」

「第三王子が統轄、導師が参謀長官って肩書だね。ただし、二人の役職に上下関係は無い・・・はずだった」

 最後の所はパルは声を潜めて言った。

「はずだった?」

 オレはそこを復唱する。どうやら、『秘書』としての役割は、この辺に絡みがありそうだ。


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