神
オレはマーグと名乗ったバンダナ男から鍵を受け取り、先の道の案内を受けた。
道は一本道なので迷うことは無い。同じようなつづら折りをあと5回進めばいいとのこと。そして、その突き当りに扉があるので、それをこの鍵で開けろと。
「そこが巫女の事務所か何かなのか?」
オレは聞いた。
「いや、作業場の一つだな」
マーグはめんどくさそうに答える。
「そこに入れば巫女がいるのか?」
「知らんよ。巫女から接触があるんじゃないのか?無かったら大声で呼ぶんだな」
「何の作業場なんだよ?」
オレがそう聞くと、マーグは一瞬身震いしたような仕草をした。そして、露骨に答えたくないという口調で言い切った。
「行きゃあ分かるよ」
そして、手振りでさっさと行けという仕草をした。
「分ったよ。最後にもう一つだけ聞いていいか?」
オレはテーブルに金貨を一つ置いた。
「一つだけだぞ」
マーグは金貨を手に取ると、口角がわずかに上がる。
「巫女って何者だ?精霊使いか何かか?」
これを聞くと言うことは、オレが完全な部外者であることを半ば認めることになる。リスキーな質問だがもう『巫女に呼ばれた』という身分を手に入れたので、なんとかなるだろう踏んだ。
しかし、それを聞いたマーグは、意味ありげな薄ら笑いを浮かべた。
「アンタ、やっぱりスパイだろ」
少し甘かったかと後悔し、オレが言葉を探していると、それを遮るようにヤツは続けた。
「いや、別にいい。こうなったらもう、アンタが何しようが責任は巫女だからな」
マーグは本当に興味無さそうだった。
その口ぶりからは、巫女に対して何の敬意も持ってないことが伺える。先程平身低頭で命令を聞いていたのは、単に職務上のことなのだろう。
「導師の助手だよ。導師は自分のことを人間だと言ってるがな、一部の奴らからは神格化されてるのさ」
マーグは、あくまで距離を置いたスタンスだ。
「アンタは神を信じないのか?」
オレは聞いた。
「ああ。もし神がいたとしても、あのクソったれの王国に罰を与えられないなら、たいしたヤツじゃない。そんなヤツにはすがらんよ。利用はするがな」
それを聞いて、オレはこのマーグという男に興味を持った。
だから、もう一つ、突っ込んだ質問をした。
「じゃあ、もしオレがスパイで、オレを見逃したせいで、ここが滅んだらどうする?」
「そうはならんだろ」
マーグは即答した。
「まぁ、なったとしても、その時はその時さ」
オレが続けて何かを聞こうとすると、それを遮るようにマーグは目の前に先程の金貨を示した。
「質問は一つだったはずだ」
その目には強い意志が感じられたので、オレは礼を言って部屋を出た。




