関所★
かなり危険な仕事のはずだが、役所は手付金もくれなかった。
貰ったのは辺境の山までの地図と、『国の調査団』だという身分証明書、そして携帯食料として水気の無い固いパンを少しだけだ。
細かいことは何を聞いても「それを調べてくるのがお前らの仕事だ」の一点張りで埒が明かなかったので、諦めてオレは旅立った。
まずは地下要塞を探すのに難儀すると思っていたのだが、案外あっさり手掛かりは見つかった。
件の山に向かう道の途中に『関所』があったんだ。(少なくともヤツらはそう言っていた)
道のど真ん中を遮るように古い木製のテーブルと様々な不揃いの椅子があり、山積みのガラクタがあり、立て看板があり、ゴブリンが二人いた。
一人は短槍を持って立っており、一人は偉そうに揺り椅子に揺られていた。
「止マレ!」
立っているゴブリンが声をかけてきた。
「何だ?」
オレは答えた。平然を装いつつも、いつでも腰の小剣は抜ける気構えは作り、相手の装備も確認する。
コイツが持っている槍は錆びており、毒が塗られているような気配も無い。突きを食らわなければ、着ているレザージャケットとレザーグローブを切り割かれることは無さそうだ。
逆にこちらの小剣は、コイツが着ているボロ布の服は軽く切り割けるだろう。油断しなければ負けることは無い。
問題はもう一人だ。
寝ているようにも見えるが、ここからでは判別しづらい。
椅子の脇に雑多に積まれたガラクタの中には弓矢なようなものもあり、連携されるとヤッカイだ。
「通行料払エ」
オレが少し考えていると、苛立ったようにゴブリンが言った。
「通行料?何の?」
「ココハ関所ダ。関所ハ通行料ハラウ所ダ」
「関所?何の?」
「関所ハ関所ダ。ソコニ書イテアル」
ゴブリンは立て看板を指した。どこかから持ってきたものなのだろう。その看板には『不用品 高価買取り』と書かれていた。
まぁ、この関所はモグリだろう。
ただし、こんなことをするぐらいに適度な通行者がいることが伺え、この先に何かがあるのだろう。そして、その何かはおそらく地下要塞だ。
さて、どうするか?
今なら不意打ちで斬り捨ててしまうことも出来そうだ。その場合は、もう一人に十分注意する必要がある。
揉めるのもメンドウなので、払ってしまうという手もある。ただし、ヤツはまだ金額を提示していない。払う素振りを見せたら法外な額を吹っ掛ける可能性もある。
逆に、ヤツらは卑屈で日和見なので、国から貰った身分証を出し、強気に威圧したら案外素直に従うかもしれない。