地下街
オレはさも地下要塞の住人のような顔をして道を進んだ。
十字路まで行くと、それぞれの天井に道案内が吊るされているのが見えた。正面の道には『ドワーフの街』と書かれており、右手には『人間の街』とある。
ドワーフ達もここに住んでいるのだろうか?それならばこの馬鹿げた施設を造ったのも納得ができる。そもそもこれはドワーフの住処に似ていると言えば似ている。しかし、かれらが人間に協力し、こんな近くに共存するものだろうか?
もしかしたら『ドワーフ』とは、単に建築を担う者達の職業名とかの可能性もある。
左手には『ゴブリンの街』とかかれてあった。彼らはこんな人間の文字は使わないし、読めないのはずだが、おそらく人間かドワーフ用に書かれたものなのだろう。
その証拠に『ゴブリン』の文字の下にカッコ書きで『盗人野郎』と落書きがされていた。
人間とドワーフとゴブリンが共存している、本当ならば奇妙な場所だ。そして王国が攻め込むとしたら、かなりヤッカイな場所にある。
こういう閉鎖的な場所での動きはドワーフやゴブリンの方が長けている。逆に騎士の重装備は邪魔になることが多い。
十字路の正面をドワーフの街にしている所が、かなりの威圧感を与えていた。
オレは人間の街への道を進んだ。
実際の所は分からないが、ドワーフやゴブリンの街と書かれた方に進む勇気が無かったからな。
人間の街は、一本の真っすぐな大通りがあり、支道が交差するような十字路が二つ続いていた。それぞれの支道にはやはり道案内があり、手前から『一番街』『二番街』『三番街』『四番街』と続いた。
遠目に眺めた感じでは、支道を進んだ先は一際明るくなっており、少し開けたホールのようになっている。そして人の往来も見えた。
一番街と二番街が比較的人が多く見え、ここは役所や商店、集会所といった公共的な場所なのかもしれない。三、四番街は住居といった所か。
二つの十字路を過ぎると、道は少し細くなり右にカーブする。
照明は必要最小限になり、見通しは悪い。その道が再度左にカーブした所で、また道案内が吊るされていた。
そこには意外な名称が書かれていた。
『騎士の街』と。
そして『騎士』の文字の下にやはり落書きがあり、カッコ書きで『ウジ虫』と書かれ、ご丁寧に気味の悪い幼虫のようなイラストも描かれていた。
オレは、その『騎士の街』への道を進むことにした。
興味をそそられたというのもあるが、ここが一番人気が無かったからだ。