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永遠のフラッシュバック

こんな私なんかにメッセージや感想をくださった皆様。

本当に嬉しいメッセージでした。ありがとうございます。おかげでまた書くことができました。

更新頻度を前みたいに戻せるかはわかりませんが、一度書き始めた物語は、

必ず完結させるつもりなので、気長に応援してもらえれば幸いです。

作品に引用しなくてはならない(使命感)人物が筆が止まってからもドンドン増えていて吃驚です。



世界連合が結成し、また物語はジュン・キャンデーラを中心に動き出す!!!

「ほぉん、これが、奴隷解放ギルドの組織図なん?」


ぐるぅと唸り声をあげてロッソが尋ねると、そうぜよ、と二番隊隊長のニグが答えた。


「まぁ、あの【()()()1()()()】で、行方知れずも多いんじゃが」


ニグが苦虫を嚙み潰したような表情で、まぁ、見てくれやと俺たちに渡した。


――奴隷解放ギルド組織図――

◆ギルドマスター≪軍神≫アブラブタ・リンカーン

◆一番隊隊長≪獅子王≫カイナス・レオネハート

◆二番隊隊長≪遺骸(なぶ)り≫ウルブス・ニグラン

◆三番隊隊長≪金翅鳥(ガルーダ)≫オロ・ゾロトイ ×

◆四番隊隊長≪罪人殺しの剣鬼≫シルバ・アージェント ×

◆五番隊隊長≪先見の瞑≫リュマ・ブルヲ

◆六番隊隊長≪剥がし屋≫フィラノ・レミー(中央地区統括)

◆七番隊隊長≪研ぎ澄まされし音の葉≫サクラ・カナタ(東方地区統括)

◆八番隊隊長≪牢檻(ろうかん)の姫≫リリー・チャン(西方地区統括) ×

◆九番隊隊長≪燐寸(マッチ)売りの娼女≫クレア・ミスハジョッチ(北方地区統括) ×

◆十番隊隊長≪絶頂の害獣≫インム・ボンボヤージュ(南方地区統括)


以前聞いた話では、創設メンバーの5人が、本拠であるこの夢の国・ウライアスで奴隷を庇護しているとかなんとか。

そして、その他の隊長格が、全国各地に計5カ所の支部を設置し、奴隷解放の理念に賛同する冒険者たちの登録を増やしながら、奴隷救出にいそしんでいる、って話だったような。


それを教えてくれたのは、そう、シルバ・アージェント。シルバさん、……だったな。

ここに来てすぐ。あの時は、祖国滅亡の報せを受け、内容が頭に入ってこなかった。もっとしっかり聞いておけばよかった。あの人の優しく、凛とした涼やかな、耳をくすぐる声を。なんてもったいないことをしたんだ俺は。なんで俺は。


「大丈夫かジュン?」


ランセが煙草をくゆらせながら、俺の横顔を伺っていた。


「うん、ありがとう」

「ブラン、ジュンに触ってやれ」

「無論だ。ジュン、抱えすぎている」


『聖人の左手』で俺を癒そうとするブランを、俺の視線が制した。余計なことはしないでくれ、そう言わんばかりの冷たい目で。


「すまないジュン」

「いやいや、気を遣わせてごめんねブラン。でも、この痛みだけは、俺のものだから」



時は逆流して、リュマ・ブルヲの占いを耳にしたあの日へ戻る。


リュマの占いを聞いて数刻を経て、俺の固有スキル『マッチングアプリ』に、『世界連合』の検索ワードを含んだプロフィールがいくつか引っ掛かった。


半猩人(ハヌマーン)のヨシモルト二大看板の一人、ハムァダ・フレンチクールラ以外に出てきた名前は6名。


半魚人(マーマン)の女王サリナス、豚獣人(オーク)の国家主席タマキン、竜人の王ダハラ、女鳥獣人族(ハーピィー)の女宰相ヴェッキー、鬼人族(オーガ)の族長トール、そして、巨人族の大将軍モーヴ・プルプルヌイ。


モーヴのプロフィールを見て、俺は息を飲んだ。

モーヴの過去の経歴はもちろんのこと、巨人族の国ヨミゥーリが、祖国キャンデーラの人々をメスガサキから大量に()()()()()()()()()()()()ことを。


「俺はヨミゥーリに行く。一刻も早くキャンデーラの人々に会わないと」

「ジュン。それはわかるが、お前の親父さんの仇討ちはどうするんだ?」

「もちろん仇討ちは絶対にする。そのためにも、ヨミゥーリに行くことが、今の俺には必要不可欠なんだ」

「よくわからんけど、ジュンちゃんがそうするっちゅうなら、俺等は従うまでや」

「まあな」

「うむ、ブランはジュンに付いて行く」

「ありがとう皆」


次の目標が決まった俺たちは、二日間の間に旅支度を整えた。たった数日の間だが、仲良くなった子供たちや奴隷の皆との別れを惜しむ宴は中々優しい心地になれた。ブランが女奴隷たちの感謝の言葉があまりに嬉しくて鼻血を吹き出して卒倒するわ、泥酔したロッソがおいおい泣いて、子供たちも旅に連れて行くと大声でわめくわで大変だった。そして最後は、ランセが強引に大量の水を二人にぶっかけてお開きとなった。

装備品や服装を一新した俺たちは、翌朝、出立の時を迎えた。ギルドの人々が総出で俺たちを見送ろうとしてくれている。


その時だった。


ザザッ!!!!!


血まみれの男女が二人、お互いにボロボロの身体を支え合いながら、コミュニティの入り口に突如現れ、その場で倒れ込んだのだ。


「なんだなんだ!?」

「誰だあいつ!」

「あれって七番隊の!」

「男の方は、隊長の旦那さんのケイじゃねえか!」


ギルドの人々は騒然となり、倒れた二人に駆け寄る。


「ニグさん!誰なんですあの二人?」


俺がニグさんに話しかけると、険しい顔でニグさんが答えた。


「男の方は、うちの七番隊隊長の旦那で、副隊長を務めるケイぜよ、女の方は確か、」

「おととし入ったばっかの、新入りのメイナちゃんだべ?」

「!?」


俺とニグさんの後ろからヌッと現れたのは、身長170cmくらいの中背痩身の茶髪の男。頬はこけ、目はギョロリとしていて、獰猛な豹のような目つきを、猫のように細めて俺たちに笑いかけてきた。


「あなたは確か、一番隊隊長の、」

「おう。一番隊隊長、カイナス・レオネハートだべ。一回ちらっと話したくらいだったよな?坊主?」

「ええ」


カイナス・レオネハート。ギルドの一番隊隊長で、今は滅んでしまったが、一国の王だったという傑物。国王時代からいま現在まで、最前線で勇猛果敢に戦うさまを敵味方関係なく怖れられ、『獅子王』と仇名される、奴隷解放ギルド創設メンバーの一人。

一番隊ということは、シルバさんよりも強いのだろうか。最初に挨拶したとき、なんとなくそんな風には思えなかったので、こっそりウィズに声をかけて検索をかけたが、シルバさんと同様、プロフィールは引っ掛からなかった。

おそらく偽名だろう。用心深い人たちだ。


「カイナスさんは女の子のことは忘れんぜよ(笑)」

「ちょおま、ガキの前で余計なこと言うなニグ!ギルドの仲間のことを忘れないだけだべ!アホなこと言ってねーで、二人を医務室に運ぶぞ」

「その必要はないです」


ごちゃごちゃ話している隊長二人を制し、俺はブランに目線で指示を出した。頷くブランは、医者の顔つきで二人の身体を触診した。


「二人とも大量に出血している。ほっておくと失血死」

「じゃあやっぱり医務室に運ぶべ!」


叫ぶカイナスに、ブランが首を振った。


「ブランが治す」


そう言って『聖人の左手』をかざすブラン。すると、瞬く間に出血していた穴という穴は閉じ、外傷は消え失せた。


「ほぉ~すげえドワーフだべ」


感心するカイナスが、お前だけはうちに残ってくんねえか?と声をかけたが、ブランは二つ返事で断った。


「傷も治ったんだ。おめえさんら、何があったか皆に話せよ」


ランセが倒れている二人のところへかがんで言った。俺やニグさんたちもその隣でかがみこんだ。


「ケイ、サクラはどういたぜよ?おまんら七番隊は東方地区担当。キャンデーラ近辺で奴隷救出の任務をしとったはずじゃき」

「それなんです、実は、あの!妻が、うちのサクラが!!」


泣きそうな顔で目を潤ませるケイ。薄い塩顔の美形を歪ませ、厚い唇を震わせる。


「サクラ隊長たちが、キャンデーラを占領するメスガサキの軍隊に捕まって殺されてしまったんですの!!」


メイナという名前の犬顔の女の子がふるふる顔を揺らし、大粒の涙をこぼした。


「なんじゃと!?」

「サクラ隊長が!?」「そんな!!」「メスガサキ!!」「ありえねえ!」「信じられないわ!」と口々にざわめくギルドの人たちの中で、俺はメイナの言葉に一抹の不安がよぎった。


「……いま、サクラ隊長、たち、って言いましたよね?たち、ってことは、他にも誰か?」

「そうなんですの!サクラ隊長だけじゃなくて、シルバ隊長も!!」

「!!!!!!!!!!」

「……嘘やろ」


愕然とするロッソ。あれほどの実力者であるシルバが敵に捕まるわけがない。動揺しながら、もう一度言った。嘘やろ。


「サクラ隊長が最初に捕まって、キャンデーラ城内で、その、あの人、メスガサキの男たち数十人に拷問されて輪姦されていたんですの!それを、七番隊で助けようとしたんですが、一足遅く、城内に踏み込んだ時には、無残にも殺されてしまった後で、」

「その時、サクラの代わりに俺たちの指揮を執ってくれていたのがシルバ隊長だったんだけど、そこで、」

「嘘だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


俺は身体中を震わせ、心臓をバクバク弾け飛びそうになりながら吠えた。


「でたらめ言うな!!!!!!!!!!ふざけんなよ!!!!!!!!!!」

「ジュン!」


ランセが叫び散らかす俺を抑えるように腕を掴むが、それを俺はふりほどこうとしながら暴れる。そんなわけないだろ!シルバさんがそんな!あの人は強い!あの人が捕まるわけがない!!!!!!!


「本当だ」


妻を慰み者にされたというケイが、目を真っ赤にして言葉を続けた。


「シルバ隊長の固有スキルも、メスガサキの猿の前では通じなくて、俺たちを逃がそうとして捕まって、」

「……捕まってどうなったんだべ?」


カイナスが感情を押し殺した声色で尋ねた。


「あの剣の鬼も、メスガサキの手に落ちて、犯されて殺されたってぇのか?」

「!!!!!!!!!」


俺は殺意の籠った目でカイナスを睨んだ。


「……おそらく。もしかしたら、いや、きっと、もう殺されていると思います」


嘘だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


俺は声にならない叫び声をウライアスじゅうに響かせた。


――またしばらくのお別れだな。


頭のなかでは、シルバ・アージェントのうつくしい声とその笑顔が永遠にフラッシュバックしていた。



最愛の人の死の報を聞き、ジュンは何をするのか?次回もお楽しみに。


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