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愚民は不安よな。マッジャム動きます。

そこに現れたのは、先のキャンデーラ征伐という歴史的事件を引き起こした、ヨシモルト興業の二大看板、マッジャム・グァキノツカヒと、ハムァダ・フレンチクールラであった。


「愚民?」


その場にいた全員が、一国の長と成りえた、所以ともいえる殺気を垂れ流した。一市民が相対すれば、恐怖のあまりに失禁してしまい、歯をがたがた震わせ、悪寒が走ったことであろう。半魚人、豚獣人、竜人、鳥獣人、鬼人族、巨人族、それぞれの種を背負う者たちにとって、人間如きに舐められるわけにはいかなかった。同じ人間のシャニース国王ジャニス・キタガーとしても、自国領内、宮殿において、部下の眼前で愚民呼ばわりされ、へらへら愛想を振りまいていては、王の沽券にかかわる。


「ユー、誠に遺憾に思う、なんて能天気なやり取りをするつもりはないヨ。即刻訂正と謝罪を要求する。さもなくば、メスガサキとは一戦を交えることになるヨ」


ジャニスは陽気な口調とは裏腹にドスを聞かせてすごんで見せた。にんまりとスキンヘッドの男、マッジャム・グァキノツカヒは破顔した。


「んっ、はぁ(笑)一戦、一戦、一戦と言ったかぁ?ははは、なんと嘆かわしいことだ。ジャニス・キタガー、貴様、年は幾つだ?」

「ワッツ!?」


こめかみの筋をひくつかせ、ジャニスは顔を紅潮させた。


「ユー!お前、ユー!お前てめえ貴様コラ、年下のションベン鼻たれクソ野郎が、誰に口聞いてんだヨ!?ミーは、今年で87歳!!!!!人間なら年長者へ敬意を払え!!!!!うちのジュニアどもみてえに、てめえのクソもらし穴をズッポズッポと犯してやろうか!!!?あああああん!?????」


下品な口ぶりに顔をしかめるエノン国宰相・ヴェッキー。マッジャムは、嬉々として、隣のハムァダに目線を移す。


「八十を過ぎて、性欲に溺れ、年端のいかぬ餓鬼で下の処理をしている老いぼれがいるようだ。ハ~ムァ~ダ~。よく見ておけ。残りの人生で、こんなに見事な化石をみることは、二度とあるまいて」

「ミーが化石だと!?クソスキンヘッドが!!詫びろ!服を全部脱いで、ミーのペニたんにキスをしてひざまずけ!」


激昂して、鼻血を垂らすジャニス。側近がハンカチを手渡そうとすると、近寄ってきた側近の顔面を裏拳で殴って、ミーの邪魔をするな!と叫んだ。


「マッジャム。ジジイで遊ぶな。見てらんねーよ」

「んっ、はぁ(笑)身分階層カースト制度を導入し、半永久的に奴隷を生産するシステムを創ったジャニス王。もう少し賢明で老獪な狸かと期待を膨らませていたが、有名無実、なんとまぁ、老いがそうさせたのか、元より中身のない薄っぺらい俗物だったのか。いやはや、どうあれ見事な化石だ(笑)ここで失うのは、残念でならん」

「!?」


憤激して気付かないジャニス本人を覗く、6人の王は、謎のスキンヘッドの一言に騒然とした。


「おいハゲ。失うってのは何だ?」


巨人族の長、モーヴ・プルプルヌイが、天井に近い首を折り曲げ、足元近くにいるマッジャムに問いかけた。


「ふむ。巨人族、ヨミゥーリ国のモーヴ王だな。一見怜悧なツラをしているが、我の真意を読めんとは。図体のみがでかくて、脳は小さいか、あるいは、我こそマッジャム太陽神の思惑、凡人には理解できぬのか」

「悪いなハゲ(笑)喧嘩売ってんのかもしんねぇーが、めんどくせぇから買わねえよ(笑)とっとと教えろや」

「言葉の通りだ。今からジャニス・キタガーには死んでもらう」


マッジャムの代わりに、ハムァダが、ウホホ、という猩獣人特有の笑い声を交えて、にこやかに答えた。


一瞬の静寂が生まれ、そして、爆笑が起きた。


「冗談きついじゃん(笑)」

「非現実的すぎてまったく濡れませんわ(笑)」

「失笑かつ軽蔑、ですね(笑)」

「ふっ、どうでもよい。会合をせぬなら、皆こうべを垂れよ。わらわが帰る」

「馬鹿は食後に言え(笑)腹が減る(笑)」


「何がおかしいのだ?」


マッジャムがきょとんとした顔で笑い転げる王たちに問いかけると、腹を抑えて笑う豚獣人の王、タマキンがブヒブヒ鼻息荒く答える。


「ジャニス・キタガーにはな、S-EXランクのスーパーチート、時を止める『仮面舞踏会マスカレード』って固有スキルがあんだよ(笑)確かに、変な口調のいけすかねえジジイだが、今、この世界でこいつに勝てる奴はいねえ。だから俺等は、素直に呼ばれたんだぜ?」

「……ほう。その程度で、我をあざ笑っておるのか。やはり、愚民の思考回路は、全能の主神たる我には理解できん」


(その程度だ?)


この場にいるなかで、最も修羅場をくぐり抜けてきたモーヴのみが、マッジャムへの警戒を解かず、彼の言葉に身構えていた。


「ハムァダ。興が冷めた。さっさとやってくれ。話し合いに時間を割きたい」

「ああ、俺も、笑わせんのはいいが、笑われんのは気分が悪い」


マッジャムとの会話が終わると同時に、ハムァダは抜刀する。


「おい、ガチホモ老人。こっちを見ろ」

「なんだヨ!?クソゴリラ!」


ジャニスと目が合うと、ハムァダは一直線でジャニスの喉元へ斬りかかった。







本来。



そう。


本来ならば。


ジャニスはここで、固有スキル「仮面舞踏会」を使って、時を止めていただろう。


しかし。


ジャニスの首は、瞬く間に胴から離れ、ぶったぎられた生首は、白金の間の床に転がった。


!!!!!!!!!!!!??????????????


爆笑の空間は、ジャニスの生首をきっかけに、血なまぐさくて緊張感漂う息苦しいものへと一変した。



死。



そこに在るのは、世界最強のチートスキル持ちの、絶対王者の、無惨な敗北を意味する死。


「……嘘、じゃん?ジャニス王が」

「……何をなされたのですか?かつ何が起きたのですか?」


困惑する王たちの前で、ハムァダは血ぶりをして、平然と答える。


「言ったところで、俺の強さは変わらないから教えてやる。俺の固有スキルは、『臆病者には冷や飯を』って言ってな、相手の固有スキル、および魔力を封じ込む能力だ」

「固有スキルを封じるだと……」


モーヴは冷や汗をかいた。こいつ、いやこいつらは、マジでやばい。


「俺と相方のスキルで、先程この宮殿内部の兵士どもは、うちの奴等で皆殺しにした。嘘じゃねえのは、わかるよな?」

「……」

「王ども。お前らはこれから、こいつの言うこと全てに、首を縦に振れ。言っとくが、こいつは俺よりチートだぜ?」

「ん~(笑)ハムァダ~。我を崇め奉るとは殊勝な心掛け。シャニース国は貴様にくれてやってもいいぞ?」

「馬鹿はよせ」

「馬鹿という方が凡人で死ぬべき存在であり、言われた私は神だ」

「その減らず口まじでやめろ、うぜぇから」

「うぜえではなく、神と言え。そうすればシャニースは貴様のものだぞ?」

「黙れ馬鹿。この国の使い方は、最初に決めただろう?」


シャニース国の宮殿内部でシャニース国、現国王を殺したばかりとは到底思えない緊張感のない会話をつづける二人に、王たちは言いようのない不気味さを感じていた。


この二人は、本気になれば、いつでもこの場の全員を殺せると高をくくっており、そしてそれは、疑いなく確かなことでもある。圧倒的強者の余裕でくっちゃべるメスガサキの二人は、些末なやりとりを終えると、当たり前のように円卓の空席に腰を掛けた。


「さあ掛けたまへ。これよりこの円卓にて、我こそ最強最高位の唯一神、マッジャム・グァキノツカヒを盟主とした、世界連合せかいれんごうを創設する!!!!」


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