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37/50

モーニングに娘は。

翌朝。

グチモームス最大の悪夢のような一日が明け、早朝6:00。


ランセ・アズールにかけられていた、レンファウ・シーワーケルの変身魔法は、人知れず解けていた。

度重なる拷問と性的暴行により、元の姿に戻っても全身は痣だらけで顔面は腫れ、眼窩や顎など複雑骨折というありさまである。

が、奇跡的に、まだレンファウの四肢は胴体に繋がっていた。奴隷の妄言にしてはリアリティがあると判断した拷問担当の兵士の判断によるものである。

ワタヴェ商会次期会長であるアンジェロに、再度確認を取ってから四肢解体を執行しようとしていたのが、アンジェロ緊急逮捕により、それどころでなくなっていたのだ。


6:15過ぎ。

レンファウのうめき声を聞いた拷問官の一人がやってくる。


6:20。

拷問官の一人が、仲間を呼びに行き、戻ってくる。

元の姿に戻ったレンファウの姿を見た彼等は、昨日の拷問中、彼女が言っていた「ワタヴェ商会を潰そうとしている侵入者がいる」、「変身魔法を使って潜伏している」、「私や商会、グチモームス国に恩を売るまたとないチャンスだ」という言葉を思い出し、急いでグチモームス城西にある、ワタヴェ商会会長、アンジェロの父ワタヴェ・ジャッシュの屋敷へ走った。


6:55。

ワタヴェ・ジャッシュの寝室に入った拷問官らが見たのは、腹をかっさばき、更には自身の首を刎ねて自殺した、雇い主の首なし遺体だった。ワタヴェ・ジャッシュの名で遺書も添えてある。

あまりにも見事な切断面を見て、ワタヴェ会長は殺されたのでは?と疑念を抱く。


7:00。

グチモームスの権威を失墜させた、淫欲の王女マリヤ・グチモームスがグチモームス城を後にした。

城の兵士や使用人は、勿論朝から活動していたのだが、誰一人として、彼女に言葉をかける者はいなかった。王も見送りには現れず、居室で一人、亡き妻と、今生の別れとなってしまった愛娘を想い、咽び泣いた。


7:10。

気を失っていたかのように寝ていたアンジェロ・ジャッシュが目覚めると、牢内で絶叫、激しく暴れ出す。


7:30。

アンジェロ・ジャッシュが投獄されている地下牢の牢番より、グチモームス№2である宰相の元へ、ある報告が入る。

罪人アンジェロが、自分はマリヤである、魔法をかけられている、今すぐジュン・キャンデーラを殺して、等とわめいているというものだ。アンジェロの処刑は8:15を予定していたため、死を間近にして、狂ったのだろうと宰相は呆れ果てた。


7:45。

宰相の元へ、ワタヴェ商会会長の訃報と、レンファウ・シーワーケルが漏らした不穏な発言内容について報告が入った。

レンファウと思われる女奴隷が言う≪変身魔法をかける侵入者≫がマリヤお嬢様に魔法をかけたなら。恐ろしい可能性が頭によぎった宰相は、非礼を詫びて、王の居室に入り込んだ。


7:50。

泣き崩れる姿を見られ、耳を真っ赤に染め、怒鳴り散らすクンツ王。それをなだめ、部下たちからの報告を耳に入れる。


「……投獄されているのはマリヤだと?」

「狂人の戯言と一蹴したいところですが、レンファウ議員を名乗る女奴隷は、実際拷問されていた時と今とでは全くの別人とのこと。変身魔法をかけられていたという話には真実味があります」

「侵入者が本当にいるとすれば、なぜそのようなことを?」


眉間に深い皺を刻み、蒼白な表情で、王は宰相に尋ねた。


「我が国の弱体化を図った、他国の策略かと」


宰相は更に、もう一つの憶測を述べた。それは、マリヤとアンジェロの密通も捏造なのでは?というものだった。

たしかに変身魔法が存在するなら、マリヤとアンジェロに変身させた誰かがヤっていただけの可能性もある。あの貞淑な姫が、本当にあんな淫靡なハレンチ行為をするとは思えない、そう宰相は思っていたのだ。


「いや、宰相の言う通りだ。マリヤがあんな、さかった犬のような、あんな売春婦みたいなことをするとは到底思えん!きっとそうだ!!!すぐに侵入者を捕えるのだ!」


娘は冤罪に違いないと確信を持ったクンツ王は、表情を一変させ、堂々と下知を飛ばした。


「国王のおっしゃることはよくわかります。ただ、マリヤお嬢様がアンジェロに姿を変えられているというのなら……」


宰相の言葉の意味がわからず、王は首をかしげる。


「変えられてるというのなら何だ?うん?先刻城を出て行ったマリヤは誰かということか?」

「いえ、そうではなく!」

「ああ、本当のアンジェロがどこに消えたのかという、」

「違います陛下!マリヤお嬢様がアンジェロに姿を変えられているというのなら!!」


宰相の訴えるような口調で、ようやく真意を察した王は、思わず声をあげる。


「っああ!今から処刑されるのはマリヤではないか!!!!!!!」


7:55。

国王の下知を受け、宰相が兵士へ命令を下す。至急アンジェロ処刑を中止せよ。


7:58。

グチモームス城より10キロ離れた、グチモームス領内・ラヴマシム広場に国民が押し寄せていた。早朝に設営された断頭台の周りを囲み、国辱であるアンジェロの死を、みんな待ち望んでいた。


8:00。

宰相の元へ新たな報告が入る。グチモームス城近域にある、『ワタヴェ商会』私有の奴隷収容施設から、100人余りの奴隷が脱走しているというものだった。

すぐに宰相は、城内の兵士200を派遣するよう命令を出す。


8:02

命令を出した宰相のもとへ、間髪いれず、グチモームス城北の森林より、大量のモンスターが押し寄せているという一方が入る。その数、およそ3000。

すぐに近衛兵長へ、兵士5000を指揮して鎮圧せよ、と伝えた。


8:04。

アンジェロ・ジャッシュが馬から降ろされ、断頭台の下まで連れて行かれる。自分はアンジェロじゃない、とあまりに騒ぐため、兵士たちに両手を縛られ、口をふさぐ布を巻かれ、目隠しまでされている。群衆が石を投げ、ヤジを飛ばし、罵詈雑言で、アンジェロをなじった。


8:05。

グチモームス城城門付近に、30匹の熊、虎が出没。兵士を襲っていると報告が入る。

先程広場に向かわせた伝令も襲われてしまったと言う。


「ならばお前が広場に向かわんか!早馬で行け!一刻を争うのだ!」


激昂するクンツ王。

駿馬を飛ばして、1キロの距離がおよそ1分。広場まで10分。


間に合ってくれ!すまなかったマリヤ!!!!無事でいてくれ!!!!!!!!


**********************************


8:45。


アンジェロの生首がクンツ王の元へ届いた。



「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



絶望したクンツ王は、生首を抱いて天を仰いだ。


*******************************


8:14。


伝令はすんでのところで間に合ってはいた。



「国王の命令だ!!!!!即刻処刑を中止せよ!」



伝令は広場に到着するやいなや、大声で叫んだ。



しかし、その声はかき消されてしまったのだ。


何に?


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」


天空を覆い、大地に大きな影を落とす、巨竜によって。


俺は、モモ、ランセ、シルバ、ロッソ、ブランと、ドラゴンの背に乗り、広場上空から、断頭台を見下ろしていた。


広場の人々は、天の怒りだ!と怖れおののき、たちまち群衆の「殺せ」コールが始まった。

殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!


処刑人は定刻になったことを確認し、執行した。


ストンッ。


ギロチンの動線には何の障害もなく、ただ重力に従って、刃は降下していき、俺の婚約者だった女の首を、なんの情緒もなく落とした。


終わったんだ。


俺は、ふぅ、とため息をついた。


ジュンの復讐は果たされたが。。。

これからどうなる?

次回も必ずお見逃しなく。

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