王女マリヤ・グチモームス
マリヤ・グチモームスのプロフィールに書かれていたのはなんと……!!
「え?」
ウィズが表示したマリヤ・グチモームスのプロフィール。
その一番初めには、モモと同じ言葉が記載されていた。
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マリヤ・グチモームス(18) 朝の国グチモームス出身
≪転生者≫西谷莉紗 享年(25)
職業:王女
145cm(Bカップ)
自己紹介文
どーも!私は西谷莉紗でぇーす!小さい頃から恋愛体質で(今も身長は小さいけど笑)、小学生の頃から彼氏は10人ぐらいはいたかなー。初体験は小6。高校は親の転勤で地元から離れて、それを機に逆・高校デビュー!黒髪清楚のおしとやか女子キャラで通してました(ウケるw
そんで、高1んとき、顔のイイ同じクラスの男子に告られて付き合うことにしたけど、1年付き合っても、おうちデートでもキスすらしてこないし、なんだよ顔だけイケメンの陰キャかよ!!!!ってなって、ヒロくんの部活(サッカー部)の練習試合を見に行った時に仲良くなった、陽キャの古賀先輩とセフレになっちゃいました(我ながら若かった~w
半年くらいしたらバレちゃって、私からフったんだよね。まぁ、あれは完全にヒロくんが悪い。あれは誰でも浮気するだろ笑
あのあと古賀先輩とも関係切って、地元のヤンキーのトシヤ先輩の彼女になって。窃盗とか、美人局とか、痴漢冤罪ふっかけてお小遣い稼いだりして。でも、先輩が借金作って、彼女の私が、キャバとか、デリヘル、ソープかけもちで返したんだよ?凄くない?w
せっかく借金返し終わって、幸せになれると思ったら、キャバでガチ恋してきたおっさんに刺されまくってチーン。マジありえないよね!?
でも、転生して、グチモームスのお姫様になって、私は確信した。
やっぱり私は、生まれながらにして勝ち組なんだって。今回はスタートから貴族のお姫様だし、ビジュも良いし!(身長が小さいのとおっぱい小さいのは萎えたけど、いずれ豊胸すればいいしね!)
年下の婚約者をお父様が決めてきた時は、はぁ!?って思ったけど、可愛い弟って感じで好きなんだよねぇージュンさま。いまんとこ将来の旦那とは思えないけど(ガキすぎるw
イケメンに育ったらOKって感じ!
とりま、今はアンジェロしか勝たん!イケメン執事とか最高すぎる!理想の男すぎて、顔100点、身体の相性も100点、性格は腹黒いところが濡れるから120点!奴隷売買をやってるって打ち明けられたときは、格好良いって思ったもん!やっぱり、アンジェロも私と一緒で勝ち組なんだなーって。
前の世界のときもそうだったけど、世の中には、勝ち組と負け組がはっきり存在しているからね(わざわざ誰も言わないけど
負け組は、一生負け組。奴隷は、一生奴隷。それが世の中だと思うし。
転生したこの世界は、それがはっきりしているから大好き。アンジェロには奴隷をじゃんじゃん売ってもらって、大金持ちの王様になってほしい。で、いつかキャンデーラも滅ぼして隷属させちゃえばいい。そしたら、私は、アンジェロに略奪されて、強引に結婚させられるの!運命的だし燃えるよね?w
とか思ってたのに。アンジェロもう死んじゃうじゃん。まじジュン様、改め、この嫉妬丸出しクソガキ坊ちゃまときたら、ありえなすぎ。なんだよ殺してあげるとか。お前が死ねよ。前世で私を殺したおっさんと同じようなこと言いやがって。奴隷のこと知っていようが知っていまいがどうでもいいじゃん。殺すとか、マジキモイ。陰キャかよマジで。ここは嘘つき通して逃げ切って、絶対にいつかキャンデーラに復讐してやる。アンジェロのお父様に今回のいきさつを報告して、どっかの国に戦争しかけてもらお。このクソガキに死ぬほど後悔させてやる。
・・・・・・絶対に、絶対に私は、こんなところで終わらないんだから。
好きなものは自分と地位と名誉。好きだったものはアンジェロ
嫌いなものは負け組、陰キャ、ジュン・キャンデーラ
固有スキル「スポットライトを独り占め」(ランク:S)
(自分の感情すら騙し、感情を自在にコントロールすることができる※自分の都合のいいように、自動で発動可能)
剣術E 魔法B 知力B 体力C
現状マッチング成立確率マイナス100%(マリヤさんはあなたをひどく憎んでいます。殺されないようにご注意を)
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「西谷莉紗」
俺は自分の目を疑った。
ニシタニリサ。
忘れもしない。
元の世界の。
柴田弘嗣の、人生最初の彼女だ。
マリヤは、リサの生まれ変わりだったんだ。
「え……?」
マリヤの動揺が見て取れる。転生して、はじめて前の世界の名前を呼ばれたからだ。
「ジュン様・・・・・・?え?えっ、うそ、なんで、その、名前を?」
きっと、本当に神様っていうのはいるんだろう。
運命の悪戯なんて可愛いもんじゃない。宿命というか、宿業というか。
出逢うべくして、俺とマリヤは出逢い直したんだ。
俺が、前世の復讐を果たすため。女性不信の原因となった、あの最悪な思い出の一つに、決着をつけるために。
そのためにニシタニリサは、マリヤ・グチモームスに生まれ変わった。
ははは。ありがとう、神様。
最高だよ。
「お前みたいな女は、何回生まれ変わっても、女なんだろうな」
「ジュン様、あの、私は、」
「もう喋らなくていい。全部終わったから」
「え?」
「俺に嘘をつき、過去の因縁もあるお前を、生かす理由がこれで完璧にゼロになったよ」
「そんな!ジュン様!信じてください!私は本当に何も知らないんです!お慈悲を!!!!!私、死にたくないんです!なんでもするから!本当になんでもするから!」
迫真の演技だな。固有スキルで自分の心を騙しているんだから当然と言えば当然か。100%本心で否定してきてる。
「マッチングアプリ」を使わなければ危うく見破れなかった。
「悪いけど俺に嘘は通用しないよ。俺のスキルを前に教えたろ?」
「え?あ、たしか、『鑑定』スキル?」
「実はその上位互換でね。俺のスキルは『マッチングアプリ』。相手のプロフィールを覗くことが出来るチートスキルさ」
「なによそれ!?」
「前世のプロフィールも、今のプロフィールも、お前の秘密も、固有スキルも、何もかもお見通しだ、マリヤ」
「そんな……」
完全に詰んだ。そう言いたげなマリヤは、膝から崩れ落ちた。
俺とマリヤのやり取りを見ていたシルバが俺の横に並んだ。
「ジュン。どうするんだ?結局マリヤは殺すのか?」
「……うん」
「そうか」
シルバは黙って俺を見る。あれ?ジュンって言った?ジューンじゃなくて?
あ。
俺は元のジュン・キャンデーラの姿に戻っているんだった。
けど、シルバさんが驚いていた様子はなかった。
てことは。
「シルバさん、もしかして、最初から気づいていたんですか?」
「いや、途中からだ。ブランが奴隷たちの傷を引き受けたのを見て、もしかしたらと思っていた」
そうか。一度シルバさんの前で、ブランがロッソの傷を『聖人の左手』で治すところを見られていたんだった。
「ロッソの関西弁は、以前会った虎獣人に酷似していた。それに、あれほど持続力のある変身魔法を使える魔法使いはそういない。ランサーは、ランセ・アズールだな?」
「正解です」
「確信したのは、お前が、マリヤ・グチモームスの婚約者だと私に打ち明けたときだ」
「え?」
「私をただの、単独行動ばかりする脳筋剣士だと思っていたんだろうが、」
「いえ!そんなことは、」
「マリヤ・グチモームスの婚約者は、ジュン・キャンデーラ。キャンデーラ家と交流のある私が、それを知らないわけないだろう」
なるほど。
確かに、頭の中でシルバさんを少し舐めていたかもしれない。反省だ。
「あ」
シルバさんとやり取りしている間に、全裸のマリヤが扉に向かって走り出した。
ドンッ
「痛っ!」
マリヤが外にいたランセとぶつかり、尻もちをついた。
「ジュン。やっぱりお前は殺すな」
ランセが俺の目を見て言った。
「どうして?」
「復讐は十分果たせたろ?」
「だけど!マリヤを逃がしたら、必ず仕返しにやってくる。だから、」
「誰も逃がせとは言ってない。予定通り、マリヤには死んでもらう」
ランセがあごひげを撫でる。
「どういうこと?」
簡単な数学さ、とランセ・アズールは不敵に笑った。
ランセ・アズールの提案は一体。
次回に乞うご期待!




