猛獣使いのモモ
謎の幼女・モモは何を語る!?
「俺等の会話を盗み聞いてたのかこのガキ」
ランセがモモと名乗る幼女を片手でつまみ上げる。
「人のことを持ち上げるな!無礼者が!」
「威勢のいいちびっ子やな」
ロッソがにんまり微笑む。
俺もロリコンではないが、元気な幼女はほほえましいな。
そして。
こんな子を奴隷にしようとしてたアンジェロに、改めて殺意が沸く。
「モモと言ったな。今言ったことは本当なのか?」
シルバが穏やかな声色で尋ねる。
「もちろんじゃ!わしは最強の猛獣使いじゃからのう!」
「おいちびっ子。元気なんはいいが、大人の会話に入ってくんなや」
「ちびっ子じゃない!モモじゃ!モモ・ローザじゃ!」
「おいガキんちょ、なんで最強の猛獣使いだなんて言いきれるんだ?」
ランセが、片腕で持ち上げたまま、モモに質問する。じたばた抵抗する幼女。
「わしの固有スキル『吉備団子』なら、どんな猛獣も操れるんじゃ!」
「固有スキル!?」
俺は驚きが隠せなかった。
「君は幼女じゃないか!」
「誰が幼女じゃ!」
幼女が固有スキルを持つわけがない。スキルが顕現するのは、12歳になってからだ。
まさか。
「幼女じゃないのか?」
「幼女じゃないわ!わしはモモ・ローザじゃ!」
「名前じゃなくて、え?君何歳?」
「こっちじゃ12歳じゃ!」
12歳!?どう考えても幼稚園児くらいにしか見えないのに!
て。
え?
こっちじゃ12歳?
「話になんねえ。こいつぁ、かまってほしくて訳わかんないこと言ってんだ。小屋にいったん戻すぞ」
「異議なし」
「ブランも賛成だ」
「あとで遊ぼうやちびっ子」
俺以外の皆が幼女・モモを戻そうとする。
「ウィズユー。モモ・ローザ」
モモの発言が気になった俺は、ウィズを呼び出し、幼女のプロフィールを検索する。
「え?」
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モモ・ローザ(12) 動物の国サファリパ出身
≪転生者≫ 桃城善助 享年(78)
職業:無し
118cm
自己紹介文
わしの名前は桃城善助じゃ!定年までは動物園の飼育員をやっとった。退職後は、ばあさんと一緒に岡山県岡山市で、犬や猫と暮らしとった。居眠りトラックにばあさんと一緒にはねられて、気づいたら異世界に転生しとったっちゅうわけじゃ。
こっちではローザ家という中流貴族の家に生まれ直した。お母さんとお父さんには随分とよくしてもらったんじゃが、三か月前、強盗に押し入られ、家族は皆殺害されてしまい、わしはブローカーに売られ、奴隷になってしまったんじゃ。
ワタヴェ商会に買われてからは、大した飯も与えてもらえず、生きた心地もせんかった。じゃが、ついさっき、奴隷解放のために現れた素晴らしい奴等によって、自由を手に入れた。
わしはこれから、ばあさんを探す。わしが転生したなら、一緒に死んだばあさんも転生しとるはず。形はどうあれ、ばあさんに会いたい。
ばあさんに会うためならば、わしは何だってする。
好きなものはばあさんと動物。
嫌いなものはワタヴェ商会と失礼なやつ。
固有スキル「吉備団子」(ランク:S)
(どんな動物も従わせられる団子を、ポケットのなかに生成することができる)
剣術E 魔法E 知力B 体力E
現状マッチング成立確率120% (モモさんは恩人であるあなたに深い恩義を感じています。義理人情を大切にして生きてきた方なので、蜜月な関係になることができるでしょう)
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「離せ、はなっ、」
「その子を離してあげてください!」
「!!」
俺の咄嗟の声に、ランセたちは立ち止まった。
「モモちゃん、いや、桃城さん!あなたも、転生者なんですね?」
「あなたもって、お前もか?」
ピンクの幼女が大きな目をかっぴらいた。
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「柴田弘嗣……そうか。あんたもか」
「まさか、自分以外の転生者が幼女だとは思いませんでした」
「幼女じゃないわ!ばかもん!」
「ああすみません」
俺とモモが会話に花を咲かせているのを、遠巻きに見ているロッソたち。
「テンセイシャってなんや?」
「天才の俺でも聞いたことがねえ」
「ブランも謎だ」
「12歳ということではないか?」
「あー、それやそれや!」
「多分、違くねえか?」
ガヤガヤ話している皆のもとに、俺はモモを連れて戻る。
「逃走手段は決まったよランセ」
「お、どうすんだ?」
「モモにドラゴンを使役してもらう」
「「「「はぁ!?」」」」
「ドラゴンってあのドラゴンか!?」
ランセは半ば呆れ気味に尋ねた。
「そうじゃ!わしにまかせろ!」
モモが得意げに言う。
「ブラン、想像も出来ん。ドラゴンを従えられるのは、竜騎士だけだ」
「せやで、しかも竜騎士が騎乗すんのは、上流貴族のみが飼育を許されとる飛竜くらいや。グチモームスに飛竜はおらんやろ、ちびっ子には可哀相やけど、そんなん無理に、」
「うるさいのお!」
半信半疑のロッソに向かって、モモは『吉備団子』を投げた。
パクッ。
「なんじゃこりゃああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
絶叫するロッソ。
「おいロッソ!!!でけえ声出すな!」
叱るランセを無視して、ロッソは走り回る。
「美味すぎるやろ!!!!!こんな美味いもん、この世にあっていいんか!!!うおおおおおおお!!!!モモ様、俺はあなたに一生忠誠を誓います。死ねと言われれば死にます。ご命令を」
「ロッソが標準語になりやがった」
「獣人種にも効くんだな」
俺たちが吃驚しているとモモはどや顔でピースした。
「この力を使って、わしがドラゴンを連れて必ず帰ってくる!お前らは大船に乗ったつもりで、クソアンジェロたちをぶっ殺すんじゃ!」
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領内の馬を拝借して、モモはランセの水分身(万一に備えてランセが創った)と共に、ドラゴンがいるであろう、お目当ての地に駆けて行った。
それを、俺はグチモームス城内から眺めている。
――ジュンさん。
ひょっこりハート型スライム姿のウィズが顔を出す。
「おーウィズ。さっき使ってから出しっぱなしだったな」
――どうしてモモさんは協力することになったのですか。彼女はすでに自由であり、奴隷たちを、リスクを冒してまで助ける理由がないと思います。
「ああ、モモの探しているばあさんは、俺の『マッチングアプリ』を使えばすぐ見つけられるって教えたんだ」
――そうでしたか。ジュンさんは、理想の相手を探すこのスキルを、いつも人探しにばかり使われるのですね。
「不満なのか?」
――いえ。私も慣れてきました。それこそが、ジュンさんなのだと思います。
「ありがと。でも、マリヤとのことが終わったら、本来の目的で使わせてもらうつもりだよ」
――え?それは。
俺はウィズをしまって、目の前を進むシルバ・アージェントを見た。
マッチングアプリのオートモードを使えば、彼女の本名はすぐにわかる。
そして、名前がわかれば、詳細なプロフィールが見れて、彼女の全てがわかるだろう。
だけど、彼女の本名だけは、彼女の口から直接聞きたいと、いまは思っている。
それが、彼女が俺を仲間だと、一人の人間として、心から信頼してくれた証なのだから。
「ジューン」
シルバが立ち止まる。通り過ぎようとしていた部屋の扉が半開きになっていたのだ。
「シルバさん?」
「お前は見ない方がいい」
「え?」
見るなと言われて見ない奴はいない。俺は覗き込んだ。
あ。
中は書斎のようだった。
四方に多くの文献が収められている書棚が並び、書斎の奥の机の上で、男女が二人まぐわっている。
あ。
そこには、つい先刻見たばかりの男性器があった。
そこには、先刻見たばかりの男の裸体があった。
そこには、先刻見たばかりの爽やかな男の顔があった。
そして。
「あああ」
そこには、俺のよく知る少女の顔をした淫乱ビッチが、何もまとうことなく、声を押し殺して、男の肉棒が出入りするたびにあえぐ姿があった。
マリア・グチモームス。
俺の、婚約者の姿に間違いなかった。
ついにグチモームス城内に入り、ジュンは寝取られ現場を目撃してしまう!(前世込みで何回目だ!?)
どうするジュン!?次回を乞うご期待!




