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死んだほうがいい

ついにアンジェロ・ジャッシュと邂逅!奴隷たちの前で、ゲス野郎は何を語る!?

数十本の男性器、100以上の乳房が、並んでいる。

それもそのはずだ。


鎖につながれた色んな種族の奴隷が、服も着させてもらえず、絶望や憎悪、恐怖、憤怒といった、この世の負の感情のそれぞれを顔にはりつかせていたのだから。


「半年前よりご注文いただいていた、ダークエルフのつがいもご用意出来ております。長寿で有名なエルフゆえ、未成年から青年期の個体は希少価値が高く、高値の取引となるのが通例ですが、父の代より長年お世話になっているレンファウ様ですので、勉強させていただきます」


鬼畜の笑みを浮かべ、淡々と奴隷の説明をして歩くアンジェロ・ジャッシュ。

奴隷売買で巨万の富を得ている、『ワタヴェ商会』の次期会長。

グチモームスに仕える執事のはずが、グチモームス領近くで、こんな奴隷収容施設を作っていたなんて。


このことをマリヤは知っていたのか?


正体がばれないよう、俺たちはレンファウ議員の部下として、目の前の地獄を見せられ、黙っているしかなかった。


アンジェロがこんなことをしているって、あいつはわかっていて許していたのか?


あの日、アンジェロのプロフィールは見たものの、マリヤのは見てはいなかった。


なぜかって?


俺のスキル「マッチングアプリ」に載っていた以上、マリヤの裏切りは疑いようのない事実であったし、それ以外のことは、本人と話してから答え合わせをしようと思っていたからだ。


これを黙って許すような人間だったなら、マリヤ・グチモームス。


子犬のような婚約者の笑顔を思い浮かべ、俺は思った。


お前は、生きてちゃいけない。


人として持っておくべき、心がないんだから。




俺への不貞なんてものは、このことに比べたら、大したことない、と思えた。


人を人がここまで貶めていいわけがない。尊厳を奪い、人権を踏みにじり、モノのように、あるいはモノ以下として扱う非道。


ヒトヲタイセツニデキナイヤツハコロシタホウガイインジャナイノカ?


実母の不倫の一件以来、ふつふつと燃え盛っていたクズどもへの怒りの業火が、ますます膨れ上がっているのを感じる。


「……ジュンちゃん、ここで殺ってええか?」


人間の成人男性に変身している虎獣人ロッソが俺に耳打ちしてきた。


「……まだだ」


俺は不審な目で見られないよう、平静を装いながら答えた。ロッソの両手は、ぷるぷる怒りで震えている。


「ブラン、許せない」


表情には出にくいブランも、嫌悪感で声色が変わっている。


「おめぇら、ジュンの計画邪魔したら、俺がおめぇらを殺すぞ」

「なんやと」


表情を取り繕っているランセが、ロッソとブランの方を向いて、きっぱりと言う。


「ジュンが我慢してるんだ。こらえろ」


頬の肉をぴくぴくひくつかせるランセを見て、二人は押し黙った。ランセも必死で我慢をしているのだ。


「お、見てください。こいつなんか結構な上玉ですよ?顔は整っていてスタイルもいい。巨乳だし乳輪もきれいなピンクで、下の毛は薄いな、はっはっはっ」


人間の奴隷の中から、一人の若い女性を見つけたアンジェロは、強引に乳房を揉みしだいた。


「やめてぇ!!!!!!」


嫌がる女性に興奮したのか、アンジェロは無視して乳房を乱暴に掴み、乳首をぺろぺろ舐めた。


「うん、うまい!!!!明太マヨをつけても合いそうだ!!!はっはっはっ!!!」


下卑た笑みで女性を卑しめるアンジェロに対し、隣に繋がれていた若い男の奴隷が叫んだ。


「おいクソ野郎!!!!!俺の妻に触るな!!!!!ぶち殺すぞ!!!!!!!」

「ん?ここもつがいだったか。ふん。お前、俺が誰だかわかってるのか?」

「人でなしのゴミ野郎だ!!!!妻から離れろ!!!!!!殺してやる!!!!」

「なんて知能が低い。だからお前は奴隷なんだよ。口汚い言葉で俺を侮辱しやがって」


ゲスい微笑みを浮かべていたアンジェロの表情が、一層下品なものに変わった。


「決めたぞ。今から俺は、お前の妻を、徹底的に犯してやる。お前は一言もしゃべることを許さない。声を出した途端、お前の妻を殺す。一応言っておくが、俺は本気だ」

「アンジェロさん、それは流石に」


俺が口出しすると、アンジェロは人さし指を一本立てて静止した。


「レンファウ議員お付きの方とはいえ、口出し無用。これは、教育なのです。奴隷は頭が悪いので、徹底的に調教をしてやらんと、従順な下僕にはならないのです。良かったら一緒に輪姦まわしますか?」


笑顔で鬼畜なことを抜かすアンジェロに、俺は身震いした。


頭がおかしい。


アンジェロのトンデモ持論にうなずいているレンファウ。お前は女性尊重主義者フェミニストじゃないのか?女性がこんな目に遭って、なぜお前は何とも思わないんだ。


「その通りです。奴隷は人ではない。家畜を調教するのは当然のことです」


レンファウの言葉に気を良くしたアンジェロは、では失礼して、といって、ズボンを脱ぎ、隆起した男性器をこすりつけながら、強引に奴隷の女性の唇を奪った。


「ん~ん~!!!!!」


嫌がる女性に何度もビンタをし、アンジェロは舌をいれた。それを黙って見ているしかない夫は、鎖をジャラジャラと揺らし、唇を噛んで、目を血走らせている。


もう駄目だ。ここで殺そう。


女性がゲスの男性器を咥えさせられそうになったところで、俺は計画中止と言いかけた。


その時。


「ぐあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


アンジェロの身体が、見えない刃で切り裂かれ、全身から血が噴き出した。


「……!?」


俺は咄嗟に振り返ると、自分の後ろに立っていた、レンファウの部下に変身したシルバが、刀を鞘に、カチャリと納めていた。


シルバさん!!!!!!


シルバ・アージェントの固有スキル『ゼロ秒』は、攻撃しようとした瞬間、攻撃が終わるチートスキル。


奴隷解放ギルドのシルバが耐えることはどだい無理な話だったんだ!!!!


「あっ、あっ、あっ、」


突然のことで斬られたことにも気づいていないアンジェロは、多量の出血とショックで、びくびくと痙攣して卒倒している。


「おめぇ何してくれてんだ!!!!計画が台無しだ!!!!!!!」


俺を思ってブチ切れるランセに対して睨みかえすシルバ。


「黙って見過ごせと言うのか?私には出来ない!!!」


同感だ。誰だってそうする。


「いいよランサー。シルバさんは何も悪くない」

「だがよ!!!これじゃあ計画が、」


俺とランセが言い合っているところ、割り込むようにレンファウ議員が口を挟んできた。


「あんたたち、何をやったのかわかってるの!?『ワタヴェ商会』の次期会長を殺してタダで済むと思って!?ワタヴェの顧客は武力も財力もある大国ばかりなの!!!戦争になるわよ!?」

「議員のあんたが揉み消しゃええわ」

「馬鹿言うんじゃないわよ!!!!!私まで殺される!!!!!たかが奴隷のせいで!!!!」

「たかが奴隷だと?」


シルバが眉間にしわを寄せて詰め寄る。


「たかが奴隷よ!!生きる価値もない!!本来死んだほうがいい存在!!低能で下品な、牛や豚と同じ、家畜同然な下等な生物!!奴隷が犯されようが、奴隷が殺されようが、大したことじゃない!!」



きめえ。


俺の中で、喚き散らすこの豚女こそ、人間じゃないと思った。


だから。


「ランサー。レンファウ議員にすてきな魔法をかけてあげて」



アンジェロを殺しちゃった!?レンファウにかける魔法とは一体!?

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