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はじまり(帰り道1)/紫陽花
「はじまり(少年の帰り道1)」
少年がひとり
電車に乗っていた
夜が来たばかりで
群青に電灯の黄色
曇天の温さに安心して
眠ってしまった
それが
絵本のはじまり
ページが捲られる
_____
「紫陽花」
やさしくて深い
目に染みる青が雨に色を付ける
人は紫陽花を見て雨を理解する
紫は黄昏であり夜明けであり
湿り気に花の香りを広げる
人は紫陽花を見て呼吸を意識する
森の入口で桃の紫陽花と揚羽が遊ぶ
踏切の前に傘を差して佇む学生
人は紫陽花を見て無垢を思い出す
白い紫陽花の庭の沈黙
いつの間にか雨が止もうとしている
人は紫陽花を見て陽射しの強さに気が付く
夏が来る
例えばたくさんの人が絵を描いて作ったパラパラ動画で、どんどん絵の中の画風が変わっていくアレ。あんな感じでこのシリーズはたまに詩の文体を変えていきたいし、登場人物も変わるかもしれない。そんな実験。
続きがかけなくなって連載自体が止まるのも本末転倒なので、シリーズに関係ない詩も挟みます。(この回でいうなら「紫陽花」はシリーズに関係ありません)