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卵料理と華胥の花  作者: 浅黄悠
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サーカスと遊園地

 サーカスを見に来ていた。

 小学生にもなっていたかどうかぐらいのこと。



 初めてみるサーカスは温度の変わる拍手と緊張の場所。夜のような闇の中に浮かび上がる華奢なブランコ、アラビア風の黄色い敷物を背に乗せた象が細い台の上を歩く。

 檻に入っていない虎を見たのも初めてのことだった。

 うっすら塩素の匂いがして、冷房の風がきついドーム。

 お客が喜ぶときと喜ばない時の違いもよく分からないほど小さな頃のこと、映画か水族館の熱帯魚でも見るようにただただ目の前にひらめく不思議なものを呆然と見せられていた。

 音楽は四方から重なって、時々腹に響くほど大きくなった。どこから音楽が流れてくるのか暗い中にスピーカーを探していた。

 腕をさすっていると、母が上着を肩にかけてくれた。



 利用客のいない都会の中の駅、錆びた屋根のホームが薄い日陰をつくる。

 ドームの中はあんなに寒かったのにここは日陰でも汗が滲む。

 上着は要らなくなった。

 退屈しのぎのおしゃべりが暑さにもやる空に響く。


 サーカスを途中で抜け出した、その帰りの電車の中のこと。

 がらがらに空いている車両でうたた寝から目を覚ました時、向かいの窓の外に遊園地があった。


 骨組みもゴンドラも白い観覧車、白いジェットコースター。白い建物に白いメリーゴーラウンド。

 すべてが真っ白な遊園地の中には人の気配が無い。遊具も全て止まっている。

 空は駅にいた時より、もっと青く抜けていた。


 快晴色の中に観覧車とジェットコースターの頂点。

 異様に静かな場所。


 遊園地はみんなお菓子色に塗られているものと思っていた自分には、白一色でできたアトラクションは小さな驚きだった。実際に遊びに行くならお菓子色の遊園地の方が楽しいかな、でも、確かに、統一された色の遊園地があったっていいよな。子供ながらに考えた。「きれいだね」と指さして言ってみたら、母は同じく「綺麗だね」と返事をくれたけれど、文庫本を読んでいる途中だったから、果たしてどれほど窓の外に気を向けてくれていたか分からない。


 遊園地はすぐ窓から流れて近未来的な都会の風景がその場の興味を持って行った。

昔書いた詩を引っ張り出してきました。

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