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⑵『闇猫』
⑵『闇猫』
㈠
闇猫は度々、公園に現れる。しかも、昼ではなく、夜の公園である。自分はそのことが、気掛かりでならなかった。闇の中だから、闇猫の色彩すらつかめない。しかし、それで良いのである、充分に、小説になってくれているのだから。
㈡
それにしても、不思議な猫だ。同一生物かも判断が付きかねる。ささっと、公園の遊具から、小林の中に入って行って、良く姿を晦ますのである。勿論、存在を知られたくないのであろう、鳴き声と言う鳴き声は、一切出さない。
㈢
それでいて、ここまで、俺を執着させる闇猫とは、何かの生まれ変わりなのであろうか。であるからして、俺は、闇猫を見つけ、見失った後、いつも、不思議な感覚に襲われるのである。果たして、俺の知合いだった死人の誰の生まれ変わりだろうか、などと言う風に。