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8話「最低な人との再会です」

「俺が女と楽しんでるところにウェルネリアが突撃してきやがったんだ! それでばれた! そして俺は婚約破棄されたんだ!」


 トマスは恥ずかしげもなく堂々とそんなことを言い放つ。


 まるで、自分は悪くない、とでも言いたげに。


「ええ……それは貴方が悪いのでは……」

「馬鹿言うな! いきなり部屋に来る方が悪いに決まってるだろ!」

「ですが浮気は」

「男ならライトな浮気くらいして当然だろうが!!」


 ちょうどそのタイミングで地域の警備隊がやって来た。


「騒ぎが起きていると聞きまして」


 どうやら誰かが通報してくれていたようだ。


「なっ……何で俺が拘束されなくちゃならねえんだ!」

「貴方ですね、騒いでいるのは」

「や、やめ、やめろ! 離せ! おいっ、やめろ! 何しやがるっ、やめろよおおおおおおおおお!」


 こうしてトマスは迷惑行為を働いたとして連れていかれたのだった。


「災難でしたね」

「はい……それに、モーレスさんに迷惑をかけてしまって……申し訳なさしかありません」

「ああいえ、その辺はお気になさらず」


 やがて出される、注文していた紅茶。


 なかなか綺麗な色をしている。

 きっと味も良いのだろう。


「ウェルネリアさん、怪我はなかったですか?」

「はい……」

「それは良かった。僕といる時に何かあったら大変ですからね」

「貴方のせいにはしません……」

「でも、やっぱり、責任というものがありますよ」


 彼はシロップを注いだ。


「そういうものでしょうか」

「そうですよ」


 その後私は知ることとなった。


 私との婚約が破棄となった後、トマスがどうなったかについて。


 トマスはあの後オフィリアとの交際をこそこそと続けていたそうだ。

 しかしある時オフィリアに子ができ、それによってオフィリアは婚約者から婚約破棄された。

 で、彼女の親に激怒されることとなったようだ。

 トマスはオフィリアの両親から酷く叱られ、さらには「結婚して責任を取るか今後一切娘に会うな」と言われたそう。


 本来なら結婚を選んだだろう。


 ただ、その時のトマスは婚約破棄の件によって社会的地位やら何やらを失っていて自分を生活をするのに精一杯だったので、結婚しないことを選んでしまった。


 それによって二人の関係は壊れた。


 そうして一人になったこともあって、トマスは私と再会するタイミングを狙っていたようだ――都合よく私とやり直すために。


 結果的にはああいう騒ぎになってしまったのだが。


 ……まぁ、愚かとしか言い様がない。


 やり直す、なんて、そんな道があるわけがないじゃないか。

 でも彼は少しは期待していたようだ。

 あれこれ言って近寄れば何とかやり直せるかも、と。


 ……随分馬鹿にされているのだな、というのが正直なところだ。


 でも、ある意味、モーレスと一緒にいる時の再会となって良かったのかもしれない。


 次の相手がいるとなれば、トマスもさすがに諦めるだろう。

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