6話「お茶もするくらいの関係性になっています」
あれから数ヶ月が過ぎ、いつしかモーレスと親しくなっていた。
今ではお茶もするくらいの関係性にまで発展している。
「モーレスさんとこんな風にお茶する関係になるなんて思いませんでした」
今日飲んでいるのはミルクティー。
ほどよいまろやかさが飲みやすい一品だ。
口腔内に注ぐたび、心地よい味わいが口中に広がる。
「そうですよね、すみません何か無理矢理みたいな感じで」
「いえ。でも、モーレスさんと過ごす時間はとても楽しいですよ――って、あ! 何かすみません! 不躾なことを!」
「いえいえ、不愉快がられていないなら嬉しいです」
「不愉快だなんて! そんなこと、あるはずないです」
モーレスとのことは母も知っている。何も、べつに隠しているわけではないのだ。だからこれは堂々とした交流。変な意味はないし、やらかしでもなく、何の問題もない交流なのである。だからこそ、親にも隠してはいない。
「それにしても、このミルクティーとっても美味しいですね!」
「僕、好きなんですよ。ここのお店」
「へぇー」
今日来ている喫茶店はモーレスがおすすめしてくれた店である。
だからだろうか、店の商品を褒められて嬉しそうにしている。
「よく来ていらっしゃるのですか? ここに」
「ええ、そうなんです」
「どなたかと?」
「実は……その、一人で」
「お一人で、ですか!」
「驚かせてしまいましたか? もしそうだったらすみません」
さらりとした金髪、そのうちの一本が、顔にかかったのを払い除ける。
「そうですね、少し意外で」
「がっかりされましたか?」
「いや、そういうのではないんですけど……」
私たちの交流はそれほど積極的なものではない。あくまで控えめなものである。ただ、同じ時間を共に過ごし、何となく一緒にだらだらする。私たちの関係はその程度のものだ。
「でも、良いお店をご存知ですね! 凄い!」
「そうでしょうか」
ちょうどそのタイミングで、かなり前に注文していたケーキが出てきた。
注文から既に十分以上経っている。
でもそのお皿を見て納得。
というのも、ただケーキを置くだけではなく絵画のようにソースをかけたりフルーツを乗せたりといった飾りつけもされていたのだ。
それを目にしたら、すぐ、なぜ時間がかかったのかという問いに答えが出た。
「少なくとも私は知らなかったです」
「またどこか良い店が見つかったらお教えしますね」
「はい! よければまた行ってみましょう! ……あ、でも、モーレスさんが良ければですけど」
私たちが共にある時間、それは穏やかさに満ちている。
こんな時間がいつまでも続けばいいのに。
何度もそう思った。
でもそんな願いは抱いても後で悲しくなるだけ――そう分かっている、にもかかわらず馬鹿げたことを考えてしまうのだ。
――二人でのお茶も終わって。
「今日もありがとうございました! ウェルネリアさん!」
「いえ、こちらこそ。色々話ができて楽しかったです。それに、食べ物もとっても美味しかったですし」
楽しい時間はいつも本当に短い。実際過ぎた時間よりも短い時間しか楽しめていないような、そんな気分になってしまうのだ。どうしても。
「気に入っていただけたようで何より」
彼はいつも爽やかに笑う。
その笑みに惹かれている私がいる、というのもまた、事実である。
……馬鹿かな、私。
単純すぎるよね、こんなくらいでその気になってしまって。
楽しい時間を過ごせているからってその先まで想像してしまうなんて馬鹿の極みだ。
……でも心に嘘はつけないの。
「あの、モーレスさん……」
「何ですか?」
「よければまた、一緒に会いませんか?」
「え」
「嫌……だったら言ってください、正直に」
すると彼はぱあっと表情を明るくする。
「ええ! ぜひ! また会いましょう!」
モーレスの瞳は純真な子どものように輝いていた。