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勇者のサポーター

作者: 高月水都

直接会っていないけど、通信越しで恋愛できないかなと思って

『初めまして。勇者ガイさま。私は勇者サポーターのレイナと申します』

 魔王を倒す勇者に選ばれてもらった装備品のイヤリングからそんな声が届いた。


「は、はぁ……?」

『私の使える魔法は【転送】のみで、ガイさまが求めれば24時間どんな場所でも【転送】できます。いつでも御用の際はお知らせください』

 と、まあ、最初の会話はそれだけだった。




 旅立ちの時は仲間は一人もおらず、すべて一人で行うしかなった。


 何が必要で、どうすればいいのか途方に暮れていた時にイヤリングをいじると。

『何か御用ですか?』

 とサポーターから返答があり、旅に必要な道具や食事をすぐさま【転送】してもらい、食事が出来ないで冷たい非常食ばかりで寂しいと嘆いていたら熱々のスープやおかずが送られてきて正直驚いた。


 その後、いろんな場所に行き、そこで新たな仲間も出来た。

 仲間の装備や防具も尋ねるとすぐに【転送】されて、体調を崩した時は薬まで送られた。


 仲間と喧嘩した時は仲直りに使えるようにと手紙セットをもらったり、交換日記をして交流を深めろとまで言われた。


 後日仲直りした事でお礼を述べたら。

『サポーターとして当然の事をしただけです』

 と冷たく返された。


 そんな感じでどんどん魔族の居住区に近付くと現地調達していた食事は当然手に入らなくなり、非常食が魔素を帯びて、人が食べると毒になるという非常事態に見舞われた。

 

 持っていた薬も使い物にならなくなり、このまま死ぬんじゃないかと不安に駆られた矢先だった。

『しっかりしてください!! 何のためにサポーターがいると思っているのですかっ⁉』

 叱りつける声とともに朝昼晩【転送】される食事。足りなくなった薬もすぐに送られて、毒になるのならその都度送りますと力強い声が返ってきた。


 そんなサポーターに支えられて、魔王の城に辿り着いた。


 いくらでも湧いてくる魔王の部下。

 今までの魔族とは桁違いの強さを持ち、魔力も体力も尽きてきて死を覚悟した仲間が最後の自爆覚悟の技を放とうとしていたら。


『あなた方は私の事なんだと思っているのですかっ!!』

 死を覚悟するなんて馬鹿なことしないでくださいと告げる声とともにフルポーションを送られて、回復していく仲間達。


 誰か一人でも欠けていてもおかしくない状態だったのに常にサポーターがサポートしてくれていて、最後まで一緒に進んでいき、魔王がいる場所まで辿り着いた。




 魔王の攻撃はフルポーションで回復してもすぐにダメージを負う程の力だった。

 ガイが持っていた剣で魔王の攻撃を凌いでいるが、剣は度重なる魔王の攻撃で粉々に砕けてしまった。


「これで終わりだな」

 魔王の手が開かれてその手のひらに魔力が溜まっていく。


 高エネルギーの魔力で、それを間近に放たれたら死ぬ。


「ガイっ!!」

「ガイさんっ!!」

 仲間が悲痛な叫びをあげて、攻撃を何とかしようとするが、間に合わない。


 誰一人届かない。


『―――死なせませんよっ!!』

 イヤリングから声が届いたと同時に魔王の攻撃を防ぐ盾。


 そして、

「これは……?」

『聖教会の宝物庫で眠っていた聖剣です。誰一人触れる事も出来ない封印が施されていたので勇者様方に伝える事も出来なかったそうですが、無事転送できましたっ!!』

 サポーターの声にすぐさまその聖剣を構えて、

「とりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 と無事魔王を倒したのだった。




「――と言う事で、レイナに直接礼を言いたかった」

 とある配達業者で勤務中のレイナは凱旋してきた勇者にいきなり掴まってそんな事を言われた。


 レイナは落ちこぼれだ。

 代々魔術師を輩出する一族の直系であるのに彼女の持つ魔法は【転送】だけだった。


 攻撃魔法も防御魔法も治癒魔法も。ましてや補助魔法も使えない彼女を一族は【恥】と告げて、一族から追放した。


 魔王が出現した今魔術師を多く輩出してきた一族が役に立てるのにこんな【恥】しか勇者と同じ年頃の者がいないとはと責められ続けた。


 そんな彼女に勇者のサポートをするとある国の王子が仕事を依頼した。


『勇者の旅に必要な物が必ず出てくるからその都度【転送】魔法で送ってくれると助かる』

 彼女はその言葉の意味が最初理解できなかった。


 落ちこぼれの自分なんかが何の役に立つのかと。


 王子から勇者と対になっている通信道具を渡されて起動させてみる。

『なんだこれは?』

 イヤリングから不機嫌そうな声が聞こえたので、淡々と自己紹介を行った。


 勇者ガイは貴族出身で世話をされるのに慣れていた。

「料理って、どうやればいいんだよ!!」

 慣れない野宿。作った事ない料理に悪戦苦闘するさまをずっとイヤリングを通して聞こえていたので、家から追い出されて途方に暮れて必死に生活手段を覚えた自分を彷彿させて、作ったばかりの晩御飯を小分けにして【転送】したのはサポートするのが仕事だから仕方ないと言い訳をして送った。


『………ありがとう。うまい』

 イヤリング越しにお礼を言われたのでサポーターだから当然ですと返したのだが、お礼を言われて内心喜んだのは秘密だ。


 勇者が旅をしているうちに仲間が出来ていく。

 その仲間とどう接していいのか分からないと相談されて、【転送】以外の魔法が使えたらいっしょに行けたのかと劣等感に襲われて、なぜかとても可愛らしい絵柄のお手紙セットを送って、意思疎通が出来るように言い訳をして交換日記をするノートも送った。


 その時の戸惑ったような声に自分のした事が恥ずかしくて情けなくて、【転送】した物を取り返せないかと悶々としたのだが、

『ノートに書いたら何がしたいのかどうしたいのか言葉で言い表せなかったのが冷静になって伝えられた。ありがとう』

 と返事が来て、そんなつもりはなかったんだけどと猛省した。


 そんなこんなをしていたらイヤリングから勇者の仲間から欲しい物を頼まれるようになった。

 男の人には言いにくくてと女性陣から求められる消耗品。その際、身体がだるいようなら休んでくださいと無理をしないように伝えて鎮痛剤も送った。


 魔族との連戦で愛用の武器が壊れかかってという連絡が来たらその武器を作った工房に連絡して新しい物を作ってもらった。


 どんどん戦いが酷くなっていくのをイヤリング越しでしか分からないもどかしさ。それでも自分はサポートしか出来ないからと王子に頼んでフルポーションを入手してもらい、食べ物がすべて毒になると告げられたら旅の最初の頃のように食事を作って今度は仲間全員分を【転送】して食事面もサポートした。

 その間にどんな攻撃も防げる伝説の盾を貸してもらえるように持ち主と交渉して、聖協会の宝物庫に封印されていて使用できないはずの聖剣を【転送】して勇者に送った。


 魔王を倒したという声が届いた時は涙を流したものだ。


 私はサポートしかできなかった。ガイさまや仲間の皆さんのように戦えずに状況が分からないのに勝手に送る事しか出来なかった。


 凱旋パレードで遠目に見るだけで終わるだろうという繋がりで、特別な物はない。


 そう思った矢先に悲しくて涙が出た。

「ああ。そっか……」

 今更気づいた。


「私、ガイさまの事が……」

 好きだったんだ。


 最初から手が届かない人。

 ガイさまはこれから英雄と言われて結婚相手はより取り見取りだろう。王族の姫様でも求める事の出来る立場になるし、一緒に旅をしていた精霊遣いのマーガレットさんとか女盗賊のシルビアさんとも仲良かったからもしかしたらその二人かもしれない。


「これでいいんだ」

 声だけの繋がりだったんだ。きっと風の噂で結婚の話を聞くだけで………。


「レイナ!!」

 ドアが勢い良く開かれて、ずっとイヤリング越しで聞いていた声が直接届く。


「えっ?」

 振り向くと金髪緑目の青年が職場の入り口に立っていた。


「やっと会えた!!」

 その人は新聞で見た勇者の絵にそっくりで……。


「ずっと会いたかった!! レイナの声で慰められて勇気をもらって、一人じゃないと支えられた!! だから、魔王を倒したら最初に直接礼を言おうと思って……」

 と緊張した面持ちでこちらに来て、

「あ…あの……」

 手を掴まれる。


「声しか分からなかったから顔はたくさん想像していた。でも、まさか、こんなに綺麗な人だと思わなかった……」

 顔が赤い。


「き、綺麗って……?」

「夜空を思わせる絹のような黒髪に、青空を思わせる青い目。顔の作りも綺麗だし……」

 こんなに綺麗な人だったんだな。

 と顔を赤らめたまま、手を掴んだまま正面切って言われて、こっちも顔を赤くしてしまう。


「ずっと好きでした。顔を見た事ないレイナを」

 声だけで。その言葉から伝わる性格から。常に【転送】される必要な物を受け取ってどんどん想いが積もってきて。


「声しか知らなかったからこんな事を言うのはおかしいかもしれないけど……」

 ずっと支えられていた。


 傍に居なくても一緒に居てくれた。


「俺と結婚してください」

 と跪いて告げられた。





 ガイさまはこれからどんな女性でもより取り見取りだろう。

 王族のお姫様でも、一緒に旅をしてきた仲間の方も素敵な方で……でも、でも。


「はい……」

 選ばれたのはただサポートをしていただけの自分。


 釣り合わないとか不相応とか冷静な自分が告げているが、それでも。

「お受けします」

 自分の心に嘘は付けない。


「やった!!」

「きゃっ」

 勢い良く抱きしめられる。


 抱きしめられたと同時に周りに多くの人がいるのに気づく。入り口にはおそらく勇者の仲間らしき人たちも。


 恥ずかしくて、抱きしめられるのに戸惑ってガイさまの背中を叩いたのは当然だろう。まさか最初に出会ってここまでされるとは思わなかった。







 後日私とガイさまの事は大きく新聞に載り、勇者と陰で支えてきた女性の恋物語として本にまでなるとは思わなかった。 




 そして、声しか知らなかった二人が声以外も少しずつ互いを知って、幸せになりましたと言われるのは……。

ちなみに仲間にはかなり前からバレバレだった

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