おふだがーるは誤字脱字と戦う。
第四回なろうラジオ大賞参加作品第三十二弾!
「今こそ我は汝を拒ぜ……まただ!」
私は符術師のアヤナ。
除霊師の一人だけど、先ほど除霊師の敵の罠に掛かり厄介な式神が憑いて仕事ができなくなった。
私に憑いた存在。
その名はゴージ・ダツー神。
憑いた相手が何か書く時、誤字脱字を誘発させる、符術師にとっては絶対憑かれたくない存在。
なぜなら符術師は札に霊力を込めた文字を書き、その文字に込められた力を具現化し除霊を行う存在。もし文字が間違ってれば術が失敗し下手すると爆発する……今度は爆発しなかった。セーフ!
ちなみに私に憑いたゴージ・ダツー神を祓うため、私が周囲に配置した札の一枚には『悪量耐酸』と書かれてた。
なぜ気付かなかった私!
つうか何これ!? 大量の炭酸飲料対策の札!? ゲップを芸の一つにしてる芸人から芸を奪う札!?
「フッ、お困りのようですわねアヤナ! 私に土下座して『どうか不甲斐ない私に憑いた式神を祓ってくださいメノリ様』とさえ言いさえすれば、私の聖唱で助けてあげますわよ!」
私に話しかけてきたこの女は修道女のメノリ。
除霊師専門学校時代の同級生で商売敵な存在。
私に用があり訪問した、私の住居の大家の娘でもある。
「ほらほら、不発に終わった札にもう力はありませんわ! ついでに言えば書いてから発動までの時間が早ければ早いほど強い術を使えるのでしょ? 時間との勝負で時間を無駄にするくらいなら私に頼ってはいかが?」
「ざけんな! 誰があんたに!」
すぐ断ると再び札に意識を集中……札が少ない! 補充したいが予算が……次がラストチャンス!
「うおおお!」
残り全ての札を使う。
自分でも信じられない速度で文字を書く。
そして一枚につき一秒ほどで誤字脱字確認……よし今度こそ!
「今こそ我は汝を拒絶する! 今こそ還るべき場所へ還れ! 式神滅殺!」
『ギャアアア!』
直後、私の背中が軽くなった。
ゴージ・ダツー神を無事祓えたのだ。
「や、やった! 祓えた!」
「フン。ここはおめでとう、と言っておきますわ」
歓喜する私にメノリは悔しそうな顔を一瞬見せたが、笑顔で祝福してくれた。
おっとそうだ。
「そういえば書類あるんだっけ?」
そう訊くとメノリはすぐにその手に持った書類を寄越した。
来年も住み続けるかどうかの確認の書類のようだけど……。
「め、メノリ」
汗をかきつつ彼女の名を呼ぶ。
「何ですの? 家賃なら待ちませんわよ?」
確かに何度か家賃滞納した……だが違う!
「私の名前、漢字でどう書くっけ?」
直後彼女はズッコケた。
「いやぁ、使う文字の事ばかり考えて自分の名前の漢字忘れちゃった(;'∀')」
「どんだけおバカなんですのあなた(;'∀')」