目覚め
あれから、俺は3人といろいろ話した。
そして分かったことは、2人は、俺がいた日本とは違うから日本から来たらしい。典次は戦争で日本が勝利した世界から来たようだ。そして、その世界では、ソ連と戦争中だったらしい。アメリカ軍の特殊部隊と合流するため、輸送機でアメリカへ向かっていたところを撃墜されたのを思い出したそうだ。
典次とは違い星野は、自分の過去のことは、ほとんど何も語ってはくれなかった。唯一教えてくれたのは、年齢が32歳ということだけである。
それぞれの身の上話は置いといて、ほかにも分かったことがある。それは一時的にであれば体の主導権を2人に渡すことができるということである。典次は最大12時間。星野はあんまり体に入りたくないらしいから、正確には分からないが、とにかく入れ替われる。
話が変わるがこの世界の話をしよう。俺が生まれてから現実の世界では10年の時間がたった。ここは日本なのは確かだが、元居た世界の日本とは違い。建築物などは明治時代っぽい雰囲気ではあるが、科学は、俺の前世の日本と同じくらいには進んでいる。もう一つ大きな違いを上げるとすれば、現代まで江戸幕府が続いているということである。しかし鎖国はしてない。魔族の侵攻が開始する前から欧米諸国の最新技術などに限り、海外との貿易を行っていたが、20世紀初頭あたりから文化的な交流も解禁され今は、ハンバーガーやパスタだってある。
そして俺の両親。名前は父が稲葉通いなばとおる、母が稲葉友恵いなばともえ。いたって普通のどこにでもいる夫婦だ。そして、この世界で俺が両親から授かった名前が、「空輝人」《あきと》である。俺の両親について、気になったのは、二人が何の仕事をしているのか、まったく教えてくれないところだ。
小さい時一度聞いて、教えてもらえなかった時から気になり、しつこく聞いているのだが、未だに教えてはもらえない。
俺は現在人生で2度目の小学校に通っている。肉体的には初めてなのか?そして、小学校でこの世界について様々なことを学んだ。
まず、先ほども言った通り江戸幕府が現代まで続いていること。そして、江戸幕府が続いたのは江戸時代中期に異世界から魔族が侵攻を受け、魔王が率いる魔族と勇敢に幕府の大名たちが戦い魔族から人々を守ったことにより、武士や武術の必要性が増したからであること。
勇敢に戦ったのはいい。しかし敵は人間より知能は低いが、基礎的な身体能力が桁違いなオークや人間並みの知力に人間の2倍以上の身体能力と魔術を完璧に使いこなすエルフなどだ。
さらには、ドラゴンと呼ばれる普通の人間では到底太刀打ちできない怪物によって現在、西日本のほとんどは魔族に支配されている。
200年前。大阪が陥落した時点で休戦を持ち掛け、東日本と九州の一部は無事となってはいるが、あくまでも休戦のため再び開戦したときにのために一般人にも帯刀が認められ、武術を身に着けることが、義務付けられている。
欧米諸国などの海外の話もしよう。魔族の侵攻は全世界で同時多発的に起きたらしく、世界中の各大陸に約1億以上の魔族が送り込まれてきた。そして現在、各大陸のほとんどの国が、国土の半分以上を失っていたり、滅んでいたりするのだという。
そして現在日本に滞在している魔族軍は朝鮮半島や中国から海を越えてわたってきた一部なのだそうだ。要するに世界の半分は魔族によって支配されているということだ。
正直ほとんど人類は詰んでいる。よりによって滅亡間近の世界に飛ばされるとは、まったく想像もしていなかった。
俺は、現在の日本の戦力で魔族の侵攻をどれくらい食い止められそうか予測するために、現在の日本の兵力について、調べてみることにした。まず日本には、3つの軍がある。1つめは日本軍。総数約1万人。そのほとんどが民間人。これは日本の中で一番身分の高い日光様という、この国の王様に近い人が率いている軍だ。2つめは幕府軍。総数約200万人。そして幕府軍は、幕府の武士による軍だ。現在の日本は基本的に王が内政のほとんどをを行い。幕府が町の警察や国の国防軍の指揮権を持っている。
軍事面はのことは幕府に指揮権があるのにもかかわらず、王が軍を持てているのは、幕府がいろいろと制約はあるが、王の警護を目的とした軍の配備を認めたからである。
そして、3つ目の軍は、総数は明らかにされておらず、ほとんど実態もつかめていないが、一つだけ確かなのは、その軍が他の2つの軍よりもとびぬけて強いということだけである。
以上の情報から、日本の総戦力は分かっている限りでは、201万。対して、現在日本に滞在している魔族軍は500万。数の上では圧倒的に負けている。そのうえ、魔族は、魔法を使う。種族によって強さや特性などに違いはあるが、それがとても厄介なのである。今現在は科学が発達し、それに対抗できる戦車や戦艦などの近代兵器がある。しかし、科学よりも魔法の方が傷の治療や空中戦は有利で、良くて対等に戦うことしかできない。
これから俺がしなくてはならなことは、この世界を守るために、魔族を滅ぼすために、この国の戦力を増強させることだ。こんなスケールのい大きいこと、自分にはできないかもしれないけれど、やれることは、やってみる。
魔族を食い止め、この世界の人々に平和と幸福を与えたい。それが、そうすることが、きっと俺自身の幸せにもつながるんだと思う。