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努力が必ず報われる世界って本当ですか?  作者: 嗄声逸毅
第一章① 『地獄の地編』
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第一章①-5  『ここが道場って本当ですか?』

――ワイト王国・オウト温泉の客間


茶色い髪を一つに束ねた女が、白い道着に白帯という道場の制服を身にまとい、片手に濡れた雑巾を持ちながら同じ格好の男に近づいた。


「あの噂、聞きましたか?」


男はちょうど雑巾の水気を切り終えたところで、怪訝な顔をして振り返る。


「噂?なんかあったか?……あっ、もしかして今朝、セセリの味噌汁に大量の七味をぶち込んだのがバレたって話か?」


「ああー、あれはかなり辛かったですね……って!おい!やはりあなた達の仕業だったんですね。あれ、ほんっっとうに辛かったんですよ!」


「今回は俺一人の仕業だ。それがどうした?」


「そのことじゃないですよ!もっと大事な話です。最近、話題になってる“例の法”のこと、覚えてますか?」


男は面倒くさそうに肩をすくめる。


「例の法?なんかあったか。俺はセセリみたいに新聞とか読まないし、そういう世の中の話にはあんまり興味ない」


「新聞を読まなくたって、道場の皆がしょっちゅう話してましたよ“フラッカの名を持つ者は処される”っていう、あの異例の法律ですよ!」


「ああー……そんなこともあったな。そういや話してたかも」


「ストーリーさん。あなた()()男子のお友達いらっしゃいますよね?ニトロさんにイサハラさん。もしかして、実は嫌われているんですか?哀れなストーリーさん。私にはわかります、彼らの気持ちが」


「嫌われてねーよ!あと、『()()』は余計だ!で、その法と噂に何の関係があるんだ?」


女はふふんと笑いながら新聞の一面を突き出す。


「この今朝の新聞を見た方が早いですね。ここの記事、よく見てください」


「どれどれ……えーっと、『フラッカという名を持つだけで罪とされ処されるという異例の法施行から早数か月。ある街で、一人の少女が多数の警察軍によって早朝から取り押さえられ、現在は投獄されている模様』……ついに“フラッカ”が現れたってことか。で?」


「でって、呆れました。あなた、友達もいないうえに理解力皆無なんですか」


「なんだと……!あのな!この記事の見出し見ろよ“市民の噂”って書いてあるじゃねえか。単なるゴシップだろ」


「ちゃんと続きを読んでくださいよ」


「はいはい……『その少女は“フラッカ”と名乗っており、地球という異世界、ニホンという国から来た異邦人であることが確認されている。この国の法律が適用されるかは不明であり、近日中に議会にて審議される予定――』……って、うわ、マジじゃねーか」


「その少女、どうなっちゃうんでしょうね……」


「あの元国王の息子だぞ?仮にその少女がフラッカならこんなの適用されるのがオチだ」


「そうですかね。今の国王様なら、この国を良い方向に導いてくれるって信じていますが」


「どうだかな。血筋ってのは簡単には裏切れない……と思いたい。もうこの話はおしまいだ。次の掃除場所を見に行こうぜ」


「さっき確認しておきましたよ。次は二階の“大広間”。今日の掃除はそこが最後です」


「うえっ、また二人であんな広いとこ掃除かよ。気が滅入る……」


「いえいえ、今回は“あなた一人”です」


「……は?俺だけ?じゃあ、セセリはどこ掃除すんだよ」


「私は道場です。頑張ってくださいね」


「……チッ。まあ、修行の一環だと思えば、なんとか……なるか」



****


――ナイユフ&カマチ・オウト温泉着


「なあ、カマチ」


「ん?」


「俺たち、道場に“飛ばされた”はずだよな」


「あん」


「なあ、カマチ」


「ん?」


「あそこから出てる白いのって……湯気だよな?」


「あん」


「……なあ、カマチ」


「ん?」


「あれどう見ても温泉だよな」


「あん」


「……なあ、カマチ」


「ん?」


「旅館の建物、見えるんだけど……?」


「んー。あん。そうだな」


「もしかしてオリオさん、失敗したんじゃ?腕は?足は?全部付いてるか?ん?ん!?」


「お前の場合、冷静さをどっかに飛ばされたのかもな。とりあえず中に入ろうぜ」


「おお、昼間っからこの賑わい!これは……有名な温泉かもしれない!」


入口を開けると、中では仲居らしき女性が忙しく料理を運んでいた。彼女は俺らに気付き、丁寧に声をかけた。


「お客様、ご予約はされていますか?」


「いえ、俺たち、道場に行きたくて。場所わかりますか?」


「道場、ですか?かしこまりました。まずはお上がりくださいませ。大広間へご案内いたします。上の者に確認してまいりますので、しばらくお待ちくださいませ」


その言葉に従い、土間にて数分待たされた。そして再び現れた仲居に導かれ、建物の奥にある大広間へと足を踏み入れるのだった――。

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