信じること
「おい、なんでお前が俺の過去を知っている!」
場所は変わって屋上。
俺は何故か俺の過去を知っている笹倉愛梨に問いただしていた。
「調べたからですよ」
「調べただと?ただ調べただけじゃあ俺の過去が分かるわけないじゃねえだろうが!」
「私の家ってお金持ちなんですよ」
こいつ。
まさかお金を使って!?
「今、佐久間さんが思い浮かべている通りですよ。そう、お金を使ってあなたの中学校から聞き出しました」
「ちっ!」
こいつ!
こんなことまでして俺をどうしたいんだよ!
「それよりもお腹が空きましたのでお昼、食べましょうか。どうぞ。佐久間さんの分です」
黒の二段弁当を俺に渡してきた。
「俺はいらない。それよりもお前。俺の過去をどこまで知った?」
「いらない、、ですか」
彼女は悲しそうに自分の袋に黒の二段弁当を入れた。
「佐久間さんの過去は全て知っていますよ。あの暴力事件がただの暴力事件じゃなかったことも」
クソっ!やっぱりそこまで調べているか。
「お前は俺をどうしたいんだ」
「私。佐久間さんのこと好きなんですよ」
「は?」
こいつ何を言ってやがる。
俺が好き?
そんな嘘信じるわけないだろうが。
「本当ですよ。あの時佐久間さんに助けてもらって一目惚れしましたから」
「嘘だ」
「嘘じゃありませんよ」
「嘘だ!!」
俺は学校全体に響くほどの声で言った。
「女なんて嘘しか言わないんだよ!!お前に何がわかる!!好きだった女に裏切られ!親友にも裏切られた俺の気持ちを!!」
「分かりますよ」
「分からねえだろうが!!」
「佐久間さん」
彼女が真剣な声で言ってきた。
「な、なんだよ!」
「確かに女は平気で嘘をつきます。だって人間ですから。でもだからといって全て嘘だと思っていてはダメです。誰だって親友や好きな人に否定されたら悲しみますよ。このまま信じることをやめてしまえばまた同じことが起きるかもしれません。だからまずは当たって砕けろですよ!」
最後だけ笑いながら言ってきた。
「それが出来ないって言ってんだろうが!」
「じゃあまず私を信じてください。私は佐久間さんに嘘はつきません」
「う、嘘だ!」
「嘘じゃありませんよ」
そう言って俺に抱きついてきた。
「や、やめろ!は、離せ!」
「離しませんよ」
「離せって!」
「佐久間さん」
俺の耳に口を近づけてこう言った。
「よく今まで耐えましたね」
そう言われた瞬間、俺の目から涙が溢れ出てきた。
「う、うわ〜ん」
「よしよし。大丈夫ですよ」
俺は彼女の胸に頭を押し付けて泣いた。