9話 LEIN
「ふぃ~……………」
やっと休める。まじで疲れた。ベッドにダーイブ、そのままふて寝。よし、明日からルーティーンにしてやる。感謝するんだな。…………俺が感謝する方か? 何考えてるか分かんなくなってきたわ。寝よっ。
ピロン♪
「ん? 誰からだ?」
俺はベッドに放り投げたスマホを手繰り寄せ、通知を見る。─────榎本るる? ………………ああ、真冬とよく話してる奴か。……………まさか、お前も俺に毒舌を吐きに…………!? 威嚇しておこっかな。………やめておこう。
取り敢えず、未読スルーしたい気分だったが、こらえてLEINを開く。
『突然の追加ごめんね~、私、榎本るるって言うの。まっふーの友達だよ。あ、まっふーっていうのは真冬のことね』
知っとるわ。あと君のLEINの名前も榎本るるって出てるから分かる。……………これから何言われるかと思うと、ちょっと怖いわ。クズっ、死ねぃっとか言われねえよな? 大丈夫…………だよな?
『大丈夫。んで、どうしたの?』
震えながら文字を打つ俺。健気。誰か誉めて。頭ポンなでを要求するっ。……………やべえな、俺。
『いやー、何? まっふーが柚原君のLEIN欲しがっててさ……………柚原君、まっふーと交換してあげて欲しいんだ』
『…………………は?』
やべっ、思わず打っちゃった。何やってんだ、俺は。絶対嫌な奴や思われたやん。
『柚原君が驚くのも無理ないか~、まっふーいっつも毒舌だもんねー』
榎本の方は気にした様子もなかった(LEIN上は)。画面の向こうではしかめっ面してるかも知れん。あな、恐ろし。……………明日になったら、四面楚歌かもしれない。そうなったら、俺は不登校の覚悟も辞さないっ。
暫くLEINが途絶える。ああ、やばい何か打たないと……………
『うるさい、ちょっと黙ってて』
………………終わった。今ので俺のメンタルは豆腐から豆乳になったよ?
『ごめん、打ち間違えちゃった』
………………本当かよ。うっかり本音漏らしちゃったの間違いじゃね?
『それでさ、どう? まっふーとLEIN交換してあげてくれないかな?』
………………大丈夫か? 俺が追加したら最後、トーク画面全部キモいで埋め尽くされるんじゃね? うん、確信したわ。俺の未来は暗い。
追加ならクラスのグループから追加すればできる。
『………………大丈夫か?』
『お願いっ、追加してあげて』
『俺が追加しても』
……………二文続けて送ろうとしたのに、榎本の奴が妙なタイミングで入ってきたから分断されたわ。LEINってこういう時不便だよな。まじインコンビニエント。
このままだと、永遠に終わらない気がする。なんというか、俺の勘がもう血走ってる。……………仕方ない。大海に飛び込んでやるよ。んで、さくっと溺れてくるわ。……………溺れるの? 俺。くそじゃね?
『……………………分かった。後で追加しとく』
『ありがとー! じゃっ、追加宜しくね。言っとくけど、やっぱり追加するのやーめよとか無しだからね? まっふーが悲しむから』
………………釘刺された。こいつ、案外やりおるな?
『………………あいよ』
……………もう、毒舌でも麻痺舌でもなんでもこいや。受け止めてやんよ。
俺は覚悟を決め───────真冬のLEINをグループから追加した。
『あんたに折り入って話があるんだけど』
………………早くね? 来んの。