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8話 一肌脱いであげる

「ね、ねえ、ちょっと……………」



「……………………」



 真冬の声が聞こえる。まあ、俺は学校では話しかけんなって言われてるし。近くで声が聞こえる気がするが、ここで、ん? とか振り向いてみろ? 「は? あんたじゃないし、まじキモいんですけど」って返されるのがオチだ。……………あれ、俺の心に刺さるんだわ。まじメンタル欲しいわっ(遠い目)。



「ねえ」



「…………………」



 誰だよ無視してる奴。あの真冬様が話しかけてるんだぞ? 私が目に入らぬかっ! みたいな? ……………どっから出てきた、こやつ。



「ねえ、ちょっと!」



 バンッ! と俺の机が叩かれた。あ、俺だったんですね。ごめんなさい。……………は? 俺? あー…………話しかけざるを得ない事情でもできたんだな? …………しょうがない。



 俺はさあ、来い毒舌! とゴールを死守するGKの如く覚悟を決めて、顔を上げる。



「………………なんだ?」



 さあ、早く用件を言うがいい。そして、早急に立ち去れ。お前の後援会のメンバーもこっち睨んでっから。………………まじで眠気、仕事しろっ、さぼるんじゃねえ。



「……………やっぱなんでもないっ。あんたのキモい顔見たら、何言うか忘れたわ!」



 ……………まさかの毒舌オンリー? それだけのために話しかけたの? ───…………いつから用件があると錯覚していた? 知るかっ。



「……………はぁ」



 睨まれ損じゃねえか。……………なんか、廊下の方から「真冬様に罵ってもらえて、なんでため息なんかついてんの? なめてるだろ、あいつ」みたいな声が聞こえてきた。俺にM気はねえんだよ。ノーマルなの。分かれっ。



 ……………五時限目の準備すっか。




◇◆◇◆◇



「まっふー……………あれはないでしょ。結局、目的だって果たせてないし」 



「うぅ……………」



 今日の授業が全て終了し、帰路についていた。あいつには悪いけど、今日は一人で帰ってもらった。…………べっ、別に私があいつと一緒に帰りたいとか、そんなんじゃないからっ。



『あ、あんた、今日は一人で帰りなさい。……………言っておくけど、人目の少ないところを通って帰りなさいっ。只でさえ周囲に迷惑かけてるんだから』



 言いたいのはそんなことじゃなかった。だけど、いざとなると、するっと毒舌が出るの。…………自分の口が恨めしくなるわ、ほんと。



「……………まったく、いつになったら素直になるんだろうね~? この毒舌娘は」



「わ、私はるるの娘じゃないわっ」



「毒舌の部分は否定しないんだね」



 クスッと笑みを漏らするる。……………妙なところに突っかかって来ないで。私、こう見えても結構ナイーブなんだから。……………ナイーブってなんだったけ。…………気にしたら負けね。



「はぁ~……………しょうがない。ここは私が一肌脱いであげよう!」



「………………! るるっ……………!」



 持つべきものは友。るるが友達で良かった。るるはいつも困ってる時に私を助けてくれる。困った時はいつでも私に頼って欲しい。…………そんなことなんて滅多にないか。



「そ、それで、その…………一肌脱ぐってどうするの?」



「う~ん……………ここで脱いじゃう?」



「やめて。私まで変な目で見られるから」



「あはは。冗談だよ。……………こっからが本題なんだけどさ。真冬、柚原君のLEINは持ってる?」



「………………持ってない」



「……………持ってないんだ」



 だ、だって……………私があいつのLEINを追加したら、速攻でブロックされるかもしれないじゃないっ。いいえ、絶対だわっ。ぐすんっ。……………こほん、口調がおかしくなっちゃった。



「……………柚原君の前でも、それでいればいいのに」



「…………………? どうしたの、るる」



 尋ねてみるけど、るるは首を横に振った。



「ううん、なんでもない。じゃあ、帰ったら早速柚原君のLEINを追加しよっか!」



「え、えっ、む、無──────」



「無理とは言わせないよ? 私がせっかく一肌脱いであげるんだから、絶対やるの。いい?」



「……………わかったわ」



 ……………大丈夫かな? 大丈夫だよね…………?



 それにしても…………普段のゆるふわな口調じゃなくて、しっかりとした物言い。……………るるって結構ギャップあるよね。

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