6話 ズタボロ(精神的)
「まさか、あんたと朝から会うなんて……………ほんっと最悪。気分だだ下がりなんですけど。はぁ………………」
ちょっとひどくないですか、真冬さん。朝から俺のメンタルゴリゴリ削りにいくの止めてっ。俺の心が悲鳴をあげている……………冗談です。
ほんの数分前、俺は真冬と家の近くの十字路で鉢合わせになったのだ。とはいっても家も近いし、こういうことはよくある。…………というか、ほぼ毎日な気がする。
「じゃあ、俺なんか置いて先に行けばいいだろ? むしろ、置いていってもらっても──────」
「い、嫌よっ!」
……………ん? 嫌よ? 駄目よじゃなかったっけ? っていうか、こんな細かいこと覚えてるから、キモいとか言われんのかな……………。
「あっ、違っ……………! 今のは、他の人に迷惑になったら嫌だって意味だから! 勘違いしないでよねっ。ほんっと、キモい」
俺をまるで、煩わしそうな虫の如く睨む真冬。
「へいへい……………」
っていうか、息をするようにキモいキモい言わないでっ。男子にとって、キモいは最上の褒め言葉(泣)だからっ。いや、褒め言葉になったらまずくね? 俺はMじゃない。
「ほら、さっさと行くわよ!!」
俺の手をがっしり掴む真冬。
「ちょっ……………!?」
このまま学校まで行く気ですか、真冬さんや。っていうか、思った以上に力が強いっ、この。痛いっ、痛いから離して! 俺はMじゃないから!(切実)
………………あと、このまま学校に入ったら、絶対に注目の的になる。今日は一段と睨まれる。よし、今日は睨まれデーだっ!(泣)
◇◆◇◆◇
「─────…………………」
駄目だ。もう無理。まだ一時間目も始まってないのに、帰りたい気分。何でだと思う?
「おい、あいつじゃね?」
「あいつか、真冬様と手を繋いでた奴はっ……………!!」
教室の中にいる俺を外から睨んでくる名も知らぬ男子達。あー……………眠気来ないなぁ………。まだかなぁ………こういう時に限って来ないんだよな、眠気って。ちっ、使えん奴め。
因みに言っとくと、あいつら真冬の後援会の会員…………だと思う。この学校には、忌々しいことに真冬の後援会なるものが存在するのだ。まあ、ぶっちゃけファンクラブだな。それだけ、真冬の人気が凄いってことだ。女子も入っているらしい……………なんて噂もある。俺には情報収集網なんてないから、確かめようもないけどな。
俺を睨んでは、真冬を見てほっこり。おい、お前ら、どっちかにしろや。
「はい、みんな、席ついて。地学の授業を始めるよ。廊下にいる子達も、早く教室に戻りなさい」
そんな中、地学の担当である教師────────三枝亜美先生が入ってきた。三枝先生の一言で、後援会を含めた生徒も、教室に戻っていく。
ありがとう、三枝先生。このご恩はいずれ返します(返す気なし)。
……………やっぱり、あのベンチ以外のベストプレイス探そ。じゃなきゃ、俺が死ぬ。安らかに眠りたいのに、眠れない。……………あれ? どっちにしても一緒じゃね、言ってること。
「じゃあ、まずはリソスフェアとアセノスフェアについて説明を───────」
◇◆◇◆◇
「はぁ………………やっと昼休み」
まじもう、二十四時間マラソン走破できるわ。今なら出来そう。………………無理ですね、すいません。
ベストプレイスを探す気力もない。裏庭のベンチに行くしかないかー…………。まあ、大人数に睨まれるよりは…………ましだな。
いつも通り、そこへ向かうと──────
「やぁ」
「どうも」
…………………なんで一人増えてんだよ。