5話 義妹
一部雪についての説明を追加しました。
「……………………」
雪がジーッとこっちを睨んでくる。すっげえ食べづらいんだけど。っていうか、俺、お前に恨み持たれるようなことしたっけ? お兄ちゃん、そんなことしてないと思うなー…………。すいません、自分でもこれはないと思ったわ。
俺は今、夕飯を食べている。我が家は四人家族で、父さんと母さん、雪と俺の四人暮らし。父と母は共に再婚で、雪は母さんの連れ子。俺は父さんの連れ子だ。……………とまあ、こんな感じだ。
因みに言っておくと、雪は茶髪のショートヘアで整った顔立ちをしている。いわゆる──────美少女というやつだ。俺とは全くの正反対。学校での人気も高いらしい。
「あ、そういえば、今あんたが食べてる肉じゃが、雪が作ってくれたのよ。お兄ちゃんのためにって、妙に張り切っ──────」
「母さんっ、違うから!! 気が向いたから作っただけ! 余計なこと言わないで!」
………………雪が? 俺のために肉じゃがを? お母様、またまたご冗談を。んなわけないでしょ。雪は俺の事、嫌ってるし。だって、俺を呼ぶ時、これだのあれだのあんただの……………あれ? 悲しくなってきた。俺はシスコン? って、違うわっ。
「ふんっ」
プイッとそっぽを向く雪。雪と仲良くなれる日なんて、来るのか? いや、当分先まで来ないな。………………これ以上考えるのはやめよ。
◇◆◇◆◇
「ねえ、ちょっと。ルーズリーフ貸して」
……………こいつ、いつも俺の部屋に何か借りに来るんだよな。まあ、別に気にしねえけど。本当だぞ? っていうか、ルーズリーフは消耗品だから、貸すとかねえんだけど……………そんなこと言ったら、雪のやつ、絶対怒るから意地でも言わん。
「はいよ。そこに置いてあるから、適当に取っていってくれ」
俺は本棚の上を指差す。そこには、ルーズリーフが置いてある。
「……………は? 私に、あんたの部屋に入れと?」
………………だから睨むなって。怖い。俺の部屋に入りたくないのはよく分かったから。それ以上睨まれると、こっちが惨めになるから。…………まあ、いつもの事だし、気にしてない。気にしてないったら、ない。
「………………ほらよ」
俺は本棚の上に置いてあるルーズリーフを取って、雪に渡してやる。雪は何も言わず受け取ると、バタンッ! と扉を閉めた。雪が去った後、俺はベッドに仰向けになって寝転ぶ。
「はぁ~……………安息の地が欲しい」
とにかく気が休まらん。家でも学校でも睨まれてるし。……………あれ? 俺って毎日睨まれてるだけじゃね? 気のせい………だと思いたい。
「しかも、明日からは俺の安息地がもう一つ奪われる…………………」
俺のベストプレイスにまた来ると言った生徒会の書記。ぼっちに会話なんて無理無理。あー……………新しく候補探そっかな? 周りに人がいないところとか他にあるん? ……………絶望的だ。
会話が生じるとか、勘弁してくれよ………………
◇◆◇◆◇
「─────はぁ~……………緊張した」
私は自分の部屋に入ると、ずるずる………と力が抜けたように床に座る。
水樹の部屋に入るとか、緊張して心臓破裂しそうになる。だけど……………いつかは入ってみたい。ほんとなら、今すぐ入りたい。だけど、いざってなると……………やっぱり出来ない。多分、私みたいなのをヘタレって言うんだと思う。
「………………はぁ」
………………水樹は覚えてないだろうなぁ。あの日のこと。私は、あの時から──────
だから、絶対にお兄ちゃんだなんて、認めてあげない。