4話 生徒会書記様と、そして我が家では
早くこの場から立ち去って欲しい。っていうか、知らない女子とベンチに座ってるこの状況自体、ぼっちにはきついものがある。加えて共通の話題などない。だって、初対面だから。
「………………昼は食べないの?」
「…………昼なら、もう食い終わりました。今は食後の一休みってところですかね」
俺は暗に邪魔だから早く立ち去れ、と込めてみた。
「早いね。まだ昼休み始まって十分くらいしか経ってないのに」
……………どうやらこの先輩、ここに居座る気らしい。はぁ…………仕方ない。なら─────
「…………あ、あの、大変まことしやかに失礼なのですが……………お、お名前を頂戴しても宜しいでしょうか?」
こっちは自己紹介したのに、あっちはしてない。これは平等に反する。故に、俺には相手の名前を知る権利がある──────とは限らないな……………。むしろ無いんじゃね?
「………………ぷふっ」
笑われた。なんか、いたたまれなくなる。…………コミュ力の無さの弊害がここに。確かに、俺の言い回しも堅すぎる………っていうか、間違えてると思うけど、笑うことなくない? ……………逃げよっかな。逃げたい。でも、そんな勇気ないから無理です、はい。
「私の名前は──────小島紗弥。一応、生徒会の書記をやってる」
へー……………生徒会の書記…………って、えっ!? 生徒会の書記!?
俺は声には出さなかったものの、驚いた。っていうか……………
「………………なんで、生徒会の書記がこんなところに? 仕事とかしなくていいんですか? っていうか、仕事してください」
生徒会なら、昼休みにも仕事とかあるはずだ。仕事はしなくていいのか? ……………っていうのを口実にお立ち去りいただくわけですよ。どう? 完璧じゃね? 俺のプラン。
「いいの。別にそこまで大変な仕事でもないし。私、仕事はまとめて片付けるタイプなの」
「へぇー…………」
どうでもいい情報、いただきました。というか、一人になりたい。じゃないと、一人に飢えて何をするか分からない。……………いや、何もしないけどね?
「ふふっ……………。やっぱり君は、面白い」
どうやら気に入られたらしい。俺のどこにそんな要素が? 皆無だろ、皆無。
おもむろに紗弥先輩はベンチを立つ。おっ、こっから自主的に出ていってくれるのか。ありがたい。
「……………明日もまた、ここへ来てもいい?」
振り向き様にそう言ってくる紗弥先輩。
「もう来ないでください」
「……………じゃあ、また明日」
微笑みながら去っていく紗弥先輩。おい、絶対また明日来る気だろ、あいつ。
◇◆◇◆◇
「ふぅ……………久々の一人での帰り道。気楽でいいわ」
真冬の奴、俺と帰る時いつも俺の事についてとやかく言ってくるし。針のむしろ状態なんだよ、俺。お陰でその度に俺のメンタルはズタボロだった。だが、今日は真冬は友人──────榎本るると最近できたというカフェに行っている。
『ついてくんじゃないわよ……………!? いいわね……………?』
睨まなくても、ついて行かねーっつーの。誰が好き好んで女子だけの空間に飛び込むアホがいるんだ。因みに、榎本るるとは、真冬の事を『まっふ~』と呼んでいる女子の名前だ。
暫く歩くと、俺の家に着く。俺は、家の戸を開けて中へと入る。
「ただいまー」
「何? もう帰ってきたの? あと数時間くらい帰ってこなくていいのに」
俺の義妹こと──────雪は、辛辣な口調で俺を出迎えてくれた。そう。俺は、家でも針のむしろ状態なのだ………………。