3話 告白(お断り)
「──────辻井真冬さん!! 好きです、付き合ってください!」
私は今、屋上で告白されている。今告白した男子の名前は、西原悠真。サッカー部でも一年生ながらレギュラーで、女子からも人気である、いわゆるイケメンっていうやつ。まあ、そんな彼に対して、私の答えは決まっている。
「─────ごめんなさい、あなたとはお付き合いできません」
「………………好きな人がいるんですか?」
「……………ええ」
「……………そうですか」
彼は落胆したようにとぼとぼと帰っていった。
「……………………ふぅ」
まったく…………毎回毎回告白されるのもほんとに勘弁して欲しいわ……………私には既に決めた人がいるっていうのに、もうっ。毎回告白を断るこっちの身にもなって欲しいわ。
それはそうと、あいつ……………。花奏とまたいちゃいちゃしてっ。なんかあいつが他の女子と話してるだけで、胸の辺りがモヤモヤする。
「…………………ばかっ」
なんかイライラする。
「なんで私が、こんな気持ちにならなきゃいけないのっ」
無性にイライラ、モヤモヤしながら、私は屋上を後にした。
◇◆◇◆◇
「なんというポカポカ陽気……………このまま寝ちゃいそうだわ」
俺は一人、最高の場所に来ていた。最高の場所とは──────裏庭にあるベンチだ。元々は草木だらけの場所だったが、俺が毎日コツコツと掃除をしていたら、使えるくらいに回復した。元々掃除は好きだし、苦はなかった。
それに今は昼休み。あー……………このまま授業も出ずにここで休むのもありだわ。そうしよ。俺一人がいなくなったところで、そうそうばれないだろ。因みに、昼食はもう食べ終えた。
「それにしても………………」
『真冬ちゃん、人気だね~? うかうかしてると取られちゃうかもよ~?』
………………まあ、俺と真冬の仲はお世辞にもいいとは言えないし、真冬が誰とくっつこうが関係ない。きっと、真冬と釣り合うのは、もっと気が使えて優しい男だろう。俺の後ろのあのイケメン野郎とか。
「そもそも嫌われてるっての」
俺なんかないない。というか、こんな気持ちいい陽気の中で、こんなことを考えたくない。よし、このまま寝よう。俺は目を閉じた。
「────────裏庭に先客がいたなんて……………予想外」
声が聞こえた。どこか落ち着いたような声。俺が目を開けると、そこには───────ショートボブの美少女が立っていた。目がキリッとしていて、表情は……………乏しいな、うん。
「それに……………綺麗になってる」
それは、俺が頑張って掃除したからな。毎日コツコツと。お陰さまで、ここは今や俺のベストプレイスです。さあさあ、回れ右してそのままご退場を。
「…………………名前は?」
「……………柚原水樹ですけど」
見たところ、リボンの色が赤っぽいし、二年生、つまりは上級生。一年生は青、二年生は赤、三年生は黄色としっかり学年ごとに色が決まっている。
「女みたいな名前」
「………………よく言われます」
……………あ、これ、帰らない感じ? 俺としては、早く寝たい。一刻も早く。俺の睡眠を阻害する奴は許さんっ。……………いや、まあ、冗談だけど。
「ベンチ、私も座っていい?」
「……………どうぞ」
あ、帰らないんですね。