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20話 花奏の生徒指導

「柚原君、ちょっと後で私の所へ来てもらえますか?」



 四時間目の現代文が終わって、昼飯を食いに裏庭のベンチに行こっかなー、なんて思ってた時。花奏が俺に言ってきた。



「分かりました」



 そのままの流れで裏庭のベンチに行けるように、昼飯を持っとく。………………っていうか、俺なんか悪いことしたっけ? …………結構現代文以外の時間で寝てたから、誰かチクったな。卑怯者っ、姿を見せろ。……………まあ、俺が寝なけりゃいいんだけどね? 無理だわ。



 そんな馬鹿な事を考えつつ、席を立って教室を出てく花奏の後を追う。



「あ………………」



 後ろから誰かの声が聞こえた気がするが、無視だ無視。




◇◆◇◆◇



「……………先生、ところで俺、何かやらかしましたか?」



 俺は生徒指導室にいた。……………やべぇじゃん、本格的に怒られるやつじゃね? これ。言い逃れしたい。できるならしたいっ。……………メイクアップマイエクスキューズ。…………わけわかんねえ。



「大丈夫よ。寝てることなら誰にもばれてないから」



「いや、バレてるじゃん。てか俺、現代文の時間寝たことないはずなんだけど……………?」



「カマかけただけよ。水樹な(・・)らやりかねないと思っただけ」



 くすっ、と小さく笑う花奏。今は"お姉さんと弟分"らしい。だったら、こっちも応じないと。…………そんな義務はないけどね? 俺もお兄ちゃんやりたい……………って、もうやってたわ。んで、キモいって認定もらってたわ(泣)。



「んで、結局呼び出されたのって? 用事があるから呼び出したんだと思うんだけど……………そうだよな?」



 口調も一新。見事なまでのタメ口ィ────自分でやってて引くわ。何がタメ口ィ─────だよっ。



「そうなんだけどね……………そこ、疑問形になんなくても、もっと自分に自信持っていいよ?」



 ……………自信くらいあるし。思春期の男子ってみんな自信過剰だから(偏見)。俺はいたって標準。ありふれたぼっちオブぼっち。決してヘタレとかクズじゃねえ。……………クズってなんだ? と、とにかく俺はクズじゃないっ。



「そうだなぁ……………柚原君の表情がいつもより険しかった気がしたから、かな」



 ……………そんなに表情に出てんの? クラスメイトにはばれなかったよ? ……………知らんやつの機嫌がどうだろうと話しかけてくるわけねーか。ぼっちに帰着っ。……………エンドレスとかやめてくれ。



「…………別になんでもない」



 特に何もない。何ら変わらない日常。どこも変わってなどいない。そう、俺の表情も。



「…………そう。ならいいわ。でも、話したくなったらいつでもおいで。話ぐらいなら聞くから」



「…………うすっ」



 話したくなったら、か……………話すこともないし、話したくなることもない。だって、俺は変わってなんかないから。



「話はこれで終わり。お昼、楽しんでね」



 花奏は立ち上がって生徒指導室を去っていった。



「楽しむ……………?」



 もしかして昼休みのあれ、ばれてる? いや、楽しんでるわけでもねえけど。昼休みに楽しむことなんてねえよ。



 僅かに浮かび上がった疑問を否定し、俺はベストプレイスに向かった。

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