15話 決裂
投稿が遅くなりました。すみません。
「……………あんた、日本史ばっかやってないで、主要三教科の方もやっときなさいよ。バカなんだから」
………………バカだけどさ、もう少し言い方ってもんがあるじゃない? バカだけどさっ(ここ重要)。
真冬と榎本が仲良く教え合っている姿が目に入る。いいぞいいぞ、そっちはそっちでやってくれ。そうすれば、俺の被害が減るっ。
「………………おう」
…………おうって何、おうって。俺のボキャブラリーは全てアウトプットされました。……………インプットしたことあったっけ?
俺は日本史のワークを閉じて、とりあえず数学を出す。テスト範囲は……………どこだっけ?
「数学のテスト範囲ってどこだっけ?」
「はぁ? あんた、そんなことも把握してないの? ………………ったく、ログよ、ログ」
親切に教えてくれるとは珍しい。そんなの自分で確認したら? バニッシュッ(消えろ)とか言われるのかと思った。………………MPも削られ始めるんじゃね? 素晴らしきかな、毒舌。アホじゃねえの。
俺はログのページを開いてみる。………………うわぁ、なあに、これぇ? 難しい文字がいっぱーい……………数学も白紙になれっ。
「………………あんた、もしかしてわかんないの?」
手ぇ止まってるの見られた。…………当たり前か。教科書開いてから一個も動かしてないからなっ。この後、言葉の嵐が飛んできます。飛び交いませんっ(ここも重要)。
「……………それ、ちょっと貸しなさいよ」
「…………………あ?」
「だから、それ貸しなさいって言ってんの! ……………あんた、耳まで節穴なの?」
一瞬にして教科書を奪い取られた。……………耳までってことは、既に目は節穴だって思われてね? …………否定できねえところが妙に悔しいっ。
「たはは……………」
榎本は真冬の隣で苦笑い。
………………というか、俺、今更だけど、女子の部屋に来てるんだよな。それも、真冬の。…………明日睨まれながら殺されそう。最後に見るのが睨まれ顔……………駄目だ、溶ける。あと、めっちゃ緊張する。女子の部屋とか上がったことねえし……………やべっ、胃がキリキリ…………
「……………で、あんたはどこが分からないの」
「…………ログの計算」
「………………全部じゃない。授業ちゃんと聞いてないわね?」
「おっしゃる通りで………………」
……………ん? なんか普通に会話成立してね? おかしい。俺と真冬の間に会話?
「ねえ」
……………トーク? コミュニケーション? デイリー? 最後のはなんか違うわ…………。っていうか毒舌はどうした? ほれほれ、いつものは(麻痺)。…………いや、欲しいわけじゃないよ? いらねえわっ。
「ねえってば!!」
「うぉ!?」
バンッ! と机を叩く真冬。なんというかデジャブ。ってか──────
「……………………」
「……………………」
顔近い近い近い。まずい、心臓に悪─────
「な、なにやってんのよ!!」
バチーン! と頬を叩かれた。──────は?
「いって───………………」
「ちょっ、まっふー!!」
「………………あっ」
………………俺、なんか悪いことした? リビングに追い出されて……………部屋に入れたかと思えば、殴られるし……………
ふつふつと怒りが沸いてきた。……………抑えられそうにない。
「…………………帰るわ」
俺は数学の教科書をしまって、早々に真冬の部屋を出ようとする。
「ふ、ふんっ、か、帰るなら帰りなさいよ!」
「ちょっ、まっふー、柚原君も!」
………………自分から呼んでおいて、その言い方はないだろ。それにしても……………まじでいてぇ。あー……………くそっ、イライラする。
俺は後ろで呼び止める榎本の声を無視して家に帰った。