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14話 巣立ちたかった(過去形)

「ま、まっふー……………柚原君をリビングで勉強させるのはちょっと…………」



「うぅ……………だ、だって…………」



 罰が悪そうに顔を伏せるまっふー。まっふー、可愛すぎ。抱き締めたいっ。い、いいよね? ……………我慢しなきゃ。今は柚原君のことっと。



 私は自分の頬をペチペチと叩く。



「………………? どうしたの?」



「何でもないよ。それより、柚原君のこと、どうするの? 柚原君、帰っちゃうかもよ?」



 まっふーの部屋……………やっぱり、少しドキドキする。鼓動の一つ一つが、速くなってるのを感じる。……………私だって、フォローなんかしてる場合じゃないと思う。



「でも、でもっ……………」



 追い出しちゃった手前、どうやって声かければいいか迷ってるんだよね。わかるよ、わかる。



「まっふー、とりあえず行ってきなって、ほらほら」



 だから、私は押してあげる。まっふーの背中を軽く後押しする。その一歩を踏み出せるように。



 私は(物理的に)まっふーの背中を押して、ドアの外へ。さあ、ここからは自分で行かないと。私がしてあげられるのは、ここまでだから……………



「まっふー、行ってきなよ」



 私は、まっふーの背中に軽く額をコツン、と寄せる。私の顔は誰にも見せられないくらい真っ赤に染まっているに違いない。……………これ以上は駄目。まっふーと一緒にいたい……………だから─────これ以上は進めない。進んだら、糸が切れてしまうから。



「……………うん、わかった。行ってくる」



 その調子だよ、まっふー。頑張れ。



 私の笑顔は自分でもわかるくらい、ぎこちなかった。まっふーがこっちを振り向かないのが、せめてもの救いかな…………………




◇◆◇◆◇



「1873年、地租改正。目的は……………物納を金納へと変えることで、税収を安定させること、か………………」



 日本史むずいわ。独自に歴史作った方がいいんじゃね? 今からでも残ってる書物白紙になんねえかな。歴史変える時は、是非とも呼んでくれ。



「しっかし…………………」



 こう、なんつうの? 肩の力が抜けない感じ。リビング広いのに、俺の肩身はいと狭し? ……………対比じゃね、これ。………違いました、ペコリ。



「………………帰ろっかな」



 さっきから何度も帰ろうとしてたけど、チキンだったから帰れなかった。……………飛び立ってやるわっ。フライ・オブ・チキン? はっ、ほぼ焼かれてね? ボロボロじゃん、俺。



「………………よしっ」



 俺は静かにさささーっと荷物をまとめて、帰ろう───────




「───────ねえ、ちょっと」



 ───────女王様が降臨しなすった。チキンは無事に一睨みで焼け焦げた。…………ってか、階段降りる音聞こえなかったんだけど。もしかして忍者? ……………女王はどこいったんだ?



「………………なんだ?」



 毒舌披露? 受けて立ってやろうじゃねえか。……………HP回復アイテムの用意お願いします。



「こっち来なさい」



「ちょっ」



 真冬が俺の腕を引っ張る。そして、連れてこられたのは真冬の部屋の前だった。



「………………は?」



 どういう風の吹き回し? 部屋に入れないんじゃなかったの? いいよ? 入れなくて。っていうか、帰りたい。ゴーマイホームだから。だから──────



 真冬はドアを開けると、俺を中へと放り込んだ。………………無理に部屋に入れなくてもいいんだぜ? ……………いつもよりすげー睨み具合なんですけど。……………巣立ちたかったなぁ。

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